今こそ組合の存在と力必要 信岡中央執行委員長あいさつ
(関係団体 2017-03-03付)

北教組信岡中央執行委員長
あいさつする信岡中央執行委員長

 北教組の第百二十回中央委員会(二月二十三日、札幌市内道教育会館)における信岡聡中央執行委員長のあいさつはつぎのとおり。

          ◇          ◇          ◇

 北教組は、昨年六月の定期大会以降今日まで、「全国学テ」をはじめ学習指導要領・官制研の押しつけ、賃金抑制・査定等評価制度など学校現場を管理統制し、差別・分断する攻撃に対して、組織一丸となってたたかってきた。私たちの生活と権利を守ることは当然ながら、それらの攻撃は、最終的には子どもたちに向けられたものであるからである。

 さて、トランプ大統領の「米国一国主義」の政策は、差別と排他主義を鮮明にし、民主主義を危機に陥れている。多文化共生や人権価値などを否定する姿勢に、世界中が懸念を表明する中で、安倍首相は「日米同盟の深化」を求め、「インフラ整備と雇用対策」を手土産に、米国追随の外交を行った。

 国民の懸念をそっちのけにした外交姿勢は、平和や人権など憲法理念を軽視した政権運営と相通ずるもので、断じて許されない。

 安倍政権はこの間、大企業・富裕層優遇の「経済政策」のもと、「非正規労働者」が全労働者の四割を超え、生活保護世帯数が約百六十万世帯となるなど、賃金抑制と長時間労働によって、一層「格差社会」を拡大し、働く権利や最低限の生存権が侵害される状況をつくり出してきた。

 さらに、「戦争法」を実態化するため、戦闘状況を衝突と偽り「南スーダン」への派兵を継続し、「テロ」を口実に「共謀罪」の構成要件を変え「組織犯罪処罰法改定案」の上程をねらうなど、「戦争する国づくり」への地ならしをすすめ、「憲法改正」への道をひた走っている。

 「貧困や閉塞感」から子どもたちを戦争へ加担させてはならない。

 私たち北教組は昨年、結成七十周年を迎え、戦前に軍国主義教育を行った反省から出発した、組織の原点に立ち返り、「教え子を再び戦場に送らない」との誓いを新たにした。このスローガンのもと、一層団結し、反戦平和、民主主義を守る運動をすすめなければならない。

 文科省は二月十四日、次期「学習指導要領改訂案」を公表した。これは、財界の要請にもとづく「グローバル人材育成」を掲げ、「格差社会」に順応させるための教育を押しつけ、「点数学力」による競争と「国家道徳」を一層徹底しようとするものである。指導方法や評価まで詳細に介入して「詰込み教育」へ逆戻りさせ、「国家に従順な国民づくり」を企図している。

 政治主導の「政策」は、子どもたちを追いつめ、学ぶ喜びや意義、将来の夢や希望を失わせ、一層苦悩を深刻化させてきた。

 昨年、全国の小・中・高校の「いじめ」件数は過去最多、道内の小・中学校でも「不登校」「いじめ」が大幅に増加した。

 しかし、文科省や道教委は「精緻」な調査の結果として、自らの教育政策を全く顧みておらず、学校や教職員、家庭の教育力などに責任を転嫁し、「道徳教育」の強化を求めている。

 「いじめ」問題は、大人社会のゆがみから生み出される子どもの苦悩の発信である。

 私たちは、「いじめ」を人権侵害の最たるものとしてとらえ、子ども一人ひとりの存在そのものを認め、寄り添い、管理主義や体罰を排除するなど、「学校を変える運動」をすすめてきた。憲法や「子どもの権利条約」の理念にもとづく「人権教育」を強化し、差別・偏見・抑圧などを排除する対等平等・共生・連帯の学校づくり、人権や民主主義を根づかせ浸透させていく教育に取り組むことが大切である。

 今、「働き方改革」が議論されているが、残業の上限を月平均六十時間、繁忙期は月最大百時間まで認める「労基法改正」が議論され、「残業代ゼロ法案」ももくろまれており、労働者の命と生活を守る法整備には程遠いものである。

 一方、政府の「働き方改革実現会議」において、経団連の榊原会長が「公立学校の教員の長時間労働を指摘し、議論の対象を公務員に広げること」を提案し、連合の高津会長も「週六十時間以上働く教員の比率が七割を超える」深刻な学校現場の改善を求めてきた。

 こうした過酷な状況は、「給特法」のもとで無制限・無定量の超勤が黙認されていることや、子どもや地域の実態とかい離した「教育政策」や「免許更新・研修」「査定等評価」の押しつけが要因である。

 北教組は、教育予算交渉において実効ある対策を求めた結果、①「勤務の割り振り」による超勤の実質的な回復を「家庭訪問」や「教育相談」、「二週間前からの学校行事の準備」に拡大すること②「土曜授業」にかかわり、一日単位の振り替えを可能とする―制度改善を新年度から行うこととさせた。

 課題はあるものの、全道のたたかいを背景に勝ち取った制度を活用し、「やむを得ず行った超勤の完全回復」を目指し、たたかいをすすめていくことが重要である。

 また、最大の要因である「給特法」体制を見直し、「労基法改正」を教職員に適用させるための全国連帯の運動の強化が必要である。

 日本の教育予算は、OECD二十八ヵ国中最低であり、所得格差が教育格差を一層拡大・固定化させ、教育の機会均等や子どもたちの権利を奪っている。

 私たちが二〇一三年度から開始した給付型奨学金事業は、主任手当の社会的還元としてすすめ、本年度も希望している中学三年生三百一人に、高校への準備資金として手渡すことができた。市町村や教育関係者、多くの道民の皆さんに応援や激励をいただいており、今後も継続していくことが必要である。

 一方で、政府の本年度教育予算は、子どもを競争させ、序列化することや教職員を管理する事業ばかりに金をかけている。

 自治体の格差が広がっている教材費や給食費などの保護者負担を無償化し、端緒についた「給付型奨学金」の拡大にこそ財源を傾注すべきである。まして、「教育無償化」を改憲の突破口とし、政争の具とする姑息な動きは断じて許されない。

 学校教育は、今ある政治や社会状況と切り離して考えることはできない。教育への攻撃に歯止めをかけるためには、今こそ組合の存在と力が必要である。

 たたかいを通して連帯することのできることの素晴らしさを知ることが組織強化の重要な観点ではないかと思う。

 引き続き、若い仲間に組合の意義や役割を訴えるとともに、自らが主体的に北教組運動に自信と確信をもって、組織拡大を図っていく運動を展開することが大切である。

 年度代わりに向け、私たちは、第一に、「人事評価制度」の管理強化のねらいを排除し、交渉で勝ち取った制度を活用して、超勤解消、勤務・教育条件の改善を実現すること、第二に、組織拡大センターの提起にもとづき、青年委員会を活性化させ、新採用をはじめ三十五歳以下の教職員を重点に未組織者の全員加入を目指すこと、第三に「学習指導要領改訂案」に対峙するため、「学校改革・教育課程自主編成検討委員会」などの報告を活用して、憲法・「47教育基本法」・「子どもの権利条約」の理念にもとづく自主編成運動をすすめる。

 憲法施行七十年、私たちは今、平和と民主主義、民主教育が最も危機にひんする歴史的岐路に立っている。

 この中央委員会が、皆さんの真摯な討議によって、たたかう北教組の当面方針が確定することを心から期待申し上げ、中央執行部を代表してのあいさつとする。

(関係団体 2017-03-03付)

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