道小第5回理事研―松井会長のあいさつ
(関係団体 2017-03-01付)

 道小学校長会の二十八年度第五回理事研修会(二月二十四日開催、二十八日付既報)での松井光一会長のあいさつはつぎのとおり。

          ◇          ◇          ◇

 理事研修会は、きょうで五回目を数え、本年度の最終を迎えた。道教委への要望書や教職員定数改善への働きかけからスタートした二十八年度だったが、この一年、副会長、理事の皆さんとともに、本道教育の諸課題の解決に向けて積極的に取組を進めることができたことを大変光栄に思っている。この場をお借りして厚くお礼申し上げる。

 さて、大きく三点についてお話しする。

 一点目は、今後の各種スケジュールについてである。第五回理事研修会「資料」に基づいて話す。「小学校外国語教育にかかる新教材の開発・整備実施スケジュール」が出ている。二〇一七年二月分は、文科省のホームページにアップされている。これは素案とサンプルだけだが、一時間の授業のイメージはわくと思う。

 つぎに、研修会で使用した学習指導要領改訂スケジュールである。これを参考にしながら、今後のスケジュールを確認する。

 昨年度の中教審答申を受けて、本年二月十四日、学習指導要領の案が示された。現在パブリックコメントの募集が行われている。

 全連小でもこのパブコメに応募していこうと検討を始めている。応募した意見が検討され、三月の末には新しい学習指導要領が告示される。

 二十九年度は、新しい学習指導要領についての周知徹底の期間となり、六月には各教科等の解説が出される。

 小学校は三十年度、三十一年度と先行実施の期間となり、三十二年度から全面実施となる。

 それと並行して、教科書であるが、二十九年度には各教科書会社の編集、三十年度は教科書検定、三十一年度に採択と供給が行われ、三十二年度から学習指導要領の全面実施と同時に使用が開始される。

 これまで教育改革が行われるたびに改革の波は教室の前まで来るが中には入っていかないと、いわれてきた。それは一人ひとりの教員が、改革が行われる背景や改革が目指すところを理解していないために起こっていることではないかと考えている。

 そのようなことを繰り返さないためにも、全教職員で答申や学習指導要領、特に今回は総則を読み込むことが必要である。

 今回の答申、それから学習指導要領の案だが、ホームページに掲載されているので、読んでいく必要がある。せめて概要版を印刷して全教職員で熟読をするということをするといいと思う。

 このように学習指導要領や答申を読み込んでいくと、おのずと全面実施までの間に学校で取り組んでいかなければならないことが見えてくる。

 例えば、保護者や地域の思いや考えを踏まえながら、学校教育の目標を見直すということ、校務分掌組織や生活時程を見直すこと、あるいは、主体的・対話的で深い学びについて授業研究を通して具体的な子どもの姿を明らかにして、全教職員で共通理解するというような、いくつかのことが浮かび上がってくると思う。

 まずは、教員自身が新しい学習指導要領に向けての問題意識をもてるようにすることが大切ではないか。

 今ほど校長のリーダーシップが求められているときはない。

 全教職員で、全面実施に向けて教育課程の編成と校内体制づくりを進め、児童の質の高い学びができるようにするために、校長としてその取組の意義と見通しを全教職員に示すことが大切であると考えている。

 そのために、今後皆さんが使えるもの、参考になるスケジュールを紹介する。

 全連小の大橋会長の学校で作成した試案である。東京都では、校長会の役員がそれぞれスケジュールを作成し、もち寄ってより良いものを検討していくそうである。

 これによれば、残された二十八年度の中で、中教審答申や学習指導要領の熟読・理解、教職員への情報提供、または学習会、そしてこのような今後の工程表をまず作成して提示するところまで行いたいものである。

 その時の学習会の例として、全連小の坂口副会長の学校で実際に行われた研修会の資料がある。

 レジメに沿って行われたが、未来予想の部分や、ユーチューブの活用など、工夫されている。実際にみんなで読み合った重要ポイントには、坂口副会長がアンダーラインを引いてある。また、その時の原稿も一番最後につけてある。

 全連小が現在作成中の展望と計画は、二十九年度の七月前の作成配布になるようなので、それでは間に合わないので用意した。どうぞお使いいただきたい。

 二点目は、文科省の来年度予算についてである。昨年の十二月二十四日に来年度の文部科学省の予算案が公表された。

 教職員定数にかかわっては、八百六十八人の増となった。

 この内訳は、加配定数の改善としての三百九十五人と、加配定数の基礎定数化としての四百七十三人である。

 まず、加配定数の改善の三百九十五人増についてであるが、外国語や理科・体育科などの小学校専科指導の充実のための百六十五人をはじめとして、いじめ不登校等への対応、貧困等に起因する学力課題の解消、アクティブ・ラーニングの視点からの授業改善などが含まれている。

 つぎに、加配定数の基礎定数化だが、二十九年度から三十八年度までの十年間で加配定数の約三割を基礎定数化していくとしている。

 内訳は、通級による指導の充実として、本年度六百二人の増、外国人児童生徒等教育の充実として、本年度四十七人の増、初任者研修体制の充実として 本年度七十五人の増となっている。

 さらに通級による指導の充実は、教員一人に対して現状では、児童生徒数が十六・五人だが十三人に減らしていく。

 同様に外国人児童生徒等教育の充実についても、教員一人に対して現状では児童生徒数が二十一・五人だが、これを十八人に減らしている。

 また、初任者研修体制の充実についても、現状は対象教員の割合が、一対七・一であるのに対して、一対六になる。

 この基礎定数化されたことによって、教職員の安定的計画的な採用研修配置ができるようになるとともに、対象児童生徒数や対象教員を減少させることで通級による指導の充実や日本語指導の充実そして教員の質を高める研修体制の充実につながっていく。

 一月三十日に文科省の予算説明会があり、文科省の財務課長から、今回の予算案は、文科省の思惑どおりになったという話があったそうである。

 その話の中で、財務課長は予算についての財務省との折衝を大きく三段階で考えているようである。

 まず今回の予算はその第一段階で、先ほど説明したように、これまで加配定数のため、毎年財務省と折衝し、不安定であったものを基礎定数化できたということである。言ってみれば外堀を埋めることができたということである。

 第二段階の内堀だが、新学習指導要領対応、教職員の負担軽減、貧困対策に対する教職員定数の改善だということである。

 そして第三段階の本丸は、少人数学級の実現であるということであった。一時、文科省の財務課から発信される中に、少人数学級という言葉がなく心配していたが、この実現に向けて、文科省としても着々と前進をしているということである。

 三点目は、学習指導要領の改訂にかかわってである。今回の全連小の理事研修会で講演された大杉室長の話から伝える。今回の話は大きく二点であった。

 一つ目は、「中教審答申の考え方がどのように学習指導要領の本体に反映されたのか。新しい学習指導要領の構造的な部分について」である。

 二つ目は、「小学校におけるカリキュラム・マネジメントの在り方に関する検討会議の報告書を使い、外国語新設に伴う、授業時間数の増に対して、どのような取組が考えられるのか」だった。

 今回の学習指導要領案を印刷すると、三百ページになる。しかし、これは全部、新しいことが詰め込まれた三百ページではない。

 むしろこれまでの学校教育のよさをもう一度見つめ直して、文字にしてみようという議論を中教審で重ねてきた結果である。

 日本の学校教育の強みとは何かを、これからもしっかりと受け継いでいこうということをあらためて議論していく、その中で学習とは何か、そもそも学校で学ぶとはどういうことなのか、普段当たり前であることをもう一度振り返ってみようという議論がこの中教審の何年かにわたるものだった。

 あらためてこのような議論がなぜ必要であったのか、これまでも学習指導要領改訂の中でもそのようなことは議論されてきた。

 なぜ今あらためてより深く、知識とは何かという一見当たり前のことを掘り下げて議論する必要があったのかということである。 

 二つあって、一つは、学校現場のいろいろな状況の中で上がってくる声だった。やはり教員の年齢構成が変わってきているということである。これまでのように、当然のように学校の日常の既習の取組の中で、よい指導技術の伝承などが自然と行われてきたということで、このままいけるのかどうか、ということである。もう少し意識的に日本の教育の良さを可視化して受け継いでいく、ということの仕組みが若手の先生方のこれからということも必要になっていくのではないか、教員の年齢構成の変化に伴う様々な必要性ということがあるわけである。

 学習指導要領の意義をとらえ直して、子どもたちにどのような力を身に付けていくのか、その中で必要な授業改善の視点をそのように身に付けていくのか、これをあらためて見える形でしっかりと受け継いでいけるようにする必要があるということが一つ目である。

 もう一つは、社会の変化が急速に加速化しているということ、情報化、グローバル化は、ずっと言われてきて久しいわけだが、それが私たちの予測を上回るかたちで、進化してきているということ、その中で、私たちよりも長くこの社会を支えていく活躍していくことになる子どもたちが生きていく未来の姿ということが、今よりも様変わりしているということが予測されるわけである。

 その中では、子どもたちにしっかりと社会の中で使える知識にしていく必要がある。そのためには、知識ということはいったい何かということ、それを身に付けるという学習ということは何かということを、いったん掘り下げて議論する必要があったのである。

 具体的なことを言うと、いつも人工知能の話になるが、人工知能も学習するといわれる時代に、人間の学習の強みは何なのか、人間自体の能力、できること、強みは何なのか。そういうことが切迫感をもって突きつけられているわけである。

 このように、教員の年齢構成の中で、日本の教育の良さをどのように受け継いでいくのか。急激な社会変化の中で、子どもたちに生きて働く知識・力を身に付けていくためにはどういうことが必要なのか。という二つの事情があって、今回あらためて学びとは何かという本質部分まで掘り下げて深く議論したわけである。この成果が三百ページになってきたのである。

 これまでも、中教審が手元の答申のような形でまとまったあとに、学習指導要領の形になると、中教審が何を目指して今回の議論をしてきたのかが、みえにくくなるという声があった。

 もちろん、解説を見ていただければしっかりと記されているわけだが、学習指導要領本体になるとみえにくくなるという声があったわけである。

 今回、小学校の学習指導要領を見てみると、目次のつぎに前文というものがついているが、これはそのような声を受けてつくられたものである。

 学校種を越えてどんなことを議論してきたのか、学術的な議論だけでなく現場の先生方の声を聴きながら進めてきた、各界の声を聴いて大人が知恵を結集してこれからの教育の在り方を考えてきた足跡のようなものを、前文という形でまとめたのである。

 また、カリキュラム・マネジメントということについては、総則を活用していただけるような形で組み直している。

 総則の四ページの四をみていただくと、まず教科横断的な視点で組み立てていくこと、②として実施状況を評価して、その改善を図っていくこと、③人的または物的な体制を確保するとともに、その改善を図っていくことがカリキュラム・マネジメントであるとしている。

 このカタカナ用語についてであるが、アクティブ・ラーニングという言葉は、学習指導要領から文言が消えたのに、カリキュラム・マネジメントという言葉は残っている。

 カリキュラム・マネジメントという言葉については、何らかの略称はという議論も、もちろん日本語を当てるという議論もあった。

 例えば、「教育課程経営」とか「教育課程改善」という日本語も考えたが、長いものを略称として使用することから、カリキュラム・マネジメントを残したというわけである。

 さらに、カリキュラム・マネジメントの検討会議報告書についてであるが、これは学習指導要領とは違うものだが、あくまでも、各学校の裁量である時間割、これを支える創意工夫を、ヒントをまとめたものである。

 したがって、これだけをやるとか、これ以外の選択肢がないということではない。ただ、あまりに選択肢が多いと、教育委員会や地域中学校等との調整など共通理解も図りにくいということで、ある意味考えられる選択肢、そのメリットデメリットを載せたものである。これからの各学校の検討や各学校の地域との統制に役立つようまとめた。

 「案1」として、「年間授業日数を増加させて時間割を編成」が、資料とともに、選択肢の一つとして記載されている。

 同様に、「週の時間割の中に短時間や長時間等の授業を複数位置付けること」が、朝、昼休み後、夕として位置付ける資料が掲載されている。

 また、「週の時間割に四十五分授業のコマを週一つ増やすこと、「案3」として、「年間授業日数の増と週当たり授業時数の増を組み合わせる」ことが選択肢の一つとして出ている。

 今後、教科書にも短時間の活用例等が載るなど、使いやすいように工夫されることになっている。

 最後になるが、本年度も「未来を見据え、チーム北海道として進む道小」をキャッチフレーズに、全道の校長先生方と思いを一つにして様々な活動に取り組むことができたことに、心から感謝申し上げる。これからも、北海道の子どものために、すべての学校が日々の授業の質を高め、子どもの成長の姿で各学校の教育活動を評価し、改善していきたいものである。そのためにも、「正論を以て、正道を歩む」という道小の基本理念を心に深く刻み込み進んでいかなくてはならないと思っている。

 今後とも道小の活動がますます充実したものになることを信じて、あいさつとする。

(関係団体 2017-03-01付)

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