理想の実現へ不断に努力 國田中央執行委員長あいさつ
(関係団体 2017-03-09付)

道高教組定期大会・國田委員長あいさつ
あいさつする國田中央執行委員長

 道高教組第百十九回定期大会(四・五日、札幌市内かでる2・7)における國田昌男中央執行委員長のあいさつ概要はつぎのとおり。

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 近ごろ、気になる言葉がある。「ポスト真実」という言葉である。「世論を形成する際に、客観的な事実よりも、むしろ感情や個人的信条へのアピールの方がより影響力があるような状況」を指すのだそうだが、事実よりも感情、見方を変えれば事実も変わるということであろうか。

 米大統領選挙では、トランプ陣営が大小様々なうそを並べ、同氏が大統領になった。英国のEU離脱の国民投票でもデマが飛び交い、「離脱」という結果が出てから事実が判明し、怒りを呼んだ。

 日本では、首相が福島第一原発の状況を「アンダーコントロールされている」と言ったり、防衛大臣が南スーダンの首都は「治安が落ち着いている」と述べたりしている。こうした、事実に基づかない主張がまかり通っている。

 最近は、「隠蔽四点セット」という言葉も出ている。文部科学省の天下り斡旋、南スーダンに派遣された陸上自衛隊部隊の「日報」、「共謀罪」の要件を絞ったテロ等準備罪をめぐって、法務大臣が作成させた「質問封じ」とも取れる文書、大阪・森友学園の格安での国有地取得。国会で野党が追及している四課題だが、政権の横暴ぶり、傍若無人さが目に余る。

 加えて、大阪の私立幼稚園は、園児に教育勅語を暗唱させたり、運動会で安保法制の国会成立を「よかった」と述べさせたりして、それを首相夫妻が高くもち上げていた。教育勅語は一九四八年に、基本的人権を損なうとして、衆院で排除、参院で失効が確認されていて、あたかも戦前の亡霊をみる思いである。

 今、学習指導要領が改訂されようとしている。二〇〇六年に改悪された教育基本法の全面展開を目指しての改訂と言われている。「道徳の教科化」、グローバル人材育成のための早期からの英語学習、授業時数の増加などがその特徴だが、国があらかじめ定めた「資質能力」に向けて教育を行うことは、教育の国家管理・統制になるという疑念を払えない。幼稚園や保育園では、現行にある「国旗」に加えて、「国歌」にも「親しむ」よう変更しようとしている。

 しかし、そもそも範を垂れるべき政府や省庁が、こうした状況の最中、それを言い出す資格があるのか、というのが国民的な感情ではないだろうか。

 今、政権与党とその補完勢力が市井で行っていることは、首相の明文改憲への強い執念の反映と受け止めることができる。この国を「戦争する国」「世界で企業が一番活動しやすい国」にし、教育をそのための道具にしてしまうのか、あるいは、憲法を守り生かし、誰もが平和のうちに生きる権利を保障する社会を築き、人格の完成を目指す教育を貫くのか、その岐路に、今まさに私たちは立っている。

 ことしは憲法施行七十年、教育基本法施行七十年の記念すべき年。私たちはどのように、現憲法を手にしたのか、思い起こす良い機会とすべきである。

 四七教育基本法では、日本国憲法の「理想の実現は、根本において教育の力に待つべきものである」として、憲法を十分に学ぶこと、不当な支配に服することがないよう、うたっている。子どもたちと真理真実を追究し、主権者としての自覚を育み、ともに憲法にうたわれた理想の実現に向けて、不断の努力を重ねることが私たち教職員に求められている。

 子どもたちの「今」から出発した学校づくりを進めることが、今ほど必要なときはない。私たちは、「子どもを丸ごととらえる」教育実践を目指してきた。単に現象を追うのではなく、背景もしっかり見据えた子ども観を共有し、子どもを真ん中にして、保護者、地域と一緒に、地元の子どもは地元で育てる実践にこだわってきた。

 貧困と格差のかつてないほどの拡大に、道内市町村が修学支援の手を差しのべ、高校生向け給付型奨学金を三十一自治体で、大学生向けには十六自治体が設けている。高校配置にかかわっては、一学年一学級校を存続させるべく、基準変更に道教委は舵を切った。そして、国も、その内容、規模ともに不十分ではあるものの、次年度から給付型奨学金が運用される。

 国の予算、道予算も、全体としては残念ながら、これまでの流れを変える内容にはなっていないものの、私たちの発信が、地域の声とともに予算に反映されている部分もみえている。教育予算拡充を求める署名では、道議会議員のほぼ三分の一に当たる三十一人が、党派を超えて、紹介議員になってくれていることも、その一つの到達である。

 教育を自己責任とする、これまでの風潮から、憲法や子どもの権利条約の理念が生きる教育、みんなが主権者としてお互いを尊重し合う社会をつくることが求められる。

 そのためには、私たちの力量を向上させると同時に、私たち自身の仲間を増やすことが必要である。

 私たちの運動は、職場や地域からの運動とすることで信頼と信用を得る。管理と統制、長時間労働が横行する職場では、子どもを丸ごととらえた教育活動は困難を極め、子どものちょっとした変化など話題にもできない。それぞれの職場で、子どものこと、教育のこと、職場のことを語り合う機会をもちたくても、「集まること自体がたたかい」という職場は少なくない。

 しかし、職場に渦巻く声なき声を要求に高め、その一つ一つを実現させようとする取組が、憲法を守り生かす運動そのものである。組織拡大三ヵ年計画の最終年となる二〇一七年、目標の総達成に向けて、ともに奮闘しよう。「教え子を再び戦場に送るな」を運動のスローガンに掲げてきた教職員組合として、憲法を根付かせる運動を進めよう。

(関係団体 2017-03-09付)

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