【リポート】全国初!美深小でチョウザメ飼育 地域産業振興の〝鍵〟に キャリア教育につなげ人材育成を
(学校 2017-03-14付)

美深小チョウザメ飼育
チョウザメにエサをやる1年生

 【旭川発】観賞用の水槽の中を元気に泳ぎ回る幼魚に粒状のえさを与える一年生。「体に白いでこぼこがあってかわいい」「たまに一列になっていて学校みたい」などと口にしながら、その様子を温かく見守っている。多くの学校でみられるありふれた光景に思えるが、美深町立美深小学校(西尾直樹校長)の場合は様子が異なる。その理由は、一年生が飼育している魚が〝チョウザメ〟だからだ。全国的に例をみない学校教育でのチョウザメ飼育。まちおこしのためにチョウザメ養殖技術を研究する㈱美深振興公社「チョウザメ館」の支援を受けながら、一年生が日々のエサやりや生態の学習などを行っている。

 チョウザメは、約三億年前から地球上に存在する淡水魚。分類学上のサメとは異なり、歯がなく、人に危害を加えることはない。塩漬けした卵はキャビアとして世界中で珍重されている。

 近年、乱獲による絶滅が危惧されているが、かつては美深町を流れる天塩川にも遡上していたという。美深町では国の飼育実験に協力したことをきっかけに養殖事業に着手。現在、チョウザメ館が養殖技術の確立に向けて研究を進めている。新年度にはチョウザメの飼育施設の拡充に着手し、養殖規模の拡大を目指す。将来的には、加工工場も建設し、チョウザメ肉とキャビアの生産から販売までを手がける六次産業化を図る考えだ。

◆命の大切さ学ぶ

 美深小では、一年生の生活科の一環として、生き物を大切にする心情を育むため、ウサギや昆虫などを飼育してきた。本年度からは、この取組のさらなる充実をねらって、町とゆかりの深いチョウザメの飼育に挑戦することに。一年担任の和田佐和子教諭が同館に協力を依頼した。

 同館では、「育ちが遅い個体を教育用・観賞用に活用できるのでは」と考え、快諾。五匹の幼魚を貸与した。

 しかし、チョウザメは特殊な水槽・施設以外での飼育は難しく、「小学校での飼育の成功は全国的にも例がない」(同館飼育員・鈴木渉太氏)。実際、夏場には猛暑で水槽内の温度が上昇し、一匹が衰弱死。肩を落とした児童たちだったが、「チョウザメの死をきっかけに、より責任感をもって世話に力をいれる姿がみられた」(和田教諭)。命の大切さを学んだ児童の熱心な世話の甲斐もあって、当初は十㌢程度だったチョウザメは、十五㌢までに成長した。

 日ごろの世話と並行して、生活科の授業では、チョウザメの生態や飼育方法などを学習。同館の見学も行った。昨年十一月末には、保護者や鈴木氏を招き、五ヵ月間にわたる飼育を通して学んだことを、絵や写真、寸劇などで発表した。

◆人を育て、扉を開く

 西尾校長は、こうした取組が子どもたちの成長に大きく寄与しているとみており、「今後も飼育がうまくいくようなら、本校のカリキュラムに位置付けていきたい」と話す。また、将来のまちおこしも見据え、「チョウザメにかかわる人材の育成につながれば」と期待している。

 チョウザメによるまちおこしが実現するには、ふるさとを愛し、まちの産業に関心をもつ人材が育っていなければならない。同校の取組は、〝まちの夢〟という名の扉を開く、一つの〝鍵〟となっている。

(学校 2017-03-14付)

その他の記事( 学校)

28年度文部科学大臣優秀教職員表彰 課題解決へ学び続ける 小樽市稲穂小が組織部門で受賞

稲穂小文部科学大臣優秀教職員表彰  【小樽発】小樽市立稲穂小学校(寺澤真校長)は、二十八年度文部科学大臣優秀教職員表彰の教職員組織部門を受賞し、六日に東京で行われた表彰式に出席した。寺澤校長は「小樽市内の学校として、このよう...

(2017-03-15)  全て読む

帯広市稲田小が「メンティー交流会」 若手育成の方法等探る 初任者同士の悩み交流も

稲田小メンティー交流会  【帯広発】帯広市立稲田小学校(楜澤実校長)は二月下旬、稲田小エリア「メンティー交流会」を開催した。同校や近隣校から三十五人が参加。経験の浅い教員(メンティー)と、中堅・ベテラン教員(メンタ...

(2017-03-15)  全て読む

道教育大・愛知教育大・東京学芸大・大阪教育大 学生が実習成果など報告 へき地・小規模校教育フォーラム

へき地・小規模校教育フォーラム  道教育大学、愛知教育大学、東京学芸大学、大阪教育大学は七日、道教育大札幌駅前サテライトで二十八年度へき地・小規模校教育フォーラムを開催した。学生や教員、教育関係者など約七十人が参加。学生の...

(2017-03-14)  全て読む

札幌工科専門学校が第35回卒業式 社会に役立つ技術者に 公務員など資格取得多数

札幌工科卒業式  学校法人常松学園(常松哲理事長)札幌工科専門学校(三上敬司校長)は十日、札幌市内のホテルユキタで第三十五回卒業証書授与式を挙行した。公務員試験合格者二十二人をはじめ、多くの資格を取得した卒...

(2017-03-14)  全て読む

千歳リハビリテーション学院 セラピストへの道へ一歩 理学・作業療法科97人が卒業

千歳リハ卒業式  理学療法士、作業療法士を養成する北海道千歳リハビリテーション学院(伊藤俊一学院長)は九日、千歳市内のANAクラウンプラザホテル千歳で二十八年度卒業証書授与式を挙行した。理学療法学科第二十期...

(2017-03-14)  全て読む

第7回バッハピアノコンクール 篠田さん(三笠小1年)が全国で銀 三笠市教委を表敬訪問

バッハコンクール  【岩見沢発】三笠市立三笠小学校(上野喜孝校長)一年生の篠田萌奈さんは二月二十四日、三笠市教委を訪問し、永田徹教育長にピアノコンクール「第七回バッハコンクール全国大会」で銀賞受賞の報告を行っ...

(2017-03-13)  全て読む

東神楽中と台湾大園中が姉妹校に 交流深め国際感覚養う 調印式を挙行し協定締結

東神楽中と台湾の中学校姉妹校提携  【旭川発】東神楽町立東神楽中学校(飯田勝彦校長)は、台湾桃園市立大園国民中学(李培濟校長)と姉妹校提携を結んだ。二月二十日に台湾の大園国民中学で調印式を挙行し、両校の校長のほか、山本進町長...

(2017-03-13)  全て読む

函館大付属柏稜高理科研究部が快挙 努力評価されうれしい! 日本化学会道支部奨励賞を受賞

函館柏稜高校理科研究部奨励賞受賞  【函館発】函館大学付属柏稜高校(宮岡秀昌校長)の理科研究部が、二十八年度日本化学会北海道支部奨励賞(高校生活動の部)を受賞した。二十六年度以来、三度目の受賞。一月中旬には、北海道大学で受賞...

(2017-03-10)  全て読む

次期学長にマルクス師 藤女子大

 藤女子大学は、永田淑子学長の任期満了に伴う次期学長に、南山学園理事長のハンス・ユーゲン・マルクス師(カトリック司祭)を選任した。  マルクス次期学長は、一九四四年生まれ、ドイツ連邦共和国...

(2017-03-09)  全て読む

札幌市立大学が卒業修了研究展 デザイン専攻した22人 学びの成果 作品に込め 

市立大学デザイン卒業研究展  札幌市立大学(蓮見孝学長)のデザイン学部・デザイン研究科は三日から七日まで、札幌駅前通地下広場チ・カ・ホで第八回卒業修了研究展を開催した。今月卒業・修了予定の学生二十二人による創意工夫に満...

(2017-03-09)  全て読む