道教委がいじめ問題審議会報告書公表 組織的対応の徹底等提言 教育長「防止の取組を充実」
(道・道教委 2017-04-17付)

 道教委は十三日、道いじめ問題審議会がまとめたいじめの重大事態に関する調査報告書を公表した。道立学校の生徒と保護者の申立に応じて調査審議したもの。申立のあった八項目の行為のうち、四項目をいじめと判断し、生徒が断続的に欠席を繰り返したのは、それらを含めた複数の要因が複合的に影響したと分析した。併せて、学校には、学校いじめ防止基本方針の見直しや組織的な対応の徹底など、道教委には、学校いじめ防止基本方針の実施状況の確認と指導などを提言した。柴田達夫教育長は、提言を踏まえ、「未然防止の取組を一層充実させ、児童生徒が安心して学校生活を過ごせるよう、あらためて指導していく」とのコメントを発表した。

 二十六年施行の「北海道いじめの防止等に関する条例」では、児童生徒に重大事態が発生した疑いがあると認める場合、また、児童生徒や保護者から重大事態が発生した、または、その疑いがあると申立があった場合、道立学校は道教委を通して知事に報告。道教委は、重大事態への対処や同様の事態の防止のため、道教委の附属機関である道いじめ問題審議会に調査を行わせることとしている。

 道立学校の生徒とその保護者から学校と道教委に対し、学校のバレーボール部内で、複数の生徒からいじめを受けているとの申立があったことから、報告、調査審議の運びとなった。

 審議会の調査報告書は、ことし三月一日の教育委員会会議で決定。申立を行った生徒や保護者に関連する意見の有無などを聴取した上で、今月十二日、道教委が知事に調査結果を報告した。

 道教委が十三日に公表した調査報告書によると、申立でいじめとされた八項目の行為のうち、四項目については、「いじめと判断する」と結論づけた。

 また、生徒や保護者が申立に至ったのは、学校の対応に対する不信感などの影響があったと考えられることを指摘。

 生徒が断続的な欠席を繰り返すようになったのは、いじめと判断される行為を含めた複数の要因が「複合的に影響したと考えることができる」とした。

 併せて、学校には、記録の徹底や保管、生徒への面談手法など、また、管轄教育局には、今回の事案に対する学校の先入観をそのまま受け取って対応したなどの課題があると指摘した。

 これらを踏まえ、審議会は、再発防止などのための提言を報告書に記載した。

 学校の措置としては、今回の事案の課題を踏まえ、「学校いじめ防止基本方針の見直し」を図り、実効性のあるものに変更することを挙げた。

 また、いじめが疑われる兆候や懸念、生徒の訴えなどを一人の教職員が抱え込むことなく、報告・相談できる体制づくりなど、「学校いじめ対策組織を中核とした組織的な対応の徹底」も提言。

 このほか、「学校いじめ防止基本方針等の教職員に対する周知徹底」「指導等の記録や情報管理の徹底」「生徒に対する指導の在り方についての研修の実施」「外部専門家の積極的な活用」「部活動運営の在り方についての検討」も盛り込んだ。

 道教委に対しても、「学校いじめ防止基本方針の実施状況の確認および指導」を提言し、その観点として、「いじめの防止等の取組を体系的・計画的に行うための包括的な方針」などを挙げた。

 「学校いじめ対策組織を中核とした組織的な対応の徹底」のため、学校に対する指導助言も提起。

 さらに、「いじめの未然防止の取組の推進」「教育相談等にかかる教職員の資質向上を図るための資料の作成」「外部専門家の積極的な活用にかかる普及啓発」「生徒指導にかかる指導主事の資質向上を図るための研修の実施」「生徒指導にかかる管理職の資質向上を図るための研修の実施」を提言した。

 報告書は、加害者とされる生徒への聴き取り調査に協力を得られなかった、また、学校の記録が不十分など、調査上の制約があったが、事案の背景や事実関係、学校の対応上の課題などを含めて、可能な限り詳細に記載した。

 今回、個人情報に配慮して一部にマスキングをかけてはいるものの、その報告書を公表したことを通して、道教委は、いじめ問題の防止や解決に向けた真摯な姿勢を示した。

 報告書を受け、知事は、自らの附属機関・道いじめ調査委員会に、再調査の必要性などを諮る。

◆教育長コメント

 柴田教育長のコメント内容はつぎのとおり。

          ◇          ◇          ◇

 いじめは、いじめを受けた子どもの教育を受ける権利を著しく侵害し、その心身の健全な成長および人格の形成に重大な影響を与えるのみならず、その生命または身体に重大な影響を生じさせるおそれがあり、決して許されるものではない。

 道と道教委は、二十六年に、全国に先がけて、「北海道いじめの防止に関する条例」を制定し、いじめの未然防止や早期発見・早期対応を柱とした、いじめをしない、いじめをさせない、いじめを許さない環境づくりの取組を進めてきた。

 こうした中で、道立学校において、二例目のいじめ重大事態の疑いがある事案が発生し、「北海道いじめ問題審議会」における調査審議の結果、いじめと判断される行為があったことについては、大変遺憾であり、重く受け止めている。

 今後、道教委としては、調査の結果や報告書に記載している再発防止に向けたいじめ問題審議会の提言をしっかりと受け止め、各道立学校に対し、いじめの早期発見等はもとより、このような事態が生じないよう、いじめの未然防止の取組を一層充実させ、児童生徒が安心して学校生活を過ごせるよう、あらためて指導していく。

(道・道教委 2017-04-17付)

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