29年度上川管内教育推進の重点 “社会で活きる力”育成 学校・家庭・地域の連携を―上川局が公立高・特校長会議開催(道・道教委 2017-04-28付)
【旭川発】上川教育局は十九日、上川合同庁舎で二十九年度管内公立高校・特別支援学校長会議を開催した。中島康則局長が本年度の管内教育推進の重点を説明。基本的な考え方を、「確かな学力、豊かな心、健やかな体のバランスのとれた育成」「学校、家庭、地域の連携による上川らしい教育の推進」と示した。その上で、重点として①社会で活(い)きる実践的な力の育成②豊かな心と健やかな体の育成③信頼される学校づくりの推進④地域全体で子どもたちを守り育てる体制づくりの推進⑤北海道らしい生涯学習社会の実現―の五点を挙げた。それらを踏まえ、中島局長は「市町村教委や学校と手を携えながら、上川らしい取組を積極的に展開し、管内教育の充実・発展に取り組んでいく」と述べた。
〝社会で活きる力〟育成
学校・家庭・地域の連携を
管内における教育推進の重点はつぎのとおり。
◇
【はじめに】
二十九年度管内教育推進の重点を申し上げる。
昨年度、校長の皆さんには、教育改革の潮流を受け止めながら、管内教育推進の重点に基づいた創意ある学校づくりに力強いリーダーシップを発揮していただき、感謝申し上げる。
とりわけ、本道の課題である学力や体力の向上にかかわり、さらなる授業改善、望ましい生活習慣の定着やいじめの問題など、校長として学校経営の方針を明確に示し、教職員が一体となって組織的な取組を展開し、着実に成果を上げていただいている。
本年度も、すべての学校で管内教育推進の重点が質の高い教育活動として展開され、確かな学力や豊かな心、健やかな体がバランスよく育成されるよう、学校、地域、家庭の連携による上川らしい教育を推進していただきたいと考えている。
さて、国においては、社会の急激な変化による複雑で予測困難な時代の到来に備え、子どもたちが主体的に向き合ってかかわり合い、自らの可能性を発揮し、よりよい社会と幸福な人生の創り手となるよう、「社会に開かれた教育課程」を理念に掲げた、義務教育における新学習指導要領が二十九年三月に告示され、高校についても、本年度、告示される予定となっている。
また、道においては、二十年に策定した「北海道教育推進計画」が本年度で最終年度となることから、各施策項目の目標の確実な達成と、取組状況の評価・検証を行うこととしている。
本日は、こうした教育の情勢を踏まえ、道の教育行政執行方針および昨年度の管内教育推進の重点の評価結果に基づき、本年度、重点的に取り組んでいただきたい内容を示す。
【重点Ⅰ 社会で活(い)きる実践的な力の育成】
重点の一点目は、「社会で活きる実践的な力の育成」について。
子どもたちが変化の激しい社会において、たくましく生きていくためには、基礎的・基本的な知識・技能と、それらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力等に加え、主体的・対話的で深い学びによる学習意欲の向上や人間性などを総合的に育んでいくことが大切である。
そのため、各学校においては、次期学習指導要領の改訂や大学教育との接続にかかわる改革などを見据え、特に、重点Ⅰの1の①~③に示した、
▽課題の発見・解決に向けた、主体的・対話的な深い学びの充実
▽校外の研修会への参加促進
▽「学力テスト等」を活用した指導方法の工夫改善
―に取り組んでいただくようお願いする。
教育局としては、
▽「道高校学力向上実践事業」の成果の普及
▽各研究指定校の教育活動への支援およびその成果の普及
―に努める。
また、選挙権年齢が十八歳に引き下げられたことに伴い、④の生徒に対し、選挙に関する知識や教養を身に付けさせるため、公民科の授業のみならず、ホームルームや総合的な学習の時間などを活用し、学校の教育活動全体において、組織的・計画的に
▽選挙に関する知識や教養を身に付けさせる指導の充実
―を図るよう、お願いする。
教育局としては、学校教育指導などの機会を活用し、
▽副教材『私たちが拓く日本の未来』を活用した取組
▽政治的教養を育む教育の特色ある指導の実践例の普及、啓発
―に努める。
重点Ⅰの2「インクルーシブ教育システムの理念を踏まえた特別支援教育の推進」について、特に、お願いしたいのは、子どもの教育的ニーズに応じ、自立を促し社会参加につなげていく一貫した支援の充実に向けて、小・中・高校の学校種間の連携を図った支援体制を確立することや校内研修の充実を図り、教職員の専門性を向上させることである。
管内においては、個別の指導計画や個別の教育支援計画が作成されているものの、校内委員会の実施や指導計画の作成・検討・見直しが一部の専門性を有した担当者任せになり、学校全体の取組になっていない状況もみられる。
そのため、各学校においては、障がいのある子どもと、障がいのない子どもがともに学ぶインクルーシブ教育システムの理念を踏まえ、特別な教育的支援が必要な子どもの指導や支援の充実に向け、
▽個別の指導計画および上川版個別の支援計画「すくらむ」等の活用による一貫した支援の充実
▽「校内研修プログラム」や実践事例集を活用した特別支援教育に関する研修の充実
▽保健・福祉等の関係機関と連携した早期からの相談、支援の推進
―を図るよう、お願いする。
教育局としては、
▽「上川管内特別支援連携協議会」の協議を踏まえた取組の推進
▽「発達障がい支援成果普及事業」の推進地域および推進校の支援と成果の普及
―などに努める。
重点Ⅰの3「新しい時代を切り拓く力を育む教育の推進」について、特に、お願いしたいのは、生徒が急速に進むグローバル化に対応できるようにするとともに、自分が生まれ育った地域への愛着や誇りをもち、夢や希望をもって日々の学校生活に取り組みながら、主体的に自己の進路を選択・決定できる能力を育むことである。
各学校で生徒の社会的・職業的自立に向け様々な教育活動に取り組んではいるものの、すべての生徒が将来を前向きにとらえられるようにすることが必要である。
そのため、各学校においては、
▽「マイノート」を位置付けた全体計画、年間指導計画の作成によるキャリア教育の充実
▽全生徒が在学中にインターンシップを経験する取組の促進
―をお願いする。
また、グローバル化した現代社会で活躍する人材を育成するため、
▽海外の生徒との交流などの国際理解教育の取組の一層の充実
▽「U―18未来フォーラム」指定事業における地区フォーラム参加による英語教育の充実
―を図っていただくよう、お願いする。
教育局としては、富良野市で取組を進めている「小中高一貫ふるさとキャリア教育推進事業」の成果を踏まえ、ふるさと教育の要素を盛り込んだ「マイノート」の改訂版および指導の手引の作成などに取り組んでいく。
【重点Ⅱ 豊かな心と健やかな体の育成】
重点の二点目は、「豊かな心と健やかな体の育成」について。
子どもたちが、互いに尊重し合い、ともに支え合いながら、社会の一員として成長していくためには、学校・家庭・地域が連携しながら、心身の健やかな発達を支え、子どもが自らの生き方を主体的に考えることができる力を育むことが大切である。
とりわけ、いじめの根絶のためには、いじめの芽は、どの子どもにも生じ得るという認識に立ち、常日ごろから望ましい人間関係を醸成することや、ネットトラブルを回避する観点から情報を適切に取り扱う能力を育むことが重要である。
そのため、子どもたちの健やかな成長と安心して学ぶことができる環境を整えるため、重点Ⅱの1に示した、
▽いじめ防止基本方針に基づいた組織的な取組の推進
▽生徒会が中心となったいじめ根絶に向けた取組および地域と一体となった取組の推進
▽ネットトラブルの未然防止に向けた情報モラル教育の充実
―を図っていただくよう、お願いする。
さらに、いじめや不登校の事案に対応するため、学校における教育相談や組織的な取組の支援に向け、
▽「児童生徒理解・教育支援シート」等の活用、家庭や関係機関と連携した不登校の問題の対応に向けた取組の推進
▽子ども理解支援ツール「ほっと」を活用した生徒指導の推進
▽スクールソーシャルワーカー等の関係機関と連携した生徒指導の推進
―をお願いする。
教育局としては、
▽毎年十月に開催している、「どさんこ☆子ども地区会議」や「いじめ未然防止モデルプログラム事業」の成果の普及
▽生徒指導に関する研修事業の充実
▽「上川管内地域いじめ問題等対策連絡協議会」の協議を踏まえた取組の推進
▽「高校生ステップアップ・プログラム」の成果の普及
―などに努める。
重点Ⅱの2「心身の健やかな成長を促す教育の推進」については、子どもたちが安心して学校生活を送ることができるよう、
▽交通規則の順守についての指導の徹底
▽地域と連携した防犯、防災等の意識向上を図る安全教育の推進
▽危険ドラッグを含む薬物乱用防止教室の実施
―をお願いする。
教育局としては、先進的な事例について情報提供させていただくとともに、
▽「学校安全教室」の成果の普及
―などに努めていく。
信頼回復へ服務規律順守
【重点Ⅲ 信頼される学校づくりの推進】
重点の三点目は、「信頼される学校づくりの推進」について。
重点Ⅲの1「教職員に対する信頼性の向上」について、特に、お願いしたいのは、服務規律の保持や法令順守に対する高い意識の醸成など、教職員一人ひとりの資質・能力の向上を図る取組を一層推進することである。
昨年度は、当管内において飲酒運転やわいせつ行為によって懲戒処分となる事案が相次いで発生し、児童生徒、保護者、地域住民はもとより、全道民からの信頼を著しく失墜する事態となり、すべての上川管内の教育関係者が、失われた信頼の回復のため、不祥事防止の徹底に一丸となって取り組むよう、局長メッセージを発してお願いした。
今後は、服務規律順守の大切さをしっかり認識し、
学校管理職、教職員一人ひとりが、それぞれの立場で、
不祥事防止の徹底に向けてあらゆる努力を重ねていくことが必要であると考えている。
そのため、各学校においては、重点Ⅲの1の①に示した、
▽飲酒運転根絶等コンプライアンス確立にかかわる職場研修や個人面談の実施
―など、四点について確実な取組をお願いする。
教育局としては、「上川管内コンプライアンス確立会議」を年度の早い時期に開催し、管内共通の取組について協議するとともに、事例を含む資料の提供などを通じて啓発に努めていく。
重点Ⅲの2「魅力ある学校づくりの推進」について、特に、お願いしたいのは、次期学習指導要領の改訂を見据え、新しい時代に対応した「チーム学校」としての組織づくりを推進することである。
地域から信頼され、魅力ある学校づくりを推進するためには、PDCAサイクルに基づく、学校の組織マネジメントの充実を図るため、
▽学校評価における喫緊の課題に即した評価項目の設定
▽教育活動やその他の学校運営の状況について積極的な公表に努める
―などが必要である。
また、教育の質を確保する観点から、
▽ICT機器を活用した学習活動の充実を図る校内研修の一層の促進を図っていただくよう、お願いする。
教育局としては、ICTを活用した特色ある授業実践にかかる成果の普及などに努めていく。
地域の教育力向上が重要
【重点Ⅳ 地域全体で子どもたちを守り育てる体制づくりの推進】
重点の四点目は、「地域全体で子どもたちを守り育てる体制づくりの推進」について。
社会が急激に変化する中、学校・家庭・地域・行政が連携・協力して、子どもたちを守り育てることが求められており、家庭や地域での教育の充実を図るとともに、地域の教育機能を幅広く活用していくことが重要である。
上川管内においても、地域で子どもを育てる取組が広がっており、こうした取組を管内全体で進めるため、「上川生活習慣・読書習慣定着ガイドライン」を踏まえた取組の推進をお願いする。
また、家庭の教育力の向上を図る取組として、
▽保護者が日常的に相談や交流ができる仕組みづくりの推進
▽家庭教育サポート企業、NPOなどの人材やノウハウの活用
▽ネット利用も含めた望ましい生活習慣の定着に向けた取組の推進
―をお願いする。
さらに、地域の教育力の向上を図る取組として、
▽コミュニティ・スクールの導入に向けた取組の推進
▽「朝読・家読(うちどく)運動」の推進を図っていただくよう、お願いする。
教育局としては、
▽コミュニティ・スクールの導入に向けた取組の推進
―などに努めていく。
【重点Ⅴ 北海道らしい生涯学習社会の実現】
重点の五点目は、「北海道らしい生涯学習社会の実現」について。
重点Ⅴについて、特に、お願いしたいのは、道民が潤いのある生活を送るとともに、持続可能な地域づくりを進めるため、生涯を通じ積極的に学び、その成果を生かせる環境をつくることである。
管内においては、道民カレッジやほっかいどう学検定・ジュニア検定に児童生徒の参加はあるものの、ふるさと北海道への理解を深めるためには、一層の参加促進が必要と考えている。
そのため、学校においては、重点Ⅴの2の①に示した、
▽ほっかいどう学検定・ジュニア検定の参加促進
―など三点に取り組んでいただくよう、お願いする。
教育局としては、
「道民カレッジ」連携講座の拡充などに努めていく。
【むすび】
以上、本年度の管内教育推進の重点について、五つの柱から皆さんに取り組んでいただきたいことについて申し上げた。
上川教育局としては、北海道教育の基本理念である「自立」と「共生」のもと、市町村教委や学校と手を携えながら、上川らしい取組を積極的に展開し、管内教育の充実・発展に取り組んでいくので、二十九年度の管内教育推進の重点の実現に向けて、理解と協力をいただくよう、お願いする。
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中島局長が管内教育推進の重点について説明した
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