「近美コレクション」開催中―8月15日まで 20世紀前半美術の多彩な様相を紹介 小樽芸術村とのコラボも
(道・道教委 2017-06-02付)

第Ⅰ期名品選
第Ⅰ期名品選

 道立近代美術館は、特別展「大原美術館展Ⅱ」と連動し、同館所蔵のエコール・ド・パリの芸術家たちや同時代の日本・北海道の作家たちの秀作によって二十世紀前半の美術の多彩な様相を紹介する開館四十周年記念近美コレクション第Ⅰ期名品選「そして彼らは伝説になった―20世紀の芸術家たち」、小樽芸術村の所蔵品を同館所蔵品と合わせて紹介する「小樽芸術村×近美 ガラスコレクション華やぐ光と彩り」のほか、「新収蔵品展」「この1点を見てほしい。」を同時開催している。八月十五日まで。

◆第Ⅰ期名品選

 昭和四十八年に美術館開設準備室が発足し、昭和五十二年七月に開館した道立近代美術館は、ことしで創立四十周年を迎える。

 同館の五つの収集方針「北海道の美術」「日本近代の美術」「エコール・ド・パリ」「ガラス工芸」「現代の美術」に基づいて形成されたコレクションは、現在、五千点を超える。中でも、「エコール・ド・パリ」の美術は、「北海道の美術」の興隆期に重なる同時代の美術として、特徴的な柱となっている。

 「近美コレクション名品選」は、このコレクションから、代表的な作品や展示希望の多い作品を選りすぐって紹介する展覧会。開館四十周年を記念する本年度の第Ⅰ期名品選では、一九二〇年代を中心としたヨーロッパと日本の画家の名品を紹介する特別展「大原美術館展Ⅱ」(十一日まで)と連動し、同館所蔵のエコール・ド・パリの芸術家たちや同時代の日本・北海道の作家たちの秀作によって二十世紀前半の美術の多彩な様相を紹介する。

 「第1章 はるかなる異国」「第2章 海を渡った日本人画家」「第3章 エコール・ド・パリ―呪われた画家の伝説」で構成。

 一九二〇年代から三〇年代にかけて、多くの日本人画家がヨーロッパに渡り、最先端のアートにふれた。北海道ゆかりの画家たちも多く渡欧したが、そんな時代、パリに行かずとも世界の新たなアートを敏感に感じ取り、前衛的な作品を発表した画家たちがいた。  「はるかなる異国」のコーナーでは、上野山清貢、三岸好太郎らの作品とともに、彼らの活動を紹介している。

 日本人画家のヨーロッパ留学は、一九二〇~三〇年代に盛んとなり、まさにこの「エコール・ド・パリ」の時代、一時はパリ滞在の日本人美術家が数百人にものぼるといわれるほどだった。「海を渡った日本人画家」のコーナーでは、乳白色の地肌に線描する独創的な手法を開拓し、一躍パリ画壇の寵児となった藤田嗣治をはじめ、滞仏中サロン・ドートンヌなど、展覧会に六回入選し、帰国後は小樽を中心に活躍した工藤三郎、札幌生まれで、南欧の陽光を感じさせる明るくのびやかな作風で知られる山田正の作品などを展示している。

 「エコール・ド・パリ―呪われた画家の伝説」では、ブルガリア生まれで、哀愁と退廃の匂いに満ちた甘美な女性像を多く描き、エコール・ド・パリの一人として足跡を残したジュル・パスキン、ポーランド生まれで、キュビスムの影響を受け、肖像画などで成功を収めたキスリング、パリに生まれ、哀愁に満ちたパリの街角など身近な風景画を数多く描いたモーリス・ユトリロ、ロシア出身で、鮮烈な色彩と独特のデフォルメによる表現主義的な作風を確立したハイム・スーチンなど、画家十九人の六十作品を紹介している。

◆小樽芸術村×近美

 昨年七月にオープンした小樽芸術村は、㈱ニトリの美術コレクションを展示する施設。その一部として、ステンドグラスやアール・ヌーヴォーのガラスの美術館がすでに多くの来館者を楽しませており、ことし秋には、岸田劉生や横山大観をはじめとする近代美術を展示する「似鳥美術館」が開館する予定。

 同展は、小樽芸術村の所蔵品を道立近代美術館と道立三岸好太郎美術館の二つの会場で、各館の所蔵品と合わせて紹介するもの。

 このうち、近代美術館では、同館ならびに小樽芸術村が所蔵するアール・ヌーヴォー期からアール・デコ期に活躍したガレやドーム、ルソー、ルネ・ラリックなどの作品、あるいは同時期に活躍した作家の作品合わせて四十六点を展示。小樽芸術館と近美コレクションのコラボレーションによって、その彩りや輝きをより一層充実したラインアップで鑑賞することができる。

◆新収蔵品展

 二十八年度は、北海道ゆかりの作家の作品十一点とガラス工芸作品六十七点が寄贈され、あわせて、油彩作品一点が新たに寄託された。これによって、同館の収蔵作品数は、五千百九十二点となった。

 このコーナーでは、二十八年度に新たに収蔵した作品を紹介。日本的な美意識を体現するものとして、国内外で高い評価を得た「しづくガラス」など淡島雅吉のガラス作品、荒井龍男、亀山良雄の油彩、写真や映像などとはひと味違う鯉の実在感を生み出す岩橋英遠の日本画《游鯉》、小柴外一のガラス、栗谷川健一のポスターなどを紹介。

 また、寄託作品として、画面全体を細密描写で埋める野田弘志の人物画《THE―8》を展示している。

◆この1点を見てほしい。

 五千点以上の同館コレクションから学芸員が一点を選び、多角的な研究を通して作品の奥深い魅力を紹介するコーナー。今回は、アール・ヌーヴォーを代表するフランスのガラス工芸家エミール・ガレの《蜂文花器》を展示している。一九〇〇年ころに制作されたもので、シンプルな形態とデザインながら、最盛期の高度な技術と自然に対する深い洞察が凝縮された一点。 二十二日からは、山内壮夫の《戦歿学生長恨碑》を紹介する。

 八月十五日まで。開館時間は午前九時三十分から午後五時(入場は午後四時三十分)まで。七月二十一日(金)は午前九時三十分から午後九時(入場は午後八時三十分)まで。毎週月曜日休館(七月十七日は開館、翌十八日休館)。

 観覧料は一般五百十円、高大生二百五十円、中学生以下と六十五歳以上は無料。高校生は毎週土曜日無料。 問い合わせは、同館(電話〇一一―644―六八八二)まで。

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小樽芸術村×近美
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新収蔵品展
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この1点を見てほしい
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(道・道教委 2017-06-02付)

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