北教組が道教委に対し声明 全国学力・学習状況調査報告書 教育条件の整備・拡充必要(関係団体 2017-12-04付)
北教組(信岡聡中央執行委員長)は十一月二十八日、二〇一七年度道教委『全国学力・学習状況調査北海道版結果報告書』に対する声明を発表した。「本来果たすべき超勤・多忙化対策や教育条件整備をはじめとした公教育としての責務を放棄し、一層学校現場の要求とかい離した施策を押し付けるもの」と批判。子どもの「貧困」の解消、「学び合い」を可能とする少人数学級の推進など、教育条件の整備・拡充に取り組む必要性を強調した。
声明の概要はつぎのとおり。
◇
道教委は十一月二十八日、二〇一七年度『全国学力・学習状況調査北海道版結果報告書』(以下『報告書』)を公表した。今回の報告では、小中各一校しかない自治体を含む百七十四市町村の自治体が結果公表に同意している。これは、道教委が各市町村教委に対して執拗に「結果公表」を求め続けてきた結果であり、一層序列化を加速させるものであり、断じて容認できない。
『報告書』は、「全国の平均正答率との差が小・中学校ともに改善の傾向にある」とした八月の北海道の「調査結果」をもとに、①全国と全道平均正答率の推移および管内のばらつき②学習の指導方法や関心・意欲・態度③家庭学習の時間と計画性④小中連携や地域の人材活用⑤下位層(全国の下位二五%)に含まれる子どもの割合―などを示し、全国と全道・管内、都市部とその他の市町村、全道と他県との比較に終始している。
子どもに対して「授業」「学習習慣」「生活習慣」の観点で、教職員に対して「指導方法」「家庭学習」「カリキュラム・マネジメント」「小中連携・地域の人材活用」などの観点で全国や他県とレーダーチャートで比較している。これらをもとに「今後の改善の方向性」として、①授業の見通しと振り返る活動を位置付ける②主体的・対話的で深い学びの視点による学習指導に取り組む③学習習慣や生活習慣の確立のため、学校と家庭、地域と連携して進める④小中連携、一貫教育を積極的に進める⑤全国学力・学習状況調査等を活用した検証改善サイクルの確立に取り組む―などの課題を生み出し、現場に「さらなる授業改善」と「望ましい生活習慣の確立」に向けた取組を求めるものとなっている。
とりわけ、都市部とその他の市町村の比較において、学習塾の多い都市部に比べ、町村部の正答率が低いとし、地域格差は解消されていないとする一方で「塾がないなど、教育資源が不足している地域に子どもサポーターの派遣や子ども未来塾での学習支援を実施したりした効果もあり、都市と郡部のばらつきは縮まっている」とした。
しかしこれは、本来道教委が果たすべき超勤・多忙化対策や教育条件整備をはじめとした公教育としての責務を放棄し、一層学校現場の要求とかい離した施策を押し付けるものである。
道教委の分析では、全国平均が上位である福井県の「家庭学習」の取組や、秋田県の「授業の見通しと振り返る活動」が進んでいることを取り上げ、単に北海道より上位になっていることをもとに、北海道の課題として「家庭学習」「授業の見通しと振り返る活動」の両方の改善を求める姿勢は極めて短絡的で恣意的と言わざるを得ない。
そもそも、道教委「報告」の視点そのものが、「貧困と格差」の拡大・固定化など子どもの実態や社会状況について何ら分析しておらず、子どもの豊かな学びの保障や教育の機会均等の確保という本来の目的すら希薄になっている。
「学力調査」開始以降、道教委は、教育課程、内容、方法等に不当に介入し、全道すべての学校に画一的な「学力向上策」を強制するとともに、「報告書」等において自らの「施策」を正当化することを繰り返してきた。これは、子どもの多様性や教職員の専門性・主体性・創造性を無視して教育をマニュアル化するもので、子ども・教職員の管理統制強化を進め、これまでの北海道における地域に根差した豊かな教育を破壊するものである。子ども一人ひとりの「学び」は、ゆとりある期間の中で見守り、支えていくべきもので、「過去問題」や「放課後学習」など「点数学力」の押し付けによって培われるものではない。
今、道教委がすべきことは、すべての子どもに豊かな教育を保障するため、押し付けの「学力向上策」を止め、①経済格差がもたらした子どもの「貧困」を解消すること②子どもの多様な個性を生かした「学び合い」を可能とする少人数学級を推進すること③教職員定数を改善すること④教育課程の弾力化や学校現場の裁量権を保障し、超勤・多忙化を解消し、教職員が子どもと向き合う時間を十分に確保すること―など教育条件の整備・拡充こそが急務である。
私たちは、今後も「学力調査・結果公表」に断固反対し、子どもたちの「学び」を矮小化する「点数学力」偏重の「教育施策」の撤回を強く求めるとともに、憲法、「47教育基本法」「子どもの権利条約」の理念に基づく「豊かな教育」の実現のため、一人ひとりの子どもに寄り添う教育実践を積み重ね、教育を市民の手に取り戻すための広範な道民運動を進めていくことを表明する。
(関係団体 2017-12-04付)
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