【PickUp2017】札幌市教委 規模適正化推進へ情報発信を 進展する〝小規模校化〟への対応(市町村 2017-12-13付)
わが国の課題として少子化が叫ばれて久しいが、札幌市も例外ではない。市における年間出生数は、昭和四十九年の二万四千五百二十五人をピークに減少傾向が続き、平成十五年から二十八年までは一万四千人台が続いている。教育現場において、少子化が進むことで問題視されてきたのが「学校の小規模化」だ。
市教委はことし、「小中学校の学校規模の適正化に関する基本方針」の見直しに着手。小中学校適正配置審議会で審議を重ね、十一月に答申をまとめた。
答申では、従来、学校規模適正化に関する協議を行ってきた〝地域の検討委員会〟の負担軽減や検討期間の短縮を目的として「たたき台となる案を市が示すことが望ましい」と指摘した。
しかし、従来の検討プロセスにおいても「統合ありきで進んでいる気がする」(地域住民)との意見が寄せられている。今後、市がたたき台となる案を示す形に変わったときには〝結論ありきの検討〟にならないための配慮が必要となる。
市教委の平野誠学校施設担当部長は「案を作成する目的は検討のポイントを明確にすることで、議論の迅速化や参加者の負担軽減を図るため。地域住民・保護者・学校関係者と丁寧に話し合いながら検討を進める方向性は変わらない」と説明する。
◆学校統合上回るスピードで進行
市が検討期間短縮を目指す背景には、〝小規模校化のスピード〟がある。適正化基本方針を策定した十九年度に四十二校だった小規模校は、本年度四十四校。この間、十一校の統合が完了したが、それを上回るペースで小規模校化が進んでいる。
働き方改革が声高に叫ばれる中、小規模校の勤務状況は厳しい。市は、一定の基準に基づいて教員を配置しており、六学級(百一人以上)から十二学級までの小学校では、担任学級をもたない教員は、校長、教頭を除き一人のみとなる可能性がある。「学校運営面で厳しい。運動会などの各行事や、職員の健康診断受診時も余裕がない」(管理職)。
また、「習熟度別の指導や課題別グループ学習を進める際に、指導者の確保が困難」(審議会委員)との指摘や、子どもたちの人間関係の固定化が招く問題に関して「仮に学級崩壊状態でクラス替えができなければ、解決への道筋を描くのが非常に難しくなる」(学校関係者)との声が挙がる。
◆統合へ膨らむ不安
こうした状況にもかかわらず、統合を検討する際には「学校規模が大きくなると、子ども一人ひとりに寄り添うことが難しくなるのでは」(地域住民)といった不安の声が寄せられる。
こうした不安の背景には、学校規模を「適正化した際のメリット」「適正化しなかった際のデメリット」が十分に周知されていない現状がある。
統合したある学校におけるアンケートをみると、子どもの人間関係、学習意欲の変化に関して肯定的にとらえた保護者が八割を超えたほか、行事などについて「楽しくなった」と答えた児童は六割以上となった。この学校の統合当時の校長は「新しい学校の行事などをつくっていく過程で、引っ込み思案だった子が積極的になっていった」と話す。
◆保護者の理解促進、取組加速に不可欠
市教委は、こうした状況を含め、積極的な情報発信を行っている。検討委員会での協議内容や小規模校化における課題などを示した『検討委員会ニュース』に加え、ことし九月に『学校規模適正化だより』を発行。保護者・地域住民に向け、統合による教育的効果などの周知を図っている。
しかし、保護者からは「学校からの配布物が多く、(小規模校化の情報が)目に止まりにくい」といった問題点が指摘されているほか、「SNSを活用することで、より届きやすくなるのでは」との声が挙がる。
取組を加速化し円滑に進めていくためには、統合後の学校の様子などを幅広く発信するなど、規模適正化への理解を得るために、新たな方策が求められそうだ。
(市町村 2017-12-13付)
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