【PickUp2017】石狩管内 授業の質確保へ環境整備を プログラミング教育―石狩市の取組(市町村 2017-12-12付)
ことしも残すところあと三週間ほどとなりました。本道では、新学習指導要領への対応、教員の長時間勤務是正など、様々な動きがみられました。「PickUp2017」と題し連載で、本道教育界の一年を振り返ります。
◇ ◇ ◇
◆IT人材不足
経済産業省が発表した将来推計では、二〇二〇年に三十六万人、二〇三〇年には七十八万人のIT人材が不足すると予測されている。高度情報化社会のインフラを支える人材の不足は、わが国にとっても大きな課題となっている。
文部科学省は、こうした状況に対応するため、小学校の新学習指導要領にプログラミング教育の必修化を盛り込んだ。プログラミング教育を通して、情報活用能力を子どもに身に付けさせるため、タイピング能力と、プログラミングに必要な論理的思考力を育成する方針だ。
三十二年度に全面実施となる新学習指導要領では、外国語科、「特別の教科 道徳」の動向に注目が集まっているが、これらと同様に必修化されるプログラミング教育への準備も各学校にとって喫緊の課題となっている。
◆出前授業を契機に
そうした中、石狩市では、本年度から小学校全十三校でプログラミング教育の出前授業を実施している。授業の形態は六種類。パソコンを使用しない授業や、プログラミングを体験する授業がある。
石狩市立双葉小学校(加藤丈明校長)で十一月に行われた出前授業では、四年生の総合的な学習の時間に「身の回りにあるコンピューターを探そう」と題して外部講師が授業を行った。講師は自動車や冷蔵庫、掃除機など身近なものにコンピューターが使われていることを伝えた。「ごみ箱にも使われている」と考えていた児童に対しては「今は使われていないが、コンピューターを入れることで、様々なことができるかもしれない」と述べ、コンピューターには無限の可能性があることを理解させた。
石狩市教委は、この取組をプログラミング教育推進の入り口と位置付けている。授業を見た教員からは「機会があれば自分でもやってみたいと感じた」などの感想が寄せられており、授業づくりの一つのきっかけとなっている。
この取組は、市内にデータセンターをもつさくらインターネット㈱が市教委と協力し実現したもの。企業の社会的責任活動(CSR)の一環として実施した同社の存在があって初めて可能になったもので、すべての地域でこうした取組ができるわけではない。
◆限られた研修機会
現段階で、道立教育研究所はプログラミング教育関係の研修を年度内は予定しておらず、市町村教委では「プログラミング教育の研修は教員の自主性に任せる」とするところが少なくない。プログラミング教育を専門に扱う研究団体が道内にはなく、道外のNPO法人の力を借りながら、徐々に研修会が行われている段階にあり、教員の研修の機会は限られている。
「プログラミング教育に苦手意識をもっていて、授業づくりに及び腰な教諭もゼロではない」(教育関係者)との声があるように、コンピューターに詳しくない教員にとって、何をどのように教えるか定まっていない状況は、全面実施に向けた大きな課題となっている。
一方、文科省は、年度内にプログラミング教育推進に関する具体的な方策を示す考え。「全体として目指すべき目的を示すことは絶対に必要」(教育関係者)との声に応えられるものになることが期待される。
プログラミング教育は、その指導方法を模索している最中だが、全面実施まではあと二年ほどしか残されていない。
学校現場からは「自主性に任せると授業の質にばらつきが出てしまう。公教育として質の低い授業は行うわけにはいかない」との声も聞こえてくる。
こうした教員の熱意をあと押しできるよう、研修の実施や実践事例の普及啓発など、授業の質を確保するための環境整備が求められている。
(市町村 2017-12-12付)
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