札幌市子ども議会本会議 よりよいまちへ提案発表(市町村 2018-01-12付)
札幌市子ども議会本会議が二十九年十二月下旬、市議会議場で開かれた。小学五年~高校三年生の三十九人が子ども議員として出席。「身の回りの防災」「省エネルギー」などをテーマに議論を重ねてきた四つの委員会が、自分たちができることを盛り込んだ提案を発表。また、秋元克広市長や岸光右副市長らと意見交換も行い、よりよいまちづくりに向けて市政への理解を深めた。
未来を担う子どもたちに札幌のまちづくりについて考えてもらうことで、市政への理解・関心を促進するとともに、「子どもの最善の利益を実現するための権利条例」の意見表明権を体現してもらうことが目的。十三年度から実施している。
十七回目となる今回は、子ども議員が、①It‘s more with B委員会②モシモ防災、内から見るか?外から見るか?委員会③SEG WAY委員会④エネルギー、直視は辛いが役に立つ委員会―に分かれ、約三ヵ月間で五回にわたって話し合いや市職員との勉強会を行い、提案をまとめた。
本会議の冒頭、札幌市議会の山田一仁議長があいさつ。「いろいろと勉強してきたことを大いに議論してほしい」と話したほか「いつか皆さんが札幌のために頑張ってくれることを心から願っている」と呼びかけた。
続いて、子ども副議長を務めた蝦名陸君が子ども議会の概要を説明したあと、各委員会がポスターを提示しながら提案した。
◆防災教育などテーマに提案
防災について普段から備えておく方法を話し合った①の委員会は、災害時の混乱を抑えるため、日ごろから家族で「決めておくこと」「考えておくこと」について話し合うことを提案。「決めておくこと」では集合場所、「考えておくこと」では家に自分一人のときの行動など様々な場面を想定して話し合う必要性を強調した。
また、市内の小・中・高校で、防災について家族での話し合いを宿題にするなどの「防災教育改革」を行うことを提案。防災意識の定着などを図ることで、子どもから家族など多くの人々に防災意識が伝わっていくという考えを説明した。
秋元市長は、防災教育に関して「全国的にも学校の中で先進的な取組を行っているところがたくさんある。札幌市も学んで、子どもたちの発想の中から、家族、そして多くの人の防災意識を広めていければ」と答弁した。
災害発生時の行動などについて考えた②の委員会は、災害への危機感や、防災意識を高めるため、映画館で災害の悲惨さを訴える防災CMを流すことを提案。映画の上映前に流すことで、テレビのようにチャンネルを変更できないことなどから、多くの人の印象に残るという考えを説明した。
また、「避難所で自分たちにできること」として、小学生は掃除、中学生は学校案内、高校生は体の不自由な人や困っている人に声かけをするといった役割を担うことを提案した。
秋元市長は「テレビと違って映画館だと集中して見ているので、非常に効果があるのではないか。映画館でいろいろなCMをやっているので、防災ということも含めて検討したい」と答えた。避難所で困っている人への声がけが提案されたことについて「非常に重要」と評価した上で「災害の時ばかりではなく、普段から困っている人がいれば、自分たちに何ができるか考えて行動して」と呼びかけた。
省エネルギーや再生可能エネルギーの普及をテーマとした③の委員会は、毎月第二水曜日に、都市生活から離れゆったりとした時間を過ごすことを目的とした「スローファースト」を展開することを提案。午後五時に退社・下校し、家族団らんを推奨することでエネルギー消費量の削減につなげていくことや、午後九時に市全体を十五分間消灯することで、星空を眺めることができる大都市を目指すことなどを説明した。また、四月二十二日のアースデイを含んだ一週間を「エコ・ファースト強化週間」と設定し、五感に訴える環境へのPR活動を大通公園で実施することを提案した。
秋元市長は「二百万人が住んでいるまちで星がきれいに見えるのは素晴らしいこと。そういう運動を皆さんと一緒に広げていきたい」と答弁した。
地球の環境とエネルギーに関して話し合った④の委員会は、エネルギーの枯渇や地球温暖化防止に向け、子どもができる取組を始めることを提案。果物・野菜を雪の中に埋めて保存することや、植物を家で育てることなどを挙げた。
また、この取組を進めるために、市と子どもが協力する重要性を強調。次世代自動車の増加に向け小・中学校の授業に電気自動車の充電ステーションマップ作成を盛り込むことや、再生可能エネルギー拡大などに関する子ども向け啓発漫画の作成、市民に植物の種を配布することを提案した。
秋元市長は、省エネルギーに関する啓発漫画の作成などについて「それぞれの年代で興味をもつものが違うので、世代に合わせた、すっと入ってくるような広報の仕方を心がけていきたい」と答弁した。
◆市職員と意見交換
続いて意見交換を行った。はじめに、①の委員会が「大災害が起こったとき、どのような対策を考えているか」と質問。中塚宏隆危機管理対策室長は、災害対策本部を立ち上げ、国や道、企業と連携しながら情報提供、避難所の開設など様々な対応を行っていく考えを説明した。被害を最小限に抑えるため「まずは自分の身を守るという、命を守るための行動を身に付けてほしい」と話した。
②の委員会は「危機管理対策室の職員は災害が起きていないとき、どんな仕事をしているのか」と問いかけた。中塚危機管理対策室長は、避難所の確保・管理・整備のほか、道や市の関係部局、民間企業と災害時の協力方法のルールづくりなどを行っていることなどを説明した。
③の委員会は「〝さっぽろキャンドルナイト〟のねらいと手応え」「再生可能エネルギーの普及に向け市が行っている取組」について質問。三井一敏環境局長は、さっぽろキャンドルナイトについて「環境や平和、世界の人々のことを考え思いやる、静かで豊かな時間をもってもらうことを目的に実施している」と話し、市民への認知度も高まっていることを紹介。また、再生可能エネルギーの普及に向けて学校施設への導入や、PR活動、補助金といった設備導入支援の取組を積極的に進めていく方針を示した。
④の委員会は「職員が個人的に省エネのためにしていることは何か」と質問。三井環境局長は、自身が心がけていることとして「スイッチをこまめに切ること」などを挙げたほか、家をリフォームした際に省エネ型の設備や家電へ変更したことを説明した。
市からの質問では、秋元市長が防災や省エネルギーに関して、冬休みに行う取組について質問。子ども議員は「家族や友達と(防災について)話し合って、学校にいるときだけではなく、遊びに行っているときなどにどのように行動するべきかを考えていきたい」、省エネルギーについて考えた子ども議員は「出しっぱなしをしないよう水道を止めたり、節電したりしたい」と答えた。
岸光右副市長は、③の委員会のスローファーストの取組を実際に行うと想定したとき、テレビなどから離れる必要性を指摘。「友達が〝嫌だ〟と言ったとき、どのように説得するのか」と質問。子ども議員は「星が明るければ本が読めると思う。本を読んで、ココアとかを飲んでゆっくりとした時間を過ごすのもいいのではないかと説得する」と答えた。
このあと、子ども議員の猿倉花凛さんが各委員会の提案をまとめた提案書を秋元市長に手交。秋元市長は「自分たちができることから〝輪〟を広げていこうという大切な提案をしてもらった。皆さんの提言をしっかりと市役所のいろいろな仕事の中に取り入れていきたい」と感想を述べた。
子ども議長を務めた佐々木花鈴さんは「今回経験してきたことは、今後の生活の中で必ず役立つと思う。子ども議員が札幌市のまちづくりについて考える機会になればうれしい」と感想を述べた。
本会議に出席した長岡豊彦教育長は「子どもたちが課題を見つけ、一人ではなくチームでいろいろなディスカッションをして、考えをまとめ、表明したのはすごく価値のあること。こういう活動を子どもたちにずっとやっていってもらいたい」と話していた。
(市町村 2018-01-12付)
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