【伝えたい!授業づくりの基礎・基本】No.62生活科編②北海道生活科研究会(山本豊会長)「生活科でひびき合う活動 教師の手だて」
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-03-19付)

伝えたい生活科学校探検
学校探検

◆地域教材を模索する努力を惜しまずに

◎実践から具体的な手だてを

 人と人とがひびき合うためには教師の手立てが欠かせない条件となる。次の2実践から、具体的な手立てを示したい。

ポイント1 人と人とがひびき合う活動をいかにして生むか

 2年生の学校探検の実践。

①導入で大切にした既習経験

 本単元は、学校探検を通して2年生が自分や友達の成長に気付くことを目指す。導入では敢えて探検のことは伏せて、自分たちの1年前の様子をじっくりと振り返らせた。泣いてばかりいた自分、廊下を走っていた自分など、照れながらも友達と交流することで、「1年生の時って分からないことだらけだったよね」というイメージを学級全体で共有した。そのタイミングで子どもたちに「実は、1年生に学校を案内してほしいのだけど…」と提案したところ、「~してあげたい」という言葉が積極的に飛び交った。

 学校探検という活動を提示する前に、1年生の気持ちを思い出す時間をしっかりと取ったことは、「~たい」を子どもから引き出す効果的な手立てであった。

②話し合いを深めるクイズ

 学校探検の計画では、1年生に教えてあげたいことはたくさん出たのだが、より相手を意識した探検にするため『こんな時はどうする?クイズ』を最後に行った。担任が1年生になりきって(意図的に困った場面)を演じ、その対応策を班で話し合って実演するというものである。この話し合いにより、1年生に「何をするか」だけでなく、「笑顔が大切」など接し方にも目を向けることができた。探検当日はどの子も1年生に寄り添った関わりをし、また、話し合いで2年生同士の関係が深まったことで、自然と助け合う姿が多く見られた。

 人と学び、人から学ぶ生活科を目指すには、一つ一つの活動に〝明確な意図〟をもって、教師が〝適切なタイミング〟で投げかけることが必要であると、本実践を振り返って強く感じた。

(北海道生活科研究会 研究部 札幌市立栄町小学校 教諭 真山希弥)

◎実践2「新琴似ってどんなところ?」~ひびき合う活動に主眼を置く

 本研究会が視点として設定する「ひびき合う活動」。2年生「まちたんけん」から考えていきたい。本単元で大切にしてきたことは、子どもたちが常に「新琴似って、どんなところ?」という課題に立ち戻って考えることである。

ポイント2 「感動体験」につながる体験学習の設定

 単元の最初、自分たちの頭の中だけにある新琴似の街を確かめるために、町探検に出かけ、地図に気付きを書き込んでいく活動を行う。「このお店は、違う道のところにあったね!」「いつも行くコンビニの場所は当たっていたよ!」「なんだか見たことのないお店もあったよ!」などと子どもたちの興味は、自分の中ではっきりしたこととまだはっきりしないことに分かれていく。はっきりしないことは、もう一度調べたいなという思いになり、次のお店訪問への興味を引き出すことにつながっていく。行きたいお店が決まったら訪問になるが、ただ単にそれだけでは子どもたちの『感動体験』にはなりにくいと考えた。そこでお店との交渉を重ね、「体験的な活動」というテーマでそれぞれのお店に考えていただき、子どもたちが意欲的に活動する探検をする用意ができていた。

ポイント3 「感動体験」を自分事として伝え合う場の設定

 探検後の最も大きな活動は、訪問後の伝え合い活動である。ここに「ひびき合う活動」の主眼を置いた。この中で大切にしたのは、「いかに自分たちが体験したことの素晴らしさをミニ名人になって伝えられるか」ということである。ミニ名人という言葉を子どもたちに浸透するように関わることで、自分たちが学んできたことをあたかも自分が名人かのように周りの子どもたちに「こだわり」をもって教えることができると考えたからである。

 授業を展開していくと、子どもたちは「餃子作りを伝えるときは、何を使って説明する?」「言葉だけなら分からないよね!」「バレエの動きをやってみてもらうのどう?」などと自分たちが感動体験してきたことを伝え合いの中で実体験させようという結論になっていった。授業公開では、互いにミニ名人になって伝え合った。想定していたよりもお店、名人に対する子どもたちの「こだわり」が強く、伝えたい事が多すぎるほどであった。ガラス店の体験を紹介した子は、放課後に自分でガラス店に出向き、ガラスを切ることを紹介したいということをお店の名人に伝え、教えてもらったり、もう一度体験させてもらったりと大変意欲的であった。

ポイント4 教材開発に対する教師のスタンス

 子どもたちの活動が「ひびき合う」ためには、いかに子どもたち自身にとって自分事に、そして伝えたいという欲求を掻き立てられるかにかかっていると考える。そのために教師は、地域教材を知り、どう教材化を図ることができるのか、どんな教材になりうるのかの可能性を模索する努力を惜しまずにしなければいけないと考える。

◎細やかな関わりが力になる

 どちらの実践でも、教師の細やかな関わりが学習を進めていくためには大きな力になることが分かる。

 新学習指導要領でも、対話的、協働的で深い学びを具現化することが求められている。このように、話し合いの手立てを工夫することで、子どもたちの学びを深めていくことができる。

(北海道生活科研究会 研究部 副部長 札幌市立新琴似北小学校 教諭 小西正一郎)

(連載終わり)

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伝えたい生活科餃子作り
餃子作り

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