【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】No.4国語科・中学校編④北海道国語教育連盟(若松広美委員長)小中の連続に着目した国語科指導(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-08-29付)
主体的・対話的な学びから深い学びにつながることを意図した授業場面
◆小学校から学びのバトンを受け継ぐ
ポイント1 国語科において身に付けるべき資質・能力
平成33年度から全面実施される「中学校学習指導要領」における国語科の目標は、次のとおりである。まず、「言葉による見方・考え方」を働かせること、「言語活動」を通すことが前提となっていることに着目すると、「何を学ぶか」だけでなく「どのように学ぶか」が重視されていることが分かる。
さらに、「資質・能力を育成する」という文言からは「何を身に付けるか」という視点の重要性も見えてくる。
加えて、「言葉の力」について学んだり身に付けたりする学習過程についても言及し、「主体的・対話的な深い学び」の実現が求められていることは承知のとおりである。
しかし、このような資質・能力の育成や学びの実現は、いずれも中学校の3ヵ年のみで実現できることではない。それは、義務教育9ヵ年の連続的な学びや資質・能力が系統的に培われていくことによって図られ、「生涯にわたる学習」においても絶えず実現されていくものとも言われている。
これらのことから中学校における国語科教育は、これまで以上に小学校国語科教育における「学びのバトン」をしっかりと受け継いでいく必要がある。
ポイント2 小・中の連続性を授業に活かす
(1)意図的・計画的な授業
連続性を活かすことの一つは、「生徒の学びの実態を適切に把握すること」、「授業における適切な目標を設定すること」ではないだろうか。国語科の学びの特徴の一つに、「螺旋的(スパイラル)な学びの連続性」が挙げられる。「話す・聞く」「書く」「読む」といった各領域における学びは、まさに螺旋的に高まっていくものであろう。
しかしながら、繰り返しのようにも見えるこの連続性にすべてを委ね、授業において目標設定を曖昧にしてしまうことは避けなければならない。
授業はあくまでも意図的・計画的な営みである。授業において生徒が身に付けるべき資質・能力を確実に育成するためには、生徒の既存の資質・能力を明らかにした上で、明確な目標設定を行うことは不可欠である。そこが不明確であれば、学びは螺旋的ではなく、単なる繰り返しに止まってしまうだろう。
(2)既習事項や学びの実態を把握する
「小学校における既習事項を確実に把握しておく」ことも、小・中の連続性において欠かすことができない。例えば、小学校3・4学年で「指示語・接続語の役割」について理解し、使う事項は、中学校第1学年の「指示する語句と接続する語句の役割」において、さらに深く学ぶことになる。つまり、小学校で養うとしている言語能力を、中学校では磨き、高めていく。このことを把握し、適切に既存の学びと接続していく教師の役割は重要である。
また、よく中1ギャップといわれるものの段階差の一つに、「学級担任制」から「教科担任制」になることが挙げられる。しかし、そのシステムの違いのみがギャップを生み出す訳ではない。学ぶスピードの変化や、学び方の変化などが相俟って、大きな壁をつくってしまうのではないだろうか。
小学校における学びの実態を把握することは、その壁を軽減することにもつながるはずである。
ポイント3 社会生活とのつながり
社会生活において、明確な答えのある課題はそう多くないだろう。むしろ多くの課題に対して、よりよい解を目指して各自が試行錯誤しているという現状ではないだろうか。そうした中、その解は他者との対話によって、より最適解に近づいていくと言われている。
こうした意味において、中学校における国語科教育では、生徒が「社会生活とのつながり」を意識して「言葉の力」を磨き、高めていくことや、言葉や他者との対話を通して深く学び、最適解を模索していく授業が期待される。その期待に応えることこそ、「言葉の担い手として生涯にわたって学び続ける社会の一員」を育てることにつながる。
(北海道国語教育連盟 釧路地区 釧路市立共栄中学校 教頭 太田諭)
※次回は北海道算数数学教育会(小)「交流が活性化するポイント」を掲載します。
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-08-29付)
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