【伝えたい!授業づくりの基礎・基本】No.61生活科小学校編①北海道生活科研究会(山本豊会長)「3つの視点を基にした生活科の授業構築」(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-03-16付)
◆話を聞き、発見を価値付け、次への意欲を
◎3つの視点
これまで、本研究会は視点1「ときめく出合い」、視点2「ひびき合う心」、視点3「かがやく瞳」の3つの視点を設定して研究を進めてきた。今回は、これらの視点を具体化した3つの授業から、どのような手立てで授業構築していくとよいのかを考えたい。
ポイント1 人との関わりについて
本会で創立時より大切にしている「自立への基礎を養う」という生活科の原点を大切にした実践の一例として、特別支援学級で毎年夏休みの終業式に行っていた「夏祭り」の実践を基に述べたい。
子どもたちの1学期間の様子を見て、さらに2学期以降によりよい雰囲気に高め、今後の成長につなげていきたいと思い、行った実践である。
本実践のねらいは、次の4点である。①お互いのがんばりや成長を認め合い、学級の団結を強める②自分に与えられた役割に対し責任をもってやり遂げ、達成感を得る③食事の場において、普段接する機会の少ない先生方との意欲的な関わりを通してコミュニケーション活動を促し、楽しさを味わう④親子で調理計画、調理を行うことで、親子の絆を深める。
これらをふまえて、実践することで次のような子どもたちの姿を見取ることができた。
○人との関わりの中で、わくわく感をもつ子どもたち
自分以外の人に意識を向けることが十分ではなかった子どもたち。先生方を「おもてなし」するということに意欲をもち、夏祭り成功のため、友達と協力して準備を進める姿が見られた。子どもにとって、人と関わるということは、計画の段階からわくわくするものであり、そのわくわく感が大きな原動力となることを実感した。
○人との関わりの中で、自信を手に入れる子どもたち
先生やお母さん方の「楽しかったよ」「頑張ってね」の言葉がけで、自信をつけた。その後、普段の生活にも変化が見られ、自分から人にあいさつをしたり初めて会う人に対しても抵抗感なく話し掛け距離を縮めたりできるようになった。
○人との関わりの中で、友達のよさを見つける子どもたち
人と関わるというのは、緊張するものである。その中で、友達の積極的な一面を見ると、「なかなかやるな」と友達のことを見直すきっかけになる。それが学級のよりよい雰囲気に変えていった
(北海道生活科研究会 研究部 札幌市立札苗緑小学校 教諭 千葉伊織)
ポイント2 教材化のためのアプローチ
①明確な目標設定
生活科の教材化について考えるには、まず目標をしっかりと設定する必要がある。つまり、子どもがどんな力を付けるのか、何を学ぶのかを明確にするということである。それがはっきりしたうえで、次に、どのように学ぶのかを考える。生活科で大事なのは、簡単に言えば「具体的な活動や体験を通して、自立への基礎を養う」ことである。子どもの生活圏の中で、身近な人々や自然に直接かかわること、つまり、見る、聞く、触れる、作る、探す、遊ぶなどの活動を通して、子ども自らが思いや願いを生かして主体的に活動する学習展開を考えていかなければならない。
②主体的に活動したくなる学習展開
例えば、校庭の木や植物に四季を通してかかわっていく。秋になると、春には見られなかった赤や黄の葉が、じゅうたんのように地面に落ちている。子どもは、この色とりどりの葉がどこから来たのだろうと考えたり、葉で遊び始めたりする。子どもの「やってみたい」という思いを大切にした学習展開を考えることが、主体的な活動につながっていく。
③気付きの自覚化をうながす関わり
また、対象とかかわる中で、子どもの気付きを引き出すことも大切である。子どもは、心の中に様々な思いや願いをもってはいるものの、それを表出することができないことがある。言語化させたり、振り返ったり、交流させたりする場を設け、それらの意味や価値を子どもが自覚できるようにしていくことが重要である。
(北海道生活科研究会 研究部 副部長 札幌市立幌西小学校 教諭 月田清乃)
ポイント3「ときめく出合い」をどのように生み出し、「かがやく瞳」をどのようにとらえるか
2年生の「町探検」を例に考えてみたい。
①「ときめく出合い」の生みだし方
教師がある食品工場を見学し、「ときめき」を感じたら、その工場が子どもたちにとっても、「ときめく場所」になるように、しかけを作る。その工場からの香りが外に流れてくる時間帯に、その工場の横を子どもたちと一緒に歩くのである。「いいにおいがする」「何のにおいだろうね」教師としては意図的に、しかし、子どもたちにとっては自然な形で学びに入っていける。これがときめく出合いの始まりである。
②「かがやく瞳」のとらえ方
子どもたちが見た物や感じたことなどを教師はどう見取り支援していくか。そのことが、子どもたちの意欲の継続を大きく左右する。書くことが得意な子は、自分の考えを素直に文字で表現できる。教師もそれを読み、見取ることができる。しかし、書くことが苦手な子もいる。「工場に先のとがった機械があったよ。」というようなつぶやきを「よくそこまで詳しく見ていたね。」と教師が価値付けたり、「なんであんな形をしているんだろうね?」と投げかけたりすることで、自分の内面の気付きに目を向け、次への疑問が生まれることもある。
また、言葉以外の表現(行動や作った物など)の中にも、その子なりのこだわりや発見が隠されていることがある。「ここはどうして丸く作ったの?」「だって・・」説明を始めた子どもの話をじっくり聞く時間は、その子の発見を価値付け、次への活動の意欲を高めていくチャンスとなるのである。
(北海道生活科研究会 事務局次長 札幌市立新琴似緑小学校 教諭 細田依公子)
※次回は、北海道生活科研究会「生活科編②」を掲載します。
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-03-16付)
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