【伝えたい!授業づくりの基礎・基本】No.60理科小学校編④北海道小学校理科研究会(永田明宏会長)「授業や単元構成における見方・考え方の位置付け」
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-03-15付)

伝えたい北理研地層観察
理科の見方・考え方を子どもが働かせようとすることが大切

◆子どもの学びを教師が見取り、価値付ける

◎主体的に問題解決しようとする態度

 新学習指導要領では、「一連の問題解決の活動を、児童自らが行おうとすることによって表出された姿」としている。このような態度を「観察、実験を柱とした授業」で育むが、子どもの問題解決は、45分授業に収まらない場合も少なくない。また、生命や地球についての内容では、単元全体で問題解決を大きく捉える場合も考えられる。授業構築や、単元構成の考え方などにふれ、新学習指導要領に示された「理科の見方・考え方を働かせながら主体的に問題を解決しようとする態度の育成」を基に、授業や単元構成をどう位置付けるのかについて考える。

ポイント1 単元構成の位置付けから授業構築する

 授業を、知識・理解、技能の習得に終始すると、問題解決の力や、主体的に問題を解決しようとする態度を養うことが希薄になることがある。授業構築で重視する点は、子どもが主体的に問題を解決する過程を通して、それらを養うことである。

 第4学年「電流の働き」。教師が乾電池の向きによってモーターが回る方向が変わることを、「次は乾電池の向きを変えて回してみましょう」「乾電池の向きを変えると、モーターの回り方はどうなりましたか」などと、指示するのではなく、子どもが「モーターの回り方の違い」を見付けることから問題を見出し解決していく過程を通して、理解を図るようにする。つまり、45分間で問題を見出し、解決まで至るということではなく、〝単元を通して問題やその解決の方法等を見出す〟ようにする。その上で、この授業が、単元構成のどこに位置付くのかをはっきりさせて授業を構築しなければならない。

ポイント2 理科の見方・考え方を働かせる

 現行学習指導要領では、「科学的な見方や考え方」の育成を重要な目標として位置付け、資質・能力を包括するものとして示されている。一方、新学習指導要領では、問題解決の過程を通して「理科の見方・考え方を働かせる」ことで、豊かで確かなものになると示されている。現行の科学的な見方や考え方が「育成されるもの」に対し、次期の理科の見方・考え方が「働かせるもの」となったことにより、授業や単元構成にどう位置付けるのか考えてみる。

 第6学年「土地のつくりと変化」における「科学的な見方や考え方」は、「土地のつくりと変化についての考えをもつ」ために、観察、実験を通して実証性、再現性、客観性を図りつつ、土地のつくりと変化を推論する能力を育てることである。

 一方、「理科の見方・考え方」は、「土地のつくりと変化についての知識や技能等を身に付けることができるようにする」ために、観察、実験を通して、主に時間的・空間的な視点と、多面的に考える力を働かせることである。

 大きな違いは無いようだが、「理科の見方・考え方を働かせる」という側からみると、どの場面で、時間的・空間的な視点を生かすか、また、どの場面で多面的に考えを紡ぐのかを想定して単元構成が図られることになる。さらに授業では、それらを具体的に想定していくことになる。

 以上のことから「理科の見方・考え方を働かせる」には、「長い年月をかけて少しずつ土や砂などが流されてきたはず」と時間的な視点や「実験でできたような層が川や湖、海などの底にどこまでも広がっているのでは」と空間的な視点が問題解決の鍵となるよう、「見方・考え方を働かせる場面」を設ける必要がある。重視すべきは、主体的に問題を解決しようとする態度である。「長い年月とはどういうことか」「広がっているという証拠は見付けられるのか」などと子どもが視点をより働かせるよう教師が意図して関わることで、土地のつくりと変化を時間的・空間的な視点をもって観察、実験を繰り返すようになる。つまり、子どもは初めから視点をもって土地のつくりやその変化を注視しているのではなく、観察、実験を通して、徐々に時間的・空間的な視点が養われていく。それを、教師が育てるのである。

 また、土や砂、礫が折り重なる堆積岩とは異なる火成岩で構成された層を見出した子どもは、「川の流れでできたとは説明できない」「火山の噴火が関係しているはず」と、土地のつくりや変化を多面的に考えるきっかけを掴むはずである。

 このように、理科の見方・考え方は、主体的に問題解決しようとする態度を原動力に子どもが働かせるよう、授業や単元構成に位置付けなければならないのである。

ポイント3 見方・考え方を働かせたくなる子を育てる

 授業で養われた理科の見方・考え方は、その単元にとどまらず、他の領域、学年においても働かせるものである。詰め込まれた知識が、時間経過により剥離するのと同様、子どもにとって与えられた視点では、その単元でしか働かせようとしない場合が多い。

 主体的・対話的で深い学びの実現には、「子どもが理科の見方・考え方を働かせたくなる教材化を図らければならない」し、子ども一人一人の学びを教師がしっかりと見取り、価値付けることが大切である。

 理科の見方・考え方を子どもにとって価値あるものに押し上げるよう、子どもの主体的に問題を解決する態度をつぶさに見付け、大いに賞賛したいものである。

(北海道小学校理科研究会 本部研究次長 札幌市立北野小学校 教諭 新澤一修)

※次回は、北海道生活科研究会「生活科 小学校編①」を掲載します。

(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-03-15付)

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