【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】No.2国語科・中学校編②北海道国語教育連盟(若松広美委員長)古典指導の基礎・基本(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-08-22付)
文意が伝わるよう工夫しペアで音読を行う生徒たち
◆言語文化の担い手を育成する
▼ポイント1 古典指導で育成する資質や態度
現行学習指導要領の「伝統的な言語文化に関する事項」である古典指導は、新学習指導要領において、[知識・技能]の内容における「我が国の言語文化に関する事項」の一つとして位置付けられる。この事項には、内容として他に「言葉の由来や変化」「書写」「読書」に関する指導も含まれている。このことは、我が国で継承されてきた文化的に価値をもつ言語、これまで形成されてきた文化的な言語生活、さらには時代を通して表現し受容されてきた多様な言語芸術や芸能を含めた「我が国の言語文化」を享受し、継承・発展させる資質や態度の育成を意図している。
したがって、古典を指導する際、教師は「言語文化の担い手」を育成する視点に立ち、次の点に留意しておきたい。
〇昔の人々と現代の私たちとの共通点や相違点を知ること
〇古典を遠い存在として考えず、身近に感じること
〇古語を学ぶことによって、自分の言葉のルーツを考える機会にすること
具体的には、小学校の学習を踏まえ、中学校においても「古典に親しむ」ことを重視した「古典の表現を味わったり、自らの表現に生かしたりする学習」を展開していくようにする。
【古典に親しむことを重視した学習】
① 音読や朗読をするなどして、我が国の伝統的な言語文化の世界に親しむこと
② 長く親しまれている言葉や古典の一節を引用するなどして、語彙を増やすこと
③ 作品を読み、交流を通して古典に表れたものの見方や考え方を知ること
▼ポイント2 古典指導の実際
(1)音読や朗読の工夫
古典特有のリズムを味わうためには、音読は欠かすことができない言語活動である。音読を行うことによって歴史的仮名遣いが読めるようになるだけではなく、強弱や間などを考えて読むことで文章として意味が伝わり、内容を理解する一歩となる。
音読は繰り返して声に出すことが大切であるが、ただ繰り返すだけでは生徒も意欲的に活動することができない。そこで、古典に関わらず、どの単元でも音読を取り入れて学習活動として習慣付けることや、音読を行う形態(個人・ペア・列・グループ・全体など)を工夫することが必要である。
また、古典独特のリズムで音読をするだけではなく、古典作品にも登場人物がいて、それぞれの思いが表現された文学作品であることを理解させ、作品の内容を踏まえた朗読を目指したい。そのためには、現代語で書かれた文学作品においても、どのように読んだら内容がより伝わるかを考えて朗読する学習を取り入れていく必要があるだろう。
(2)語彙を増やす
古典の中に出てくる古語は、私たちの言葉のルーツである。生徒の語彙量を増やすためにも、毎日の授業の中で帯として古語などの言葉にふれる機会を取り入れたい。例として、二十四節気や七十二候、日本古来の色の名前などを毎時間一つずつ紹介したり掲示したりするなどをして、常に生徒の目にふれるようにすることが考えられる。
(3)ものの見方や考え方を知る
古典において「古人のものの見方や考え方」を知ることは、古典に親しむために必要なことである。
そのためには、生徒が互いの「ものの見方や考え方」を交流する活動を計画的に取り入れるようにする。交流活動を重ねていく中で、自分と異なる見方や考え方への感じ方を養い、それが古典の学習で昔の人のものの見方や考え方を知り、共通点や相違点を感じる力へつながる。
指導する際には交流のポイントを明確に示したり,自らの意見を書くワークシートを活用したり、交流に色ペンやシールを用いて視覚化したりして、交流が効果的に行われるように工夫する。これらの指導を継続していくことが、古典に親しむ素地をつくると考える。
古典を「古くて自分たちから遠いもの」ではなく、「現代まで伝えられてきた私たちの文化」として生徒一人一人が感じられる古典の授業を目指していきたい。
(北海道国語教育連盟 函館地区 函館市立本通中学校 教諭 櫛田朝子)
※次回は「情報の取り扱い方に関する授業の基礎・基本」を掲載します。
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-08-22付)
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