【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】NO.8社会科小学校編①北海道社会科教育連盟(新保元康委員長)教材研究のポイント(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-09-12付)
春先のまちたんけんで地域の方とふれあう3年生。秋の農家の仕事を学ぶ単元の伏線に
◆現地で生の声を聞く深い教材研究を
【学習指導要領と教科書が鍵】
『社会科は人間の営みの中に隠れている知恵や工夫、苦労を学ぶ教科である』。先輩からの教えだ。授業で取り上げた人物に対して、子どもたちが共感的に学んでくれた時はとりわけ嬉しい。しかしながら、社会科は「教材研究に時間がかかる」「地域の事例をどう組み入れたらよいのか」等、悩みが多く聞かれる教科でもある。
そこでポイントとなるのが、学習指導要領と教科書である。学習指導要領の要点をつかむこと、教科書の構成を知り、見方を鍛えていくことで、核心を外さず、しかも効率よく教材研究することができる。
ポイント1 学習指導要領との関連とは
授業を構想する時は学習指導要領を手元に置く。第1の目標、第2の各学年の目標と内容に目を通す。教材研究を進めていくと、発見した素材のよさに目を奪われ、何でも取り入れたくなるが、学習指導要領は教材研究を軌道修正し、目標にベクトルを合わせてくれる。
特に、新学習指導要領では「見方・考え方を働かせ」ることが、目標にはっきりと示された。さらに解説では、見方・考え方は「時間・空間・相互関係」といった視点、「比較・関連・分類・整理・総合」といった方法として整理されている。見方・考え方を働かせる学習は、目的ではなく手段であり、このような学習過程を通して目標にある三つの資質・能力を養っていくことになる。
ポイント2 教材研究の際に教科書はどう使うか
実際の授業づくりで一番役立つのが教科書である。
まずは単元構成をとらえる。指導書の「教材構造図」等が分かりやすい。配当時数、各時間の目標や学習内容、学習用語が明確になってくる。教科書は順にページをめくってみる。すると、問題解決的な学習の過程を捉えることができる。単元を通した学習問題は中でも重要だ。子どもたちが自分なりに予想をしたり、見通しを持って学んでいったりする起点になる。
また、教科書の写真や資料にも必ず目を通しておく。この段階で地域の資料に置き換えられる内容があるか確認しておくと、ぐっと教材研究は進んでくる。
次に、一単位時間の教材研究を進めていく。教科書を見て、目標、課題、まとめ、学習活動の大枠を決める。課題は教科書に「?」などの形で示していることが多いので、それを参考にする。活動のヒントは教科書に載っている資料の大きさや数だ。紙面を大きく使っている資料は中心資料ととらえる。写真や図表が複数並べられている時は、これらの資料の情報を結びつけながら課題を解決していく展開が多い。これだけで、おおよその流れができている。単元構成の際に見立てておいた地域素材は目標に照らし合わせて教材化し、効果的に取り入れたい。これらの作業を、学習指導要領と読み比べながら行っていく。「見方・考え方」を働かせる学習は、あくまで子どもが思わず考えたくなるような教師の関わりが必要だ。学習展開や発問を工夫したい。
日々の授業ではこれらの作業を、板書を中心とした略案にしておくと使い勝手がよく、効率的である。蓄積していけば、個人としても、学校としても今後に生きる素晴らしい教材研究となるはずだ。
ポイント3 何を大切に教材研究するとよいのか
教材研究で大切なのは、表面的な社会事象ではなく、そこに息づく人の営みや思いを教師にとっても子どもにとっても見えるようにし、日頃から教材となり得る素材を探す目を養うことである。
地域を歩き、会話をする。例えば、「光センサーを導入した新しい集出荷貯蔵施設ができた」と聞けば、「農家の仕事や農協の働きに関わるな」と考え、「大雨でハウスが浸水し、ポンプでくみ上げた」と聞けば、「自然災害に関わるな」と考える。懇談会、PTA関連の会議、登下校指導等で保護者や地域の方と関わる場面でも、ちょっとした会話の中に教材発掘のヒントがある。
社会科の目標達成には、学習指導要領と教科書による教材研究に加え、地域社会の協力が欠かせない。保護者や地域と思いを共有し、よりよい教材研究を進めたい。
ポイント4 取材する時の注意点とは
できれば事前に資料を取り寄せたり、本やインターネット等を活用したりして、予備知識を持っておくと良い。転勤して間もない時期、初めて中学年を持つ時などは、副読本が役に立つ。その他、自治体の統計資料、地域の観光マップ、市町村史、学校沿革史等に目を通しておくのも有効だ。
取材先には社会科の学習であること、単元の目標、教師の願いなどを伝えておく。そして、ねらいに沿った取材になるよう焦点を定めておき、授業のどの場面で活用するかイメージしておくことが肝心だ。
実際に取材すると、必ず人の思いや願いに触れることになる。ここで聞いた話が授業者からすると予想外の発見になることも多く、授業場面での「問い」になる可能性がある。現地に赴き、生の声を聞くことで教材研究は確実に深まっていく。ぜひ大切にしたい。
(北海道社会科教育連盟後志地区 仁木町立仁木小学校 教諭 新栄 裕)
※次回は、(小)「課題探究的な学習のポイント」を掲載します。
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-09-12付)
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