【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】NO.12数学科中学校編①北海道算数数学教育会中学校部会(中山勝喜部会長)問題と問題提示のポイント
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-09-26付)

伝えたい!北数教①
生徒の資質・能力を育むために「主体的・対話的で深い学び」の授業を目指す

◆小学校の学習内容を意識した授業構成を

 旭川市教育研究会(以下旭教研)算数・数学部は、昨年の北数教研究大会(上川・旭川大会)において、これまでの研究の成果を全道に発信すべく6本の授業を公開した。授業構築に当たっては、授業者と授業責任者を中心にチームを編成し、指導案検討や授業参観を何度も重ね、「よい授業」を創り出すために一丸となって取り組んだ。その中で共通して取り組んだことは、

①本時の目標を明確にすること

②問題と問題提示を工夫すること

③考え方の取り上げ方を工夫すること

 の3点であった。

 特に、②については、部員の日常実践をもとに、指導案検討会において多くの意見交流がなされた。

 そこで、実践交流の内容とともに、私自身の問題解決的な学習の実践から、「問題と問題提示」について留意している点をいくつか紹介したい。

1 『問題と問題提示』の視点から

ポイント1 問題はシンプルに4つの型から

 生徒にとって問題との出会いは、最初に興味をひかれる場面であると同時に、その日の授業の良し悪しを決定づける場面であると言っても過言ではない。複雑すぎる問題や考える必要感が薄い問題に対しては、生徒は興味や関心が感じられなくなり、授業そのものが目標達成に向けて進まなくなる。そのため、「問題づくり」で心がけていることは、次のように問いかける問題(決定問題)の形で与えることである。

①求答型「~はいくつか?」など

②選択型「~はどれか?」など

③正誤型「~は正しいか?」など

④発見型「~からどんなことがいえるか?」

 など、さらに大切にしていることは、生徒が問題解決に向けて答えを予想し、解決に向けて考え方の見通しもつことのできる問題づくりである。これらを満たしている問題であれば、生徒の中で問題を解決しようとする課題意識が生じてくる。

ポイント2 問題提示6つの工夫

 生徒の学習意欲を高めるためには、効果的な「問題提示」も重要であると考える。具体的には、次のような提示である。

①問題文を板書してから式や図を貼る

②式や図を先に板書して問題を整理する

③未完成の問題を提示し条件を整理していく

④プリントにして配付する

⑤実物投影機等で視覚効果を考え、提示する

⑥模造紙や小黒板を活用して提示する

 このように、生徒自身の興味や関心を高め、考えるべきことが何なのかを理解する上での手助けとなるような問題提示を心がけている。

ポイント3 問題づくりのヒントは教科書から

 「生徒の思考を促すよい問題をつくりたい」と試行錯誤を重ねるが、これが本当に難しい。単元全体を見通し、さらには小学校の学習内容までも意識することが必要であり、系統性の高い算数・数学ならではの難しさであり、面白さでもある。

 私は、問題づくりに行き詰まったとき、今一度教科書をじっくりと読むようにしている。教科書の練習問題などから導入問題のヒントを得ることがあるからである。  

 また、生徒が使用していた小学校の教科書と、現在使用されている中学校数学の全出版社(7社)の教科書を年度初めに揃え、簡単な教科書研究を行うようにしている。同じ目標であっても、掲載されている問題は違っており、使用されている数値や題材から問題づくりの参考とすることができる。今年度より旭教研算数・数学部の研究計画の中にも教科書を比較する研究を位置付けている。

ポイント4 検討会での討議内容と記録の活用を

 旭教研算数・数学部では、部員全員対象の研究会を年2回開催している。研究の進め方として、部員を4つのブロックに分け、授業検討会を進めている。この中では、指導案検討会や模擬授業など、中身の濃い討議が行われるわけだが、その貴重な記録を残す方法として、これまで検討されてきた問題とともに、提示方法や出題の意図、予想される生徒の反応、指導案検討会で出された問題点などを指導案に記載している。

 この「問題の変遷」は、研究協議においても、本時に至る検討経過を知る貴重な資料となるため、研究協議に深まりをもたらす効果がある。

 私は、日常の授業に行き詰まったときには、これらの資料を読み返し、新たな知恵と力をもらっている。

 さらに、年度末には全ての実践を1冊の研究集録にまとめるが、これは授業づくりの経緯について知ることができる貴重な資料となっている。

2 よりよい授業づくりに向けて

 旭教研算数・数学部中学校部会では、全道大会の成果と課題を整理し、『「考える力」の育成を目指す「よい授業」の創造』を次の研究主題として新たに歩み出しているところである。これからの社会を生き抜く資質・能力を生徒たちに育むために「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善が求められている。

 私は、これからも「問題解決的な学習」の実践を積み重ね、生徒が主体的に考え、授業の目標を達成することができる「よい授業」を行うために研究部員と共に研究に邁進していきたい。

(北海道算数数学教育会第2ブロック 旭川市立明星中学校 主幹教諭 高綱智美)

※次回は「学び合う授業づくりのポイント」を掲載します。

(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-09-26付)

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