【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】No.15数学科中学校編④北海道算数数学教育会中学校部会(中山勝喜部会長)確実に定着させるための〝振り返り〟の工夫(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-10-03付)
◆試行錯誤から自己評価を次に生かす
工夫1 生徒の発言をほめて発問の工夫をする
「実は、人生はTry(トライ)&Error(エラー)である。だが、それを知っている人は少ない。そして、君の人生の一部は、ここで勉強する時間である。つまり、ここでの時間はTry&Errorでなければならない。」(Bunoshi.Minafu)
私の授業はこの言葉から始まる。つまり授業で間違えることは、恥ずかしいと感じる生徒が多いので、間違ったときは「Nice Try!」と、まずほめる。その上でなぜそのような考えをしたのかを生徒本人に、または全体に問いかけ、共有し、同じようなミスをしないよう印象づける。
授業は生徒が参加(活動)しなければ始まらない。そして参加しても理解できなければ生徒にとって、その授業はただ苦痛なもので終わってしまう。だが、理解できれば習得できたと感じるまで遠くはない。そして最終的にはその身に付けたことを活用できるのである。
しかし、ここで疑問がある。それは「理解できた」ということはどういう状態のことを指すのかである。
工夫2 質問に答えさせたり説明や作問をさせたりする
単元の最初に授業の見通しを示すためシラバスを配布している。そして、課題ごとに自己評価をさせているが、これは生徒の主観であり、自分に甘い生徒は、こちらの評価との隔たりが大きい。
そこで、理解できた、理解が深まったことをテストする前に生徒へ伝えたい。「あなたはまだ理解できていないよ」と。
その方法として、①自分の言葉で説明できる②質問に答えられる③人に教えられる等を考える。
①、②の方法としては授業で代表生徒に説明させることもするが、一人一人を見るのには時間がかかる。③は授業の中で、学び合いの時間を設けた時には見とれるが、これも時間がかかり、見とりができない生徒もあらわれる。
そこで、テストする前に「あなたはまだ理解できていないよ」と伝えるために、教科書の例題や指定した問題の「類題を作問・解答させる宿題」を出したりしている。このとき、どういう問題がその類題であると分かること。そして、類題であれば解き方が似ているため、正解できること。こうすることで、生徒が「理解できた」というラインが引ける。
生徒が自分で作問するため、その理解度にあったものが作られるので、理解の深さも分かる。写真①では、2問とも買い物問題の代金を導く作問である。日本語も正しく、正解であるが、これだけでは深さが見えない。一方、写真②では、複雑な問題にTryしている。日本語を付け足す部分があるが、しっかり理解できている。
工夫3 自己評価等を大切にした主体的・対話的で深い学びを創る
小樽市教育研究会数学部会は、学習指導要領の改訂に伴い、あらためて「主体的・対話的で深い学び」を実現するために、「問題解決的な授業」に焦点を当て、2017年度より後志管内とも授業交流を図りながら、5つのグループで授業研究を進めている。
その根底には、教師の説明を聞いて練習を繰り返すだけでは、数学の力は身に付かないという考えがあるからだ。
具体的には、授業のはじめに「問題(考えるきっかけ)」を提示し、そこから「課題(本時の目標)」を明確にする。そして、個人や集団で解決に向かって考え合う授業を大切にし、数学的活動の位置付けを工夫している。
私も「主体的・対話的で深い学び」と関連を図りながら、「自己評価や、生徒自身の次につながるような評価活動」を数学的活動と位置付け授業研究を進めている。
このような私たちの取組が、各地区の数学科教員の絆を深め、すべての子どもたちが授業で「数学のよさ」を実感し、ともに学び高め合う関係につながっていくことを期待している。
(北海道算数数学教育会中学校部会第1ブロック 小樽市立松ヶ枝中学校 教諭 船見 忍)
※次回は、北海道学校体育研究連盟「子どもの思考を大切にした単元構成のポイント」を掲載します。
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-10-03付)
その他の記事( 伝えたい!授業づくりの基礎・基本)
【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】NO.20英語科編①北海道中学校英語教育研究会(中村邦彦会長)国際バカロレア(IB)の枠組みを活用した課題探究的な学習
◆深い学びへ導く“探究・行動・振り返り” ◎はじめに 新学習指導要領においては、外国語(英語)科の指導においても大きな変革を求められている。学習の基盤となる資質・能力においても言語能力...(2018-10-17) 全て読む
【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】NO.19音楽科中学校編 北海道音楽教育連盟(横山学会長)音楽的な見方・考え方を働かせた授業のあり方
◆他者とのかかわりを効果的に活用して 「音楽的な見方・考え方」については、学習指導要領の解説で次のように示されている。「音楽に対する感性を働かせ、音や音楽を、音楽を形づくっている要素とそ...(2018-10-15) 全て読む
【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】NO.18音楽科小学校編 北海道音楽教育連盟(横山学会長)器楽の学習を充実させるポイント
◆客観的に演奏をとらえさせる手立てを ◎器楽の学習で陥りやすい教師の一方的な指導 小学校では、1年生から鍵盤ハーモニカ、3年生からはリコーダーを用いて器楽の学習を行っている。鍵盤ハーモ...(2018-10-12) 全て読む
【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】NO.17保健体育科中学校編 北海道学校体育研究連盟(中野正毅委員長) 〝深い学び〟を目指した中学校短距離走の授業づくり
◆探究し合い、成長欲求を伴った学びへ 1 保健体育科の授業改善に向けて 学習指導要領の改訂に伴い、「どのように学ぶか」という、学び手である生徒の学びの過程や思考の流れを意識し、「主体的...(2018-10-10) 全て読む
【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】NO.16体育科小学校編 北海道学校体育研究教育連盟(中野正毅委員長)子どもの思考を大切にした単元構成のポイント
◆大局観を念頭に自ら学びのデザインを ◎主体的・対話的で深い学び実現のために必要な大局観 「大局観」(たいきょくかん)という言葉がある。将棋や囲碁などの世界でしばしば目にする言葉である...(2018-10-05) 全て読む
【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】№14数学科中学校編③北海道算数数学教育会中学校部会(中山勝喜部会長)数学的活動を軸にした授業のポイント
◆外化・内化の往還で交流活性化を 【1 はじめに】 数学的活動とは、「生徒が目的意識をもって主体的に取り組む数学に関わりのある様々な営み」であり、北海道算数数学教育会中学校部会では、数...(2018-10-01) 全て読む
【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】№13数学科中学校編②北海道算数数学教育会中学校部会(中山勝喜部会長)学び合う授業づくりのポイント
◆日常的に授業研究できる環境へ 釧路算数数学教育研究会では『「主体的・対話的で深い学び」の視点を生かした集団思考の在り方』を研究主題として設定し、日々の授業研究に取り組んでいる。 こ...(2018-09-28) 全て読む
【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】NO.12数学科中学校編①北海道算数数学教育会中学校部会(中山勝喜部会長)問題と問題提示のポイント
◆小学校の学習内容を意識した授業構成を 旭川市教育研究会(以下旭教研)算数・数学部は、昨年の北数教研究大会(上川・旭川大会)において、これまでの研究の成果を全道に発信すべく6本の授業を公...(2018-09-26) 全て読む
【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】NO.11社会科中学校編 北海道社会科教育連盟(新保元康委員長)資料活用のポイント
◆資料の「窓」から社会を見つめる目を ◎情報化社会だからこそ~今こそ必要な教科書資料の活用 情報化社会の進展で様々な情報を容易く得ることができるようになったが、裏付けとなる根拠が不十分...(2018-09-21) 全て読む
【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】NO.10社会科小学校編③北海道社会科教育連盟(新保元康委員長)学力定着のポイント
◆問題意識と解決の見通しもち振り返りを ◎社会科で求められている学力とは何か 新学習指導要領では、「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」の三つの資質・...(2018-09-19) 全て読む