【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】№14数学科中学校編③北海道算数数学教育会中学校部会(中山勝喜部会長)数学的活動を軸にした授業のポイント
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-10-01付)

伝えたい!北数教③
交流の中で司会者や記録者を決め、記録者はホワイトボードにまとめていく

◆外化・内化の往還で交流活性化を

【1 はじめに】

 数学的活動とは、「生徒が目的意識をもって主体的に取り組む数学に関わりのある様々な営み」であり、北海道算数数学教育会中学校部会では、数学的活動の具体的な例として、「生徒同士の協働性が育まれ、数学的コミュニケーションが活性化するような話し合い活動」を挙げている。

 数学的活動を軸にした授業の肝は、生徒の「伝え合いや学び合い」と「外化(≒アウトプット)・内化(≒インプット)の往還」と考える。そうなると、授業の中でどれくらい生徒に時間を預けられ、そこで生徒に何をさせるかが、授業をデザインするうえでのポイントとなる。

【2 数学的活動を軸にした授業は敷居が高い?】

 「うちの生徒は学力的に無理だ」などの声を聞いたことがある。確かに、生徒の学習状況によっては、主体的に考えさせようにも生徒自身が考える素地となる知識や技能がなさ過ぎてできないと思うことはあろう。しかし、そういった知識や技能を身に付けてから数学的活動を軸にした授業を行おうとすると、中学校3年間で一度もできないことにならないだろうか。生徒は考えることやそれをグループで交流することが好きだし、自ら分かりたい、伸びたいと思っている。では一体どうすれば…。

 まずは、学力差を問わない、誰にでも考えられる問題や課題を授業で提示しよう。考え方が多様なものや、答えがいくつかあるものが良い。そして、その問題の答えと解決の仕方や根拠などをグループワークで、ざっくばらんに、交流したり教え合ったりするのである。そこが授業の山場となるように授業をデザインし、生徒にその時間を預けてしまうのだ。

 では具体的な授業実践を以下に示そう。

【3 実践例】

(1)単元名:関数y=ax2

(2)本時の目標

①与えられた関数のグラフからそのグラフの式を求めることができる。

②与えられた関数のグラフを見てグラフの特徴を捉え、外化することができる。

③関数y=ax2のグラフの特徴を理解することができる。

(3)本時の流れ

①問題の提示(図1)

 ワークシート配付

②問題に対する時間(個人)

 個人で解決する。時間は5分ほど。

③答えの交流(全体)

 答えと解き方を生徒が説明。

④課題提示

 「これらのグラフの特徴を3つ以上見つけよう」

 まずは個人で取り組む。大切なことは「見てそれとわかること」を書いていくことである。

⑤特徴の交流(グループ)

 一人一つずつ、同じことでもいいから全員が話すことを条件として交流させる。

 また、司会者や記録者を決め、記録者はホワイトボードにそれをまとめていく。

⑥まとめたものを発表(全体)

 全体で発表する人をグループで決め、その生徒が発表する。このときも同じ内容であっても発表させる。教師はそれを聞きながら言葉を補いつつ黒板にまとめていく。自分たちのグループで出なかった特徴は、ワークシートにメモするよう指示する。

⑦特徴の確認(全体)

 教科書の「関数y=ax2のグラフの特徴」を確認する。教科書の特徴のまとめ以上に生徒から出されることもあるので、教科書の特徴に加えていく感じにする。教科書は最低基準として考える。

⑧ふりかえり(自己評価 個人)

 今日の授業の振り返りを評価用紙に記入する。特に今日の授業で分かったことを自分の言葉で改めて書かせることで、生徒は学んだことを深めたり再確認したりする。

【4 実践にあたって】

ポイント1 人の話は目で聴く、耳で聴く、心で聴く

 数学的活動を軸にした授業では生徒同士が自分の考えなどを4人ほどのグループの中や、全体の前で外化することが多いが、安心して外化ができる環境づくりが重要である。他者の前で安心して話せるためには、聴く側の心の姿勢、体の姿勢が大切である。

 私は最初の授業で、生徒といくつかの約束を交わすようにしている。その一つが、「人の話は目で聴く、耳で聴く、心で聴く」である。話している人の方を向いて発表者の目を観て聴くこと、発表者が安心して話ができるように温かな気持ちをもって聴くこと、失敗したりまちがえたりした人に対して笑ったり、馬鹿にしたり絶対しないことを教師も生徒も確認し合う。

ポイント2 考えを書く機会と話す機会を

 グループワークの時は全員がなるべく自分の考えを説明するよう伝えている。まずワークシートに自分の考えを書いておく(そのために普段から自分の考えをノートなどにメモさせている)。はじめは書いたことをそのまま読んでもよいとして、少しずつ自分の言葉で説明できるようにトライさせる。

【5 おわりに ~まずはやってみましょう~】

 数学的活動を軸にした授業は、すべての条件を整えてから始めようとすると1年が終わってしまう。生徒もしっかり考えることやグループワークなどに戸惑うことはあるが、何回か経験すると慣れていくものである。まずは怖がらずやってみて、反省をして、さらに良いものをつくっていこうとする姿勢が大事だと考える。

(北海道算数数学教育会第5ブロック 札幌市立札苗北中学校 主幹教諭 新谷和彦)

※次回は、「確実に定着させるための振り返りの工夫」を掲載します。

(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-10-01付)

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