【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】№13数学科中学校編②北海道算数数学教育会中学校部会(中山勝喜部会長)学び合う授業づくりのポイント
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-09-28付)

伝えたい13・釧数教学習会風景
釧路算数数学教育研究会で月1回開かれる学習会での授業検討の様子

◆日常的に授業研究できる環境へ

 釧路算数数学教育研究会では『「主体的・対話的で深い学び」の視点を生かした集団思考の在り方』を研究主題として設定し、日々の授業研究に取り組んでいる。

 この研究主題は生徒個々として「学ぶ」より、生徒同士で考えたことや疑問に思ったことを数学的な表現を用いて伝え合いながら問題解決に向かう方がより深く『数学を学ぶことの良さ』を実感できると考えて設定した。

 本研究会では、研究主題を踏まえて実践した授業をビデオに撮って、毎月1回実施している学習会に持ち寄って小学校・中学校合同で授業検討を行っている。この学習会では、北海道教育大学釧路校の早勢裕明教授に毎回ご助言をいただいている。また、大学生や大学院生も参加して、より活発な意見交換が行われている。このように、「授業実践の学校」と「理論研究の大学」とが深く結びつきながら授業研究が行われ、その場にこれから教師を目指す学生も参加している。

 釧路には授業の質を高めていくために必要な環境と次世代を育成する仕組みがしっかり整っている。

【“学ぶ授業”から“学び合う授業”へ】

 本研究会では、研究主題にもあるように集団思考の在り方について研究を進めて、「生徒が学ぶ授業」から「生徒たちが学び合う授業」へと転換させていくことを目指している。そのために次の3点に重点を置いて授業づくりを進めている。

ポイント1 個人思考での見取りが集団思考の設計図になる

 問題を提示した後の数分の個人思考のときに机間指導で生徒個々の考えや疑問を見取って集団思考につなげていく。解答状況によって集団思考の展開は当然変わってくるので、机間指導で何を見取り、どのようにつなげていくかが重要なポイントになる。大切なのは、正答・誤答・無答の割合とノートに書いてある内容の見取りである。正答であれば解法は何種類出ているのか。それをどのような順番で発表させていくのか。誤答であれば誤りの原因は何か。その誤答の原因を教師が指摘するのか、それとも正答との比較の中で生徒に気づかせるのか。無答であれば停滞している部分はどこか。解答を進めるための助言を教師がするのか、それとも生徒にさせるのか。見取るポイントを明確に持って机間指導をすることで、よりよい集団思考にするための計画が立てられる。

ポイント2 発表順や発表方法の工夫が集団思考の成否を分ける

 個人思考の見取りで、正答と誤答が約半数ずつなら先に誤答の考えを発表させて、次にその誤りを訂正しながら正答の考えを発表させる。また、正答の考えが少数だった場合にはまだ正答できていない生徒に対してヒントになるようなことを言わせて正解者を増やすと同時にアドバイスした生徒の数学的な表現力も高めることができる。逆に、正答の考えが多数であと数名が解答できていない場合には、わからない生徒を主役にして疑問点などを言わせて、その疑問に正答している生徒が答えていくことで疑問が解消すると同時に、自分の考えを数学的によりよく伝えようとする意欲と表現力を高めることができる。

ポイント3 発表後の価値付けが集団思考をアクティブにしていく

 発表してくれた内容に対して教師が「今の発表には数学的な表現があってとてもよかったね」と価値付けをしていくことで、生徒の発言の質が高まるとともに、教師が求めている集団思考に近づいていく。価値付けについては、発表内容はもちろん、全員を見て発表している、全員に聞こえる声の大きさで発表しているなど発表態度、板書で式や図を用いた発表など板書内容に価値付けることも非常に有効な手立てである。

【授業研究から研究発表へ】

 本研究会では、授業研究の取組が内輪だけに閉じてしまわないように広く研究発表したり、著名な先生方をお招きして授業力向上セミナーを開催したりして活動の幅を広げている。今年の6月には明星大学の細水保宏客員教授をお招きして、同単元同目標での公開授業を釧路の先生と細水先生に行ってもらい、その比較検討会を行った。

 また、毎年秋季研修会として北海道教育大学旭川校の相馬一彦教授と釧路校の早勢裕明教授をお招きして、釧路・オホーツク・根室管内の先生方とともに授業検討や懇親会を行っている。さらに、北海道算数数学教育会の全道研究大会で毎年小学校・中学校各1名以上は研究発表を行っている。このような活動が先生方の研究意欲を大きく向上させている。 

 今後も活動内容を充実させながら理想の授業を求めて日々の授業実践に臨んでいきたい。

(北海道算数数学教育会第4ブロック 釧路市立桜が丘中学校 教諭 溝渕修也)

※次回は「数学的活動を軸にした授業」のポイントを掲載します。

(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-09-28付)

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