【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】社会科小学校編②北海道社会科教育連盟(新保元康委員長)課題探究的な学習のポイント
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-09-14付)

伝えたい道社連②
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◆意味理解伴う知識の積み重ねから習得へ

【意味理解を伴う知識の習得を】

 平成32年度より全面実施となる新学習指導要領では、各教科において「主体的・対話的で深い学び」の視点から授業改善を行うことが求められる。特に、社会科では社会的事象について、知識を用語として覚えるだけではなく、関連する理由や背景と結びつけて理解する「意味理解を伴った知識の習得」が重要になると考えられる。

 例えば、5年生「米づくりのさかんな地域」。「我が国の食料生産の中心をなす稲作の主要な生産地である庄内平野では、自然条件に合わせ、携わる人々の工夫や努力を生かして生産をしている」ということが単元で獲得すべき概念的知識である。これを身に付けるにはいくつかの具体的な知識の積み重ねが必要である。

 庄内平野では「広い平野を利用している」ことや「降水量」「夏の日照時間」に恵まれていることなどの自然条件、農事ごよみを通して「稲作農家の工夫や努力」「機械化や共同化」を行っているという具体的知識の積み上げで「稲作が盛んである」ことを理解するのである。実際に教科書はこれらの内容が適切・適量に配置されている。

 このように意味理解を伴った知識を積み重ねることが、子どもが興味をもって能動的に学び続ける基礎となる。特に、小学校段階では課題探究的な学習を通して意味理解を伴った知識を習得することができるのである。

【授業づくり6つのポイント】

 そこで、以下のような6つのポイントを意識しながら授業を構築し、課題探究的な学習を進めてほしい。ただし、この6つのポイントは必ずしも1単位時間の授業内容で実現することを目指すのではなく、あくまで教材や子どもの実態に応じて適切に配置することが望ましい。子どもに寄り添った視点での授業づくりが重要である。

ポイント1 興味・関心、疑問をもたせる

 まずは、子ども自身が、自ら解決したい、しなければならないと感じるような課題をもつ手立てが必要である。これは、その後の学習への意欲にもつながるので、どの子に対しても分かりやすさが重要である。例えば、できる限り実物を用意する、社会的事象を視覚的にとらえられるような映像を用意するなど、単位時間や単元で、何が学習の中心になるかをつかめるようにすることである。授業の中で教師が子どもに気付かせたい点を明確にすることで課題をもたせるようにしたい。

ポイント2 学習意欲を持続させる

 子どもが課題をもっても、問題意識・学習意欲を持続することは難しい。そこで、子どもの既習を生かしたり、子どもの知識を活用したりすることで、知的な好奇心をくすぐることが必要である。例えば、本時で取り上げる社会的事象を生活経験と比較することや既習と比較することで違いを際立たせるなど、「違い」を意識させるようにすることも工夫の一つと考えられる。

ポイント3 課題解決に向けて見通しをもたせる

 子どもが課題を把握したら、どのように解決するかの道筋をイメージする。既習や生活経験が生かせるか、教科書や資料集から答えを導き出すことができるか、子どもはどのような発言をするかなど具体的な学習活動を考え、適切に配置する。

ポイント4 協働して課題解決に向かわせる

 ポイント3でイメージした学習活動の中で、どの場面で子どもたちが関わり合うかを考える。子どもたちの話し合いの中で話題になっていることや学習の中心となることを整理し、解決に向かうように段取りをつけることである。ここでは、一人で解決を進めるだけでは難しい内容であったり、他者と協働して解決に向かうことでより多面的・多角的な視野でとらえることができたりすることが重要である。

ポイント5 多面的・多角的な考察をさせる

 子どもが協働して解決に向かう時の道筋をイメージして場を構成するようにする。ここではポイント4で述べたように他者の意見に触れること、自分とは違った見方・考え方に触れることがより多面的・多角的に社会的事象を見つめることにつながるが、例えば消費者や販売者などの「立場」で考えることや現在と将来など「時間」の違いなので、比較することが有効と考えられる。

ポイント6 学びを振り返らせ、学びのよさを実感させる

 最後に、子どもたちが身に付けた学びをどのように生活に生かしていけるかをイメージして学習を構成する。

 例えば、学習した社会的事象と自分の生活とのつながりを考えたり、他の社会的事象と比較したりして新たな見方・考え方を獲得することや学びのプロセスの振り返りを行うことで、概念的知識をより確かなものとすることができる。

 子どもたちは学習で得る具体的知識を組み合わせて概念的知識を身に付けるのである。これらのプロセスを意識した学習を通して、「主体的・対話的で深い学び」を実現できると考えている。

(北海道社会科教育連盟札幌地区 札幌市立福住小学校 主幹教諭 辻 知行)

※次回は、(小)「学力定着のポイント」を掲載します。

(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-09-14付)

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