札教組が第2回中央委員会開く 給特法廃止求め特別決議 道徳の教科化への反対も
(関係団体 2018-06-20付)

札教組第2回中央委員会
議事を審議したほか、2つの特別決議を採択した

 札幌市教職員組合(=札教組、鈴木誠幸執行委員長)は十三日、市内の道教育会館で第二回中央委員会を開いた。札幌市地方公務員二者共闘会議・夏期闘争について確認。「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)」の廃止を求める特別決議と文部科学省「特別の教科道徳」に対する取組を進める特別決議を採択した。

 冒頭、鈴木執行委員長があいさつ。政治や子どもの状況のほか、二〇一六年の文科省による勤務実態調査で過労死レベルの月八十時間を超える超過勤務が小学校教員で三割以上、中学校教員で六割を以上いることにふれ「教員の多忙化を解消し、教育現場に余裕をもたせ、子どもに寄り添う時間を増やすことを文科省、市教委に対して要求し続けなければ」と話した。

 また、スローガン「教え子を再び戦場に送るな」にふれ「平和と民主主義を守り、政治と教育の反動化阻止のため、組織一丸となって取り組まなければならない」と強調した。

 議事では、札幌市地方公務員二者共闘会議・夏期闘争について確認したほか、北教組第百二十一回中央委員会に臨む札教組の態度について討議した。

 最後に「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)」の廃止を求める特別決議と、文部科学省「特別の教科道徳」に対する取組を進める特別決議を採択した。

 特別決議の内容はつぎのとおり。

◆「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)」の廃止を求める特別決議

 教育の機会均等と義務教育無償の原則は、憲法二六条で定められており、すべての国民に対して妥当な規模と内容の義務教育を保障することは、国の重要な責務である。このことから、全国どの地域においても、すべての子どもたちに無償で一定水準の教育の機会を保障するために、義務教育費国庫負担制度が設けられている。

 しかし、二〇〇六年、文部科学省が義務教育費国庫負担率を二分の一から三分の一と改悪したことで、教育の機会均等の原則が揺るがされている。また、定数内期限付採用や非常勤教職員の増加、教職員定数の未充足等で、教職員不足は全国的にみても深刻な問題である。自治体の自助努力だけでは抜本的な改善にならず、教育行政の地域間格差は広がっていくばかりだ。

 また、一九七一年に定められた、いわゆる給特法によって、教員の勤務態様の特殊性を踏まえ、勤務時間外手当を支給しない代わりに、制定当時の教員の平均的な一週間の超過勤務時間が一時間四十八分であったことをもとに、給与の四%に相当する教職調整額が支給されている。

 しかし、昨年四月、文科省は二〇一六年度の教員勤務実態調査を公表し、三割以上の小学校教員と六割以上の中学校教員が、いわゆる過労死ラインに達する八十時間以上の残業の実態が明らかとなった。

 こうした中、文科省は昨年六月、中央教育審議会に「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について」を諮問し、審議会は学校における働き方改革特別部会を設置するとともに、同年十二月、諮問された内容についての中間まとめを公表した。しかし、この中間まとめでは給特法についての言及がなされていない。

 学校における働き方改革を進めるに当たっては、労働者の視点に立った改革が進められるべきであり、教職員にかかる勤務時間管理の根幹をなす給特法についても論議すべき。

 教職員の多忙・超勤実態の解消は喫緊の課題であり、そのためには、教職員の無制限・無定量の超過勤務を常態化させている給特法・条例を廃止するなど、所定勤務時間に収まるように授業時数・業務の削減を求めていくことが重要。

 私たちは、任命権者である市教委に対して、実効性のある教職員の超勤・多忙化解消の早期実現を図るよう強く求めるとともに、国に対しては日教組・関連団体等と連携し、義務教育費国庫負担制度の堅持、当面負担率二分の一への復元、給特法の廃止に向け、組織の総力を挙げて取り組むことをここに決議する。

◆文部科学省「特別の教科道徳」に対する取組を進める特別決議

 二〇一五年三月文部科学省は、学習指導要領の一部を改訂し、「特別の教科 道徳」を新設した。これまで教科外活動とされてきた「道徳の時間」を教科として位置付け、他の教科と同様に、検定教科書を使用し、評価することになる。学校教育法施行規則も一部改訂され、小・中学校の教育課程に「特別の教科である道徳」と明記され、小学校では二〇一八年四月一日から、中学校では二〇一九年四月一日から施行となった。

 これはこれまでの道徳教育の在り方からの大転換である。

 第一に、教科化されることによって教科書が使われることになる。文科省は二〇一九年度から使用される中学校の教科書検定の結果について、申請のあった八社三十冊すべてを合格と公表した。これは「指導要領に照らして扱いが不適切」との検定意見を取り入れるなど、各教科書会社が学習指導要領に合わせた形で編集した結果であり、国による道徳の介入が一層進んでいるといえる。

 第二に、評価が行われることになる。評価は数値化することは避け、文章による記述にとどめるとされているが、個々の思いや子どもたちの多様性は無視され、特定の道徳的価値に照らした評価が行われる危険性がある。

 第三に、「特別の教科 道徳」として位置付けられることによって、画一的な価値観や愛国心を押し付ける「道徳科」を中心とした道徳教育の理念が、教育活動全体の上位において展開される懸念がある。

 これまで安倍政権は憲法改正を掲げ、軍備増強にまい進しながら、教育の分野では「47教育基本法」を改悪し、国家による統制を強化してきた。

 私たちは、戦前の国家主義教育によって、間違った方向へと子どもたちを導いた歴史の教訓に学び、再び、同じ過ちを繰り返してはならない。

 「教え子を再び戦場に送らない」のスローガンを今こそ高く掲げ、子どもたちの生活現実に寄り添い、子どもを権利主体とした人権教育を進めるために、組織の総力を挙げて取り組んでいくことをここに決議する。

(関係団体 2018-06-20付)

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