4種校長会長インタビュー③ 道高校長協会 川口淳氏 「協働」重点に実効性ある活動 後継者育成へつながる取組を(関係団体 2018-07-17付)
道高校長協会・川口淳会長
―高校長協会として本年度の抱負
本年度、会長として二年目を迎えた。会員の校長先生方の協力をいただき、職責を果たしていきたい。
本年四月から施行された道教育推進計画では、「自立」と「共生」を本道の教育の基本理念として、社会で生きる力や豊かな人間性の育成などを目標としている。
また、選挙権年齢が十八歳以上となり、子どもたちにとって社会や政治が身近になってきている。このような中、子どもたちが将来、社会で活躍し、社会に貢献していくことができるよう、社会とのかかわりの中で子どもたちの成長を支えていくことが重要であり、高校教育には、将来の社会を担う人材の育成のための役割を果たしていく必要がある。
高校教育は新たなステージを迎えている。変化の激しい社会の中で、人々と協働しながら、新たな価値を創造していく人材が必要とされており、高校教育には、生きる力を育むことを目指し、知識や技能の習得、思考力・判断力・表現力などの育成、学びに向かう力・人間性等の涵養の資質・能力の三つの柱について、バランスを重視しながら実現できるようにすることが求められている。
こうしたことを背景に、様々な教育改革の方向性が示されてきており、本年度は、各学校において、具体的な方策について検討していくスタートの年になる。そのためには、自校の教育理念を明確にし、その具現化の方向性を示すほか、現状と課題を的確に把握し、課題に確実に向き合うことが重要であると考えている。
方向性を明確に示すことは、組織が動くためには必須なことであり、説明責任を果たしていくためにも必要である。また、教職員一人ひとりの能力や意欲、様々なアイデアは教育を支える礎であり、こうした力量を発揮するような組織づくりに努めることは、組織の活性化にもつながるものと考えている。
教育における施策については、その結果や成果に関心が高まる傾向にあるが、すぐに目に見える形で現れるものではないと考えている。地道な活動のプロセスが大切であり、根幹となる目標や方針、枝葉となる方策や実践などが重要である。
施策の検討に当たっては、短期的だけではなく中長期的にみる時間的な視点と、一面だけでなく多面的にみる空間的な視点をもち、教育の効果や期待される成果について検討することが大切である。
各学校で、こうしたことを進めるためにも、本協会としては、「協働」ということに重点を置き、校長間のネットワークが大切にして、教育改革や教育課題に関する様々な情報を共有し、課題の解決に向けて協議を深め、相互の協力によって実効性のある活動に結び付けたい。
―高校長協会の抱える課題と対策
一つ目は、コンプライアンスの推進について。
前年度、不祥事の防止や危機管理能力の向上を図るため、本協会内に特別委員会としてコンプライアンス推進委員会を設置し、学校における研修などの参考となる資料を作成した。しかし、依然として、教職員による不祥事がなくならないことや、学校が抱える課題が複雑になり、長期化する場合があることなどから、本年度も、継続して本委員会を設置し、教職員の意識の高揚を図るような取組を行いたい。
二つ目は、後継者の発掘・養成について。
近年、管理職、特に教頭候補の確保が大きな課題である。
こうしたことから、これまで毎年三月に開催してきた採用校長事前研修会に加え、新たに昇任教頭事前研修会を開催した。様々な立場の方々からの講話のほか、テーマに沿ったグループ協議が熱心に行われるなど、充実した研修会になった。
今後も、後継者の育成につながるような取組を推進していきたい。
三つ目は、働き方改革の推進について。
全国的に働き方改革に向けた様々な取組が推進されており、本道では、本年四月から学校における働き方改革「北海道アクション・プラン」が施行され、部活動休養日の完全実施や学校閉庁日の設定をはじめ、様々な取組を進めていくこととしている。各学校で、目標の実現に向けて、計画的に取り組んでいく必要がある。
―本年度の重点
一つ目は、本協会の協働体制の構築について。
前年度設定した重点目標については、一部文言を修正しているが、その趣旨を継続している。本年度も、重点目標の実現に向けて、本協会の様々な活動において、高校教育にかかる課題を共有し、協議を深め、その解決を図っていきたい。
また、本年度、本協会の活動方針の主題を「北海道の未来を担う人を育む高等学校教育の創造」、副題を「新高校学習指導要領が目指す教育の研究と実践を推進する」としている。本年三月に高校学習指導要領が告示された。今後「主体的・対話的で深い学び」を重視した授業改善を進めていく必要がある。
また「探究」という言葉を付した科目は、発展的な学習、課題の設定・探究などの内容であり、より深い学びが実践されるものと期待している。
さらに、すべての教育活動に必要とされる言語能力や高度情報化に必要とされる情報活用能力などは、学習の基盤となる資質・能力であり、教科等の横断的な学習によって培う必要がある。
今後、各学校では、新しい教育課程の編成を含め、カリキュラム・マネジメントを確立していくという視点から、主題と副題を設定している。
二つ目は、研修の充実と調査研究の推進について。本協会では、各学校の学校経営に資するため、調査研究部において調査・研究を進め、研修の充実を図っている。本年度は、教育課程、管理運営、生徒指導、進路指導の四委員会および進路指導委員会の中に高大接続小委員会を設けている。
各委員会の本年度のテーマは、教育課程が「カリキュラム・マネジメントにおける教育課程の評価・改善」、管理運営が「次世代を担う管理職育成を目指して」、生徒指導が「生徒の成長を支援する教育相談の在り方」、進路指導が「地域の未来をつくるキャリア教育の在り方」である。
高大接続小委員会は「共通テストや高大接続に関する課題に対応した学校経営の在り方」としている。本年四月に高校に入学した生徒から対象となる大学入学共通テストについては、すでに実施方針が示されている。国語と数学における記述式の導入と英語の四技能を評価する観点から民間の資格・検定などの活用が現行のセンター試験から大きく変わる。
昨年、試行調査が実施されたが、全般的に問題文が工夫されていて、読解力の必要性をあらためて感じている。今後、試行調査の結果などを踏まえ、より詳細な実施大綱などが示されるものと考えている。
また、来年度から実施される高校生のための学びの基礎診断については、本年中に、学校で活用する測定ツールが公表されることとなっている。今後、各学校で、共通テストや基礎診断の実施に向けた検討が必要になることから、高大接続小委員会において、大学入試等に関する調査・研究をすることとしている。
三つ目は、本協会の創立七十周年について。本年度は、本協会が創立してから七十年目の節目を迎える。本協会内に運営委員会を設置し、総務・式典・祝賀会・記念誌の四委員会を組織し、来年一月八日の記念式典に向けて、準備を進めていく。これまで本協会が築いてきた歴史を顧みながら、今後の本協会の活動や高校教育について、展望する機会になるものと期待している。
かわぐち・じゅん
昭和58年筑波大学大学院修了。平成19年野幌高教頭、21年道教委新しい高校づくり推進室主幹、22年道教委高校教育課主幹、23年美唄尚栄高校長、25年道立教育研究所研究・相談部長、27年岩見沢緑陵高校長を経て、28年から札幌南高校長。
昭和34年1月16日生まれ、59歳、旭川市出身。
(関係団体 2018-07-17付)
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