4種校長会長インタビュー④ 道特別支援学校長会 宮崎真彰氏 共生社会充実・発展の1年に 専門性向上研修を道外に案内(関係団体 2018-07-18付)
道特別支援学校長会・宮崎真彰会長
―特別支援学校長会会長としての抱負
道特別支援学校長会会長の継続を承認いただいた。本年度は、平成の時代を締めくくる節目の年でもある。経済的には、平成時代を失われた二十年という評価もあるが、こと特別支援教育においては、北海道障がい者条例の制定、障害者差別解消法の成立、障害者権利条約の締結など、障害のある方々を取り巻く社会状況は大きく展開した時代だと思う。
昭和三十八年の校長会の発足以来、先達が脈々と築いてきた特別支援教育の歴史と実践を引き継ぐとともに、道教委をはじめとして関係機関との連携を図りながら、七十二校、六十三人の校長の志を一つにして、次代に向けた特別支援教育および共生社会の充実・発展を図る一年にしたいと考えている。
―特別支援学校長会の抱える課題と対策
この四月、北海道総合教育大綱、北海道教育推進計画、特別支援教育に関する基本方針の策定と、学校経営を導く骨格が相次いで示された。
特殊教育から特別支援教育への転換以来、本道の特別支援教育は、校内委員会の設置や特別支援教育コーディネーターの指名、個別の教育支援計画の策定、特別支援学級の開設や特別支援学校の開校など一定の成果を収めてきたが、社会の変化に対応した特別支援教育の質の向上に向けて一層の充実に努めたい。
各障がい教育について。視覚障がい教育では、道内四校の盲学校の連携はもとより、小・中学校の弱視特別支援学級や眼科医師会などの関係機関と連携し、見え方に不安や心配を感じている保護者、学校関係者などに対する教育相談や研修支援を随時行っている。
本年度は、毎年開催している専門性向上研修会を道外の関係者にも案内し、研修したい仲間が様々な時期に、全国レベルで学べるようにするための拠点として取り組んでいく。
聴覚障がい教育では、全国的に新生児聴覚検査が普及したことによって、ゼロ歳児からの療育が開始されている。道内聾学校においても乳幼児相談室を中心に療育を行っている。教育においては医療機関や保健機関、行政機関などの関係機関と連絡を密に取りながら情報を共有し、多面的に子どもをとらえながら、効果的・効率的な言語指導、学力向上に取り組んでいる。
また、手話活用能力や聴覚障がい教育の専門性向上、増加する人工内耳や重複障がい幼児児童生徒への指導など、多様な教育的ニーズへの対応を引き続き進める。
知的障がい教育においては、中教審答申や新学習指導要領(小・中学部)に基づいた教育課程の見直しを進めている。中では、育成を目指す資質・能力の三つの柱を教育課程編成や教科指導等の実践課題として位置付けて、児童生徒一人ひとりの発達や成長につながる教育の充実を図っている。
今後、高等部の新学習指導要領についても告示されることから、小・中学部、高等部のそれぞれの全面実施に向けて、子どもたちに必要な資質・能力の育成を保証する取組を進めていく。
また、新しい形の知的障がい特別支援学校高等部への移行に向けて、道教委が検討を進めている入学者選考検査の在り方などについて、道教委と連携・協力した取組を引き続き進めていくとともに、情報交換・意見交換を行っていく。
肢体不自由教育では、幼児児童生徒の障がいが重度・重複化、多様化してきており、個々のニーズに応じた質の高い教育の実現と社会環境の変化に対応した後期中等教育の在り方などが課題となっている。
このことから、肢体不自由教育専門性向上セミナーと肢体不自由教育研究協議会を通じて、授業の改善や摂食指導にかかる技能の習得、ICTや教材・教具の効果的な活用など教職員一人ひとりの実践的指導力の向上に取り組むとともに、各学校が医療的ケアやキャリア教育、生涯学習などの視点をもちながらカリキュラム・マネジメントによる教育課程の一層の改善・充実に取り組んでいる。
病弱教育では、医療技術の進歩に伴う入院期間の短縮化等によって、特別支援学校で学ぶ児童生徒数は減少している。しかし、児童生徒一人ひとりの病気・病状・障がいは多様であり、その教育的ニーズに対応していかなければならない。
さらに、少人数化や学習の制限がある中で主体的・対話的で深い学びをどう実現していくかも課題である。
本年度は、道病弱虚弱教育研究大会札幌大会が山の手養護学校で開催される。小・中学校の院内学級や特別支援学級の担当者、特別支援学校同士の連携も含め専門性の向上を図り、ネットワーク構築につなげていきたい。
―本年度の重点
①特別支援学校の校長としての資質の向上を図り、諸課題の解決を図る
このたび策定された北海道総合教育大綱、北海道教育推進計画、特別支援教育に関する基本方針など、諸計画の背景にある社会の変化を踏まえることが極めて重要である。社会は多様化が進行しているが、教育の目的は、教育基本法第一条にある「人格の完成を目指すこと」「平和的な国家及び社会の形成者の育成」である。
予測困難な時代に向かうからこそ、校長は不易と流行を踏まえ、これまで以上に自校の進む道を使命、情熱をもって児童生徒、保護者、教職員、地域に語っていきたい。
そのために、支部、障がい種校を中心として、校長間、道教委などの関係機関などの情報共有を図るとともに、調査研究や研修を通して校長としての資質の向上を図りたい。
②各地域の特別支援教育の推進・充実を図る
改訂された学習指導要領の前文には「多様性を原動力とし、質的な豊かさを伴った個人と社会の成長につながる新たな価値を生み出すことへの期待」「よりよい教育を通して、よりよい社会を創るという理念を学校と社会が共有し」とあり、共生社会の形成に向けた心強い視点が示された。
また、北海道教育大綱では「社会で自立し共に支え合う」が柱の一つとなっている。
社会のありようが変化する中で、障害のある人が社会生活をしていく上でのバリア(障壁)は、権利としてのバリアや物理的バリア、文化・情報のバリアが取り除かれてきているが、意識上のバリアの解消には教育の果たす役割が大きい。
そのために、特別支援学校に在籍する幼児児童生徒の力を最大限に高めることはもちろんのこと、高校通級制度の支援やインクルーシブ教育システムの促進、小・中学校との交流および共同学習の活性化、職場実習などによる地域との連携などを推進していきたい。
③教育環境の整備を図る。
学習指導要領の定着を図る上で、基礎的環境となる教育環境の整備が欠かせない。授業改善に向けて、校長のリーダーシップのもとでカリキュラム・マネジメントを進めるのはもちろんのこと、教室不足や教職員が児童生徒に向き合う時間の確保は緊要な課題である。
道立学校職員人事評価制度や教員育成指標を活用した教職員の専門性の向上、ストレスチェックを活用した教職員のメンタルヘルスや時間外勤務の縮減など、教職員のパフォーマンスが発揮された学校経営を進めたい。
また、地域の基礎的環境の整備も重要であり、本会としても、各障がいごと、地域ごとの研修をバックアップしていく。
特別支援学校は、管理職の大幅な交代期を迎えている。複数の支部で「教育課程セミナー」を開催するなど、ミドルリーダーの育成に本年度も取り組んでいく。
みやざき・まさあき
昭和57年宮城教育大特殊教育特別専攻科修了。平成22年標津高校長、25年千歳高等支援校長を経て、27年に現在の真駒内養護校長に。
昭和33年11月8日生まれ、59歳。網走市出身。
(連載終わり)
(関係団体 2018-07-18付)
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