道臨床教育学会が第8回釧路大会 「チーム学校」どうつくるか シンポジウムや研究発表で研鑚(関係団体 2018-07-20付)
専門職が少ないなど地域ならではの課題をもとに議論を行った
【釧路発】道臨床教育学会(庄井良信会長)は十五日から二日間、道教育大学釧路校で北海道臨床教育学会第八回大会釧路大会を開いた。札幌市以外での開催は初めて。約百人が参加し、シンポジウムや研究発表を通して、「チーム学校」をどのようにつくるのか活発な議論が交わされた。
大会テーマは「“チーム学校”をどうつくるのか」。初日はシンポジウム、二日目は課題研究を行った。
シンポジウムでは、広大で人口減少が著しい北海道の地域部においては、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなど学校を支える専門職が少なく、連携機関が近くに設定されていないという問題を抱えていることを受け、「専門職の少ない地域で“チーム学校”をどうつくるのか」をテーマに設定した。
冒頭、玉井康之実行委員長(道教育大釧路校教授)があいさつ。道東での開催にふれ「専門家の少ない過疎地で、子どもたちのために学校のチーム力を高める知恵を出し合いたい」と期待した。
道教育大釧路校の戸田竜也准教授が基調提案し、中央教育審議会の提言や文部科学省の資料を紹介。その上で「道東地区での課題を検討し、各地域でのローカルモデルを考えたい」と討議の方向性を示した。
このあと三人のシンポジストが提言。釧路市教委の小林久美スクールソーシャルワーカーは、福祉と教育の垣根や文化の違いを越えた専門職間の連携・協働の在り方を提起。「不登校児童生徒はほとんどが環境的要因を背負っているが、学校はその情報をもっていない」と、情報収集や連携の必要性を強調。
その上で「家庭環境は容易に変わらない。学校も行政もその子のために何ができるのか考えるべきで、相手の限界を知れば連携は容易にできる」と自らの実践を語った。
別海町在住で道公立高校スクールカウンセラーの今井一夫氏は、連携・協働できる専門職が限られている地域での学校とスクールカウンセラーとの関係の在り方を提起。「学校では、①遊ぶ②ぶらつく③声をかける④話を聞く―ことを通して、子どもの視点でアセスメントしている」と各学校で行っているボードカウンセラーの様子や学校図書館の環境づくりなどを紹介した。
本別高校の兒玉沙綾養護教諭は、校外の専門家と連携・協働する「校内チーム」の形成にかかわりながら「協働する大人」を学校内外に形成する方策を提起。
「保健室は生徒にとって安心できる場所」とした上で、「養護教諭の役割は、教職員をつなぐこと。生徒にかかわる情報を共有し、適切な機関へコーディネートしたり、助言を受けて学校としての支援方法の調整をしたりすること」とチーム学校の要になる必要性を強調した。
参加者からは、「連携するのに時間のかかる学校がある」「高校は地域の関係機関を知るまで時間がかかる」「学校は外部に頼ることも大切」など多くの意見が出された。
その中で、共育の森学園の間宮正幸理事長は「韓国では学校安全統合システムが構築され、チームで学校を動かすことが当たり前になっている」ことを紹介した。
最後に、戸田准教授が①チーム学校はまだ過渡期で財政的な裏付けがなく「人」に頼ることも大切②専門職が少ないメリットは顔の見える関係をつくりやすいことであり「集団守秘義務」についても議論が必要③「学校(大人)はどうあるべきなのか」という課題をぬきにチーム学校は語れない、とをまとめた。
このあと、研究発表では一般研究部門と実践事例検討部門に分かれ議論を深めた。
二日目の課題研究では、「地域でチーム学校をどうつくるか」をテーマに三人が報告。コミュニティ・スクールとして地域と連携した学校経営に取り組んでいる釧路市立釧路小学校の森敏隆校長、釧路市立阿寒湖小学校の谷口久士校長と、地域で多世代の居場所づくりや学校との連携を行っている北海道大学大学院の宮崎隆志教授がそれぞれの取組や今後の課題・展望について報告した。
最後に、庄井会長(道教育大学大学院教授)が「揺れる子どもの心を聴く~“いろりばた”の臨床教育学」と題して講演し、大会を締めくくった。
実行委員でシンポジウムの司会を務めた釧路市立中央小学校の中根照子教諭は「多くの参加があり内容の濃い大会になった。これを機にチーム学校の機運が高まることを願っている」と期待を寄せていた。
(関係団体 2018-07-20付)
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