道教委・佐藤嘉大教育長インタビュー 地域創生実現へ人材育成 子の姿共有し実効性ある取組
(道・道教委 2018-08-07付)

佐藤教育長インタビュー
道教委・佐藤嘉大教育長インタビュー

 子どもたちの学力・体力の向上など山積する諸課題に対し、道教委は、本道教育の一層の充実・発展のため、各種施策を展開している。本紙では、ことし六月に就任した佐藤嘉大教育長に、課題への対応、今後の展望について聞いた。佐藤教育長は「地域創生を実現していくため、人材育成を担う教育の役割が重要」と指摘。「道民と子どもの姿を共有して、実効性ある取組を推進していきたい」と述べた。

―就任に当たっての感想と抱負

 これまでの勤務経験の中で、教育行政に携わるのは今回が初めてですが、道民の皆さんの「教育」に対する期待と関心が大きいことは、これまでも強く感じてきたところであり、教育長となった今、その責任の重さを実感しています。

 北海道が人口減少等の課題を乗り越え、地域創生を実現していくためには、人材育成を担う教育の役割が重要であり、次代を担う子どもたちが様々な社会変化にも果敢に挑戦し、北海道の輝く未来を築き、幸福な人生を歩んでいくことができるよう、本道教育の充実・発展に力を尽くしていきたいと考えています。

―新教育長としてどのような役割を果たしていきたいか

 関西地方で発生した痛ましいいじめ事件を背景に、教育行政の責任体制の明確化や、地域の民意を代表する首長との連携強化等を図るため、平成二十六年に教育委員会制度の抜本的改革が行われ、総合教育会議の設置や大綱の策定に加え、教育委員長と教育長を一本化した「新教育長」が設置されることとなったと承知しています。

 私としても、本年三月まで総合政策部長として、知事と教育委員を構成員とする道総合教育会議の企画・運営に携わるほか、道教委と連携しながら、第二期道教育大綱の策定に取り組んできたところです。

 知事部局においては、政策の原点を「人づくり」として、各種施策に取り組んでいる中、そのさらに根本を支えているのは、人材育成を担う教育の役割であると考えており、今度は新教育長として、教育に関する課題の認識や、政策の方向性を知事部局と共有し、一層連携を深めながら、本道教育の充実・発展に力を尽くしていきたいと考えています。

―本道児童生徒の学力・体力の状況の認識とその対策について

 本道の子どもたちの学力の状況については、ここ数年の全国学力・学習状況調査の結果において、小・中学校ともに全国の平均正答率との差が縮まるとともに、正答数の少ない児童生徒の割合が減少するなど、改善の傾向がみられています。

 また、体力の状況についても、全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果において、各種目の得点を合計した体力合計点が小中・男女いずれも上昇し、多くの種目で全国との差が縮まるなど、同様に改善の傾向がみられています。

 道教委では、これまで、市町村教委とともに、それぞれの全国調査の結果を多角的な観点から分析し、子どもの学力や体力の状況、成果、課題、今後の具体的方策を明らかにして、学校、家庭、地域、行政が一体となった取組を進めてきました。

 本年度の全国学力・学習状況調査の結果については、各学校において分析結果に基づき具体的で分かりやすい改善方策を全教職員で組織的に展開することや、子どもが時間の使い方を効率的に考え、家庭学習に主体的に取り組むなどの望ましい生活習慣、継続的に運動に取り組むなどの運動習慣を身に付ける取組をPTAをはじめとする様々な機関等と連携して行うことは、今後も大変重要であると考えています。

 私としては、これからの時代を生きる子どもたちには、基礎的・基本的な知識・技能、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力、主体的に学習に取り組む態度など、社会で自立するために必要な学力や、人間の活動の源であり、健康の維持のほか、意欲や気力といった精神面の充実に大きくかかわる体力を確実に育んでいくことが大切であると考えており、今後も、広く道民の皆さんと将来の北海道を担う子どもの姿を共有して、実効性ある取組を推進していきたいと考えています。

―教職員の働き方改革の推進について

 教員が教科指導、生徒指導、部活動指導等を一体的に行う日本型教育において、学校教育に対する社会の期待は非常に大きいです。

 そのような中、二十八年度に実施した「教育職員の時間外勤務等にかかる実態調査」の結果では、前回調査(二十年度)や国の教員勤務実態調査と比較して、改善はみられたものの、一週間当たりの勤務時間が六十時間を超える者の割合が小学校で二割、中学校で四割、高校で三割を超えたほか、土日における「部活動指導」の時間が長いなどの課題が明らかとなり、教員の多忙化が解消されていない状況にあることが分かっています。

 こうしたことから、道教委では、教員が授業や授業準備などに集中し、健康で生き生きとやりがいをもって勤務しながら、学校教育の質を高めていくことができる環境を整備することが、喫緊の課題であると認識しており、本年三月に学校における働き方改革「北海道アクション・プラン」を策定し、部活動休養日等の完全実施に向けた取組を行うほか、スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー、特別支援教育支援員、部活動指導員等の専門スタッフの配置を推進し、市町村教委に対し、スクール・サポート・スタッフを含めた専門スタッフ等の配置を支援することや、長期休業期間中における「学校閉庁日」の設定などを行い、教職員の時間外勤務縮減に努めているところです。

 また、部活動については、学校教育が目指す資質・能力の育成に資するものであり、道内の各学校で熱心に取り組まれている一方で、部活動を担当する教員からは「休養日を設けないと、生徒の気力・体力が回復しない」「学校の小規模化による教員の減少に伴い、顧問の負担が増加している」などの意見もあることから、部活動の過熱化による生徒の心身への悪影響や、教員の負担増を招かぬよう、本年度中に策定する部活動の在り方に関する方針に、部活動休養日の完全実施などを盛り込んで、教員の負担軽減に取り組んでいきます。

 今後は、できるだけ多くの学校を訪問して、教職員の教育活動状況や校長の学校経営状況などを把握するとともに、市町村教委や校長会、PTAの皆さんなど、多くの方々との意見交換を通じ、課題や危機意識を共有する中で、連携を図ることとしたいと考えています。

 次代を担う子どもたちのため、保護者や地域の方々の理解と協力をいただきながら、道教委の総力を結集して、学校、家庭、地域、行政が一体となった学校における働き方改革の推進に力を尽くしていきます。

―北海道教育の将来展望について

 北海道教育のあるべき姿としては、子どもたち一人ひとりが、社会の変化に主体的に向き合いながら、自らの可能性を発揮し、未来を切り拓く力を身につけることができるよう、教育の機会均等と教育水準の維持向上を実現することと考えています。

 そのためには、「児童生徒の学力・体力の向上」「望ましい生活習慣の定着」「いじめや不登校への対応」「安全・安心な教育環境の整備」に加え、「グローバル化や高度情報化の進展などの時代の変化に対応した教育の充実」「教員の働き方改革の推進」など、様々な教育課題を解決していかなければならないと認識しています。

 道教委としては、これらの課題の解決と、本道教育のさらなる充実・発展に向けて、各般の施策の一層の充実に努めるとともに、学校・家庭・地域・行政との緊密な連携を図りながら、オール北海道で取組を進めていきたいと考えているので、道民の皆さんの理解と協力をお願いします。

さとう・よしひろ

 平成元年北海学園大学法学部を卒業。24年道総務部危機対策局原子力安全対策担当局長、25年総務部人事局長、27年総務部危機管理監を経て、29年から総合政策部長を務めた。

 昭和32年12月25日生まれ、60歳。清水町出身。

(道・道教委 2018-08-07付)

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