教職員の協力を高める学校づくり〈№25〉 個人面談は心理的危機回避を いじめ問題の予防と対応(3)
(教職員の協力を高める学校づくり 2018-10-10付)

高める学校づくり表
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 個人面談では、児童生徒がいじめられているのにもかかわらず状況を教師に話してくれない場合があります。重要なことは、教師へ児童生徒が心を開き話してくれる関係にあるかどうかです。

 学校では、まず担任が聞き取りをすべきであるとの不文律がありますが、担任との関係が良好ではない場合はどうなるでしょうか。いじめられた児童生徒の側に立つならば、教師の妙なプライドにこだわることなく、その児童生徒が相談しやすい心理的距離の近い教師が面談に応じるべきです。

 また、児童生徒は個人面談で、図表に示すような心理的危機にさいなまれることがあります。このような心理的危機に及んだ場合は、教師に近づかなくなり、状況を聞いても曖昧な返答に終始したり、言葉少なく「大丈夫です」と述べたり、場合によっては不信感を募らせ、失望感と憎悪を増幅させ不登校になったりする場合もあります。

 さらに個人面談を行う場合、いつ、どこで、誰になど、事実関係を中心とした質問攻めをしないことです。大切なのは、事実ではなく、悔しい、苦しいなどの憤りを聞き、つらい気持ちを吐き出させるようにすることです。そのためには先ず教師が自己開示し、児童生徒が教師を信頼し安心して話ができるようにすることです。

 言葉としては、「いつも一緒にいるよ」「君を大切に思っているよ」「君を見守っているよ」などですが、決して言葉だけにならないよう、辛さをくみ取るように聴くようにします。間違っても、正論や持論を語り、「気にするな」「大丈夫だよ」「勇気をもて」など安易で無責任な言葉は慎まなければなりません。

 その上で、児童生徒が「本当は学校に行きたくなかった」「○○されてつらかった」「あのときはみんなの前だから、笑うしかなかったけれど、本当は悲しかった」と話してくれたら、「どうして学校に来たくなかったの」「どうつらかったの」「どう悲しかったの」と聞くのではなく「つらかったんだね」「笑うしかなかったけれど、本当は悲しかったんだね」と気持ちが現れている言葉に着目し、リピートしながら聞くようにします。

 やがて、児童生徒は自然に、聞きたい事実を話してくれるようになります。このように、個人面談で最優先すべきことは、心理的危機を回避するためにも、つらい気持ちを語ることができるよう時間をかけることです。

 また追い詰められている子ほど、言葉が端的になりきつい表現になることがありますが、言葉や態度だけにとらわれるのではなく、その裏にある「大切にしてほしい」「認めてほしい」「大事にしてほしい」というメッセージや葛藤を読み取ることが教師に求められます。

(北海道医療大学非常勤講師・石垣則昭)

(教職員の協力を高める学校づくり 2018-10-10付)

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