教職員の協力を高める学校づくり〈№27〉 心の内を話してくれる教育相談 いじめ問題の予防と対応(5)
(教職員の協力を高める学校づくり 2018-11-09付)

 残念ながら、いじめ問題が発生した市町村や学校の相談を受けるたびに、対応に疑問を感じ、厳しい助言をせざるを得ないことがあります。

 特に、児童生徒のいじめ問題が対応の不適切さから二次障害的に保護者対学校の対立問題となるなど、いじめをした子の保護者対いじめを受けた保護者対学校、管理職と教職員の対立となった事例を目にします。

 このような対立は、いじめられた児童生徒への初期対応の不十分さとともに、児童生徒の安心や安全を第一に対応すべきことを大人の都合や事情で対応してしまうことに起因しています。

 目の前に心が弱り、不安に陥っている児童生徒へ学校は何を最優先しなければならないのでしょうか。「問題処理のため憔悴しきっている、いじめられた児童生徒への無理な聞き取りですか」「形式的な事後処理ですか」、それとも「心を癒やし、安心や安全を付与することですか」と、私は猛省を促す意味で問います。

 また、重大ないじめ事案が発生してしまった学校に招へいされて出向くと、「生徒指導部に対応を任せている」「いじめは学級の問題なので担任に対応させている」「今回のいじめは、部活動の問題なので部の顧問に対応を任せている」など、まるで人ごとのような言葉が管理職や教職員から返ってきます。

 具体的な話を聞くと、「いじめられた本人が言うような様子はみられなかった」「いじめられた児童生徒にも問題がある」「大したことではないと思っていた」など、認識に欠ける言葉を聞かされます。

 このような学校の体制や認識では、児童生徒がいじめられたことを打ち明けたとしても、いじめられた児童生徒の側に立った適切な対応を欠くことになり、保護者の怒りを増幅させ、対立を深めてしまいます。

 その根底には、学校の危機管理意識の不足、教育活動への慣れがあり、それらが問題への認識を鈍らせ、「大丈夫だろう」「なんとかなるだろう」という安易さに流れてしまっていることが最大の理由に挙げられます。

 反面、いじめ問題が発生しても速やかで適切な対応を図ることができる学校も多くあります。その学校の話を聞くと、危機管理意識が高く、日常的に学年内や学校内の情報が共有化され、チームで対応することができており、危機意識を保つための理論や事例研修を計画的に行っています。

 さらに、いじめが起こると、行政関係者は実態の把握と対応についての指導助言をしますが、教育相談の回数を年間二回から三回にすること、いじめのアンケートを学期ごとに行うこと、アンケートの内容の結果を報告することなど形式的な改善を求めることがよくみられます。

 私は、教育相談やアンケートの回数を増やすことは否定しません。しかし、回数を増やしても内容が充実したものでなければ増やす意味はありません。

 児童生徒理解を深めるため、どのようなアンケートの内容にすべきか、心の内にあることを話してくれるような教育相談をどのようにすべきかなど、内容の充実を図るための指導や助言が必要ではないでしょうか。

 もし、指導や助言ができかねるのであるならば、専門性をもった人に依頼して対応を図ることが教育現場ファーストであり、行政の役割だと理解しています。

(北海道医療大学非常勤講師・石垣則昭)

(教職員の協力を高める学校づくり 2018-11-09付)

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