教職員の協力を高める学校づくり〈No.31〉 不登校の増加に3つの山 学校、家庭の役割重要 (教職員の協力を高める学校づくり 2019-11-26付)
「不登校対応」について記述する前に、国や北海道での不登校がどのような状況にあるかを記載いたします。
文部科学省の平成30年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の公表(令和元年10月17日)によると、全国の不登校(国立、公立,私立で年間の欠席日数30日以上)は小学校では144人に1人、中学校では27人に1人、小・中学校を合わせると59人に1人となり、共に調査を開始した平成3年度以降最多となり、29年度と比較し激増しています。
北海道の(国立、公立、私立を含む)小学校では、不登校の総数が1542人で、うち90日以上欠席をしている児童は842人で、1000人当たりの不登校数は6・3人、中学校(国立、公立、私立を含む)では4953人が不登校となり、90日以上欠席をしている生徒は3351人で、1000人当たりの不登校数は38・7人となっています。
さらに、北海道と政令指定都市である札幌市を含めると小学校が2170人、中学校が6960人となっています。
また、北海道の公立高校では、不登校の生徒の総数が969人であり、小学校、中学校共に児童生徒人数が減少している中にもかかわらず増加傾向にあります。
全国(国立、公立、私立、政令指定都市立を含む)の不登校の学年別推移をみてみると、不登校の増加には3つの山があることが理解できます。
小学校では、3年生、4年生以降学年が進むにつれて不登校数が増加しています。小学校の中学年のころは、親や教師と一緒にいるよりも友人を選び、つくることを大切にし始める時期で「ギャングエイジ」とも言われ、仲間づくりに苦労し友人関係のトラブルに巻き込まれやすい時期でもあります。
また、「中1ギャップ」と言われるように、小学校6年生から中学校の入学時で親しい友人が学級にいないなど集団への不安傾向が高くなり、不登校となるケースが多くみられます。
高校(全日制、定時制を含む)では、1年生の不登校が他学年に比べ最も多く、入学時の不適応が主な課題として挙げられ、北海道でも小・中学校共に同様の傾向がみられます。
全国の不登校の状況を「学校にかかる状況」「家庭にかかる状況」「該当なし」に分類すると、小学校(国立、公立、私立を含む)では、「学校にかかる状況」が全体の30・8%で、「家庭にかかる状況」が55・5%、「該当なし」が13・7%となっています。
中学校(国立、公立、私立を含む)では、「学校にかかる状況」が全体の55・7%で、「家庭にかかる状況」が30・9%、「該当なし」が13・4%となっています。
高校の全日制(国立、公立、私立を含む)では、「学校にかかる状況」が全体の60・2%で、「家庭にかかる状況」が15・0%、「該当なし」が24・8%となっており、定時制(国立、公立、私立を含む)では、「学校にかかる状況」が全体の42・8%で、「家庭にかかる状況」が16・4%、「該当なし」が40・8%となっています。
この結果、不登校の要因として「学校にかかる状況」(いじめ、いじめを除く友人関係をめぐる問題、教職員との関係をめぐる問題、学業の不振、進路にかかる不安、クラブ活動・部活動への不適応、学校の決まり等をめぐる問題、入学・転編入学・進級時の不適応)が全不登校中、小学校で3割、中学校では5・5割、全日制の高校では6割、定時制の高校では4割を超えています。さらに「家庭にかかる状況」では、小学校は5・5割、中学校は3割を超え、学校と同様に家庭の役割が重要であることが理解できます。
(北海道医療大学非常勤講師・石垣則昭)
《引用資料》
平成30年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」について(令和元年10月17日文部科学省初等中等教育局児童生徒課)
(教職員の協力を高める学校づくり 2019-11-26付)
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