教職員の協力を高める学校づくり〈№28〉 先に教師の対応改善検討を 学級がうまく機能しない状況(教職員の協力を高める学校づくり 2018-11-27付)
1999年、国立教育研究所(国立教育政策研究所の前身)は、いわゆる学級崩壊の状態を「学級がうまく機能しない状況」と定義づけました。内容は「子どもたちが教室内で勝手な行動をして、教師の指導に従わず授業が成立しないなど、集団教育という学校の機能が成立しない状態が一定期間継続し、学級担任の手では問題解決できない状態に立ち至っている場合」としています。
文部科学省は学級崩壊という表現はセンセーショナルであるため、「学級がうまく機能しない状況」と表現しています。全国の公立学校約二万四千校、学級数が二十七万学級とすると、そのうち一割が「学級がうまく機能しない状況」の危機にあると言われています。
また、小・中学校ばかりではなく、高校や大学の学級で授業がうまく機能しない状況が全国的に問題視されています。教師は同じ指導をしているのに、素直に従う子どもが存在している一方で、指導に従わない注意散漫や行動優先の子どもがいるため、子どもや家庭などに原因があると思いがちになります。
そのため、発達障がいの傾向にある子どもの存在や、経済苦により子どもへの教育が不十分な家庭があること、同じ学級に子どもがいる保護者同士の不仲、何かと学校や学級にクレームをつける保護者の存在、地域が教育に協力的でないことなど、「学級がうまく機能しない状況」の理由が子どもや保護者、地域にあるかのような説明がなされることが多くみられます。
子どもたちに直接かかわっている教師の対応改善を先んじて検討することよりも、子どもの資質や保護者、地域を第一に問題視するのは、問題の本質を遠ざけることであり、子どもたちのための教育を進めていることに反することになります。
さらに残念なことに、「自分の指導は間違っていない」「たまたま、そういう子どもたちに出くわしただけ」「どうせ来年の四月には卒業するから」など、本音とも思える声も聞こえてきます。
「学級がうまく機能しない状況」の研究を進めている教育心理学者が、平成十五年から十七年にかけて、国内で「学級がうまく機能しない状況」を起こした学級四百五十七校の小学生と中学生への聞き取りの結果、つぎのような内容が共通していると論文発表しました。
① 僕たちを学級の一員のとして扱ってほしい
② 自分たちの言い分を聞いてほしい
③ 僕たちをだめ呼ばわりしないでほしい
④ 勉強が分かるように教えてほしい
⑤ 何をしたらよいのか、はっきり指示してほしい
この発表から、「教師の指示に従わない子どもたちの話は聞く耳をもたない」「話を聞いても自分勝手な言い分しか言わないのだから話を聞いても無駄」と思われるかもしれませんが、上記の項目をみるにつけ、子どもたちとの関係を反省し、あらためるべきメッセージやヒントが隠されているような気がします。
そもそも教師は、「学級がうまく機能しない状況」の問題を自分以外の問題としても、何も変わりません。変わるどころか、「学級がうまく機能しない状況」を繰り返してしまうかもしれませんし、子どもたちと向き合うことがトラウマになってしまうこともあります。
次回から二回続けて、「学級がうまく機能しない状況」の予防、改善のためには、どう対応すべきかを記載します。
(北海道医療大学非常勤講師・石垣則昭)
(教職員の協力を高める学校づくり 2018-11-27付)
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