教職員の協力を高める学校づくり〈№29〉 教職員同士 お互い支えに 学級がうまく機能しない状況への対応(教職員の協力を高める学校づくり 2018-12-12付)
「学級がうまく機能しない状況」のためばかりではありませんが、校長や副校長、教頭は外勤や出張時以外は授業参観を日課にしてはどうでしょうか。学校が学校として評価され、信頼されるのは、児童生徒にとって「分かる授業」を実践することです。その責任者が校長、副校長であり教頭です。
ある校長先生が「授業は教頭に任せているから」と述べていましたが、多忙な教頭だけに授業参観をさせるのではなく、自らの目で授業の状況を把握することが学校の責任者であり、「学級がうまく機能しない状況」の予防や早期発見につながります。
また、授業参観後は否定的に授業をとらえるのではなく、肯定的に「○○の場面は、こうするともっと良い授業になるよ」などアドバイスをしたいものです。
学年主任や他の教師から、「○○先生の授業が騒がしい」「○○先生の授業では子どもが立ち歩いているようだ」との情報を得ると、はじめて教頭や副校長を中心に教師から聞き取りを行い、授業参観に出向きます。
しかし、この時点ではすでに「学級がうまく機能しない状況」はかなり進行しています。管理職など学校リーダーから聞き取りをされた教師は、「大丈夫です。心配な子が数人いるだけです」「ちょっと騒がしいときがありますが、何とかなります」などと答える場合があります。それは、自分が指導力に欠けていると思われたくないという意識の現れであり、状況に対する認識不足から来る発言と理解できます。
このような抽象的な発言がなされたならば、「先生を責めているわけではない。今の状況を改善するため一緒に考えていこう」と述べ、具体的にアドバイスすることが望まれます。
しかし、学校リーダーの中には一方的に叱咤し、上から目線で指導する人がいます。これでは何も解決しないばかりか、担当教職員を萎縮させ、反発心をもたせてしまいます。
さらに気をつけなければならないのは、学級や授業がうまくいかない状況が続いたり、学校のリーダーから学級や授業づくりをアドバイスされた教師の中には、児童生徒に対して「強い指導ありき」と考え、指示に従わない子どもたちを大声で叱り、怒鳴り、威嚇するなど、力でねじ伏せようとします。
危険なのは、このときの感情にまかせた対応や発言が子どもたちとの対立を余計に深め、保護者からの強いクレームの対象となることがあります。また、うまくいかない状況が続くと強い憔悴感と疎外感をもち、メンタルに支障を来してしまうこともあります。
大切なのは、教職員同士が互いに支えになることです。学校リーダーは日常から、教職員同士のコミュニケーションが取れているか、孤立している教職員はいないだろうかなどの状況を把握し、いつでも相談に乗り、手を差し伸べることができる職場環境を整えることが「学級がうまく機能しない状況」を起こさない最大の未然防止策です。
さらに、よかれと思って行う学校リーダーのアドバイスですが、「子どもの側に立ってしっかり対応しなさい」「子どもたちには、ちゃんと指導しなさい」などの抽象的な内容では、アドバイスを受けた教職員は何をどうして良いか戸惑ってしまいます。
子どもの側に立つとはどういうことか、どうすることがしっかり対応することなのかを、具体的に説明してこそ本当の意味でのアドバイスと言えます。
(北海道医療大学非常勤講師・石垣則昭)
(教職員の協力を高める学校づくり 2018-12-12付)
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