教職員の協力を高める学校づくり〈No.34〉 急性型と慢性型など 不登校を分類し状況理解(教職員の協力を高める学校づくり 2020-01-17付)
学校基本調査の結果を「本人の問題に起因」「学校生活に起因」「家庭生活に起因」、さらに、不登校がどのように始まり進行したのかを「急性型」と「慢性型」に分類し不登校をとらえると不登校の状況が理解しやすくなります。(『続 上手な登校刺激の与え方』小澤美代子著の分類を一部改変)
「本人の問題に起因」タイプは、人の言葉や態度、集団の雰囲気に敏感で、集団活動をすることに圧迫を感じ、強い疑念や不安感を抱え次第に集団生活を送ることができなくなり不登校に陥る場合です。また、音や光に敏感で、学校生活を送ることに耐えられないなどの状況に陥ることがあります。さらに思春期となり、性格や生育上問題がなく成長してきた子が、あることにこだわりが強くなり、学校のきまりなどに矛盾を感じ不登校になる場合もあります。
「学校生活に起因」のタイプは、人間関係を築くことやコミュニケーションを図ることが苦手なため、学校生活を楽しむことができなく、不登校につながるタイプであったり、学級崩壊を目の当たりにし、いじめに遭ったり、自身が当事者でなくても集団の荒れに耐えられなくなり不登校となる場合です。
また、学習に対する理解が十分ではなく、次第に授業が負担となり劣等感を感じ、学校生活そのものに不適応感をもち不登校となる場合もあります。さらに勉強やスポーツに自信をもっていた子が学習や試合結果により挫折を感じ、不登校に陥る場合もあり、教師からの強い叱責や指導が原因となる場合もあります。
「家庭生活に起因」のタイプは、親の死別や離婚などに心を痛め、不登校につながる場合や、保護者の養育態度に問題があり適切な家庭教育がなされず、学校だけでは対応が困難な虐待や貧困などの福祉的要因も含まれます。
「急性型」は今まで不適応もなく過ごしてきた子が、何かのきっかけで不適応の状態となる場合です。特徴は急激なダメージによりエネルギーが低下しているので休息が必要な場合がみられ、対応には「問題解決的」「関係調整的」視点が必要となります。このタイプは本来的にはコミュニケーション力などの対人関係を築く力や学習に対する劣等感をもっていないので、初期対応を適切に行い、関係性を保ちながら登校することに支障となっている課題を解決することで早期の回復が可能となります。
「慢性型」は本人に課題があり、特別なきっかけがなくても徐々に不適応になるケースです。日ごろから休みがちの子が、きっかけが見当たらないのに休み始め不登校になる場合です。子ども自身が過敏さや体力の弱さをもち、学習の遅滞や対人関係をつくり出す力がなく、家庭の養育が十分でない場合もみられます。
さらに慢性型は急性型と違い、急激なダメージを負っているわけではありませんので、担任や級友の負担にならない範囲で迎えにいくことや家庭訪問で学校の様子を知らせ、学習プリントを渡すなども有効であり、現状を少しずつ改善できるよう継続的なかかわりが必要となるタイプです。
次回は不登校を「本人の問題に起因」「学校生活に起因」「家庭生活に起因」、さらに、「急性型」と「慢性型」と組み合わせた6つのタイプの分類を説明いたします。
(北海道医療大学非常勤講師・石垣則昭)
引用・参考文献
『続 上手な登校刺激の与え方』 小澤美代子著 2006 本の森出版
『傷つきへの心理的援助』 前川あさ美著 2004 ぎょうせい
『子どもの認知行動療法』 児童心理増刊 2010 金子書房
(教職員の協力を高める学校づくり 2020-01-17付)
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