教職員の協力を高める学校づくり〈No.37〉 〝本人を守る〟姿勢で 不登校の段階的状況と対応(教職員の協力を高める学校づくり 2020-02-27付)
不登校の要因やきっかけは様々ですが、回復まで同じような経過をたどります。今回と次回は、不登校の前兆期さらに不登校の段階を初期から中期、後期(回復期)まで4つに分け主な対応を記述します(「続 上手な登校刺激の与え方」小澤美代子著の分類を一部改変)。
▼前兆期
前兆期は孤立を防ぐことを目的とします。
▽前兆期にみられる様子
①元気がなくなり、皆で活動することから遠ざかる
②宿題や忘れ物が増え、学習意欲も低下する
③1人でいることが多く、保健室で休むことがよくある
▽主な対応
①「体調はどう」など気軽に声かけをし、皆で活動することを誘う
②「心配なことがあったらいつでも相談に乗るよ」とメッセージを伝える
▼初期(混乱期)
初期は強い不安や混乱がみられ、安定させることを目的に対応します。
▽初期にみられる様子
①腹痛、頭痛、発熱などの身体症状がみられる
②過食、食事を取らない、昼夜逆転など生活に乱れがある
③些細なことでイライラし、物や人にあたるなど攻撃性がある
④自分の部屋が乱雑になっても一向に気にしない
⑤気持ちが塞ぎ込み、急に落ち込んだりする
⑥外出したがらず、学校の話題に強い拒否感をもつ
▽主な対応
①つらさに共感し、身の回りの世話を可能な範囲で行う
②本人に対して干渉し強制や説諭、非難するなどの心理的な刺激を控える
③家でゆっくり食事と睡眠ができるよう配慮する
④友人からの登校の誘いや訪問、電話など本人が嫌がる場合は控える
⑤学校は保護者とともに「本人を守る」姿勢をもつ
▼中期(膠着期)
中期は生活に活力と意欲をもたせることを目的に対応します。
▽中期にみられる様子
①気持ちや考えていることを言葉に表すことができる
②担任と会うことができ、ゲームなどで友人と遊ぶことができる
③不登校のきっかけを聞いても、混乱することなくある程度話すことができる
④家族への気遣いや感謝の言葉を述べることができる
⑤部屋を整理整頓し、身の回りのことを自分からできるようになる
⑥買い物や散歩などに出向き、適応教室などに行くことができる
▽主な対応
①わずかなことでも、認め褒めるようにする
②本人の不登校の様々な話に時間をかけ聞くようにする
③本人と一緒に買い物や散歩などの活動を行う
④再登校の期待を過度にもつことなく、ゆとりをもって見守る
⑤学校生活や学習など再登校のための見通しを話し合う
不登校の初期には保護者が本人に「どうして、学校に行かないの」など感情的に本人を追い詰めたりすることがあります。
初期の家庭訪問では、本人に会うことを目的とするのではなく、保護者の感情を「○○さんのお気持ちはよく理解できます」「私も同じような気持ちです」と同調しながら、不登校の前後の家庭での状況を聞くようにします。さらに「規則正しい生活をさせてください」などのもっともらしい発言は、保護者を心理的に追い込むことになります。対応のアドバイスよりも現状についての理解を深めるようにし、話をよく聴くことが望まれます。
不登校の中期は「外に出ることができるならば、学校に来たら」と言いがちになりますが、再登校に向けエネルギーを蓄えている時期と考え、無理な要求をしないようにします。担任や保護者の再登校の促しが、学校に行きたくてもいけない自分に劣等感を感じ、膠着状態が長く続いてしまうこともあります。
(北海道医療大学非常勤講師・石垣則昭)
引用・参考文献
「続 上手な登校刺激の与え方」 小澤美代子著 2006 本の森出版
「傷つきへの心理的援助」 前川あさ美著 2004 ぎょうせい
「子どもの認知行動療法」 児童心理増刊 2010 金子書房
(教職員の協力を高める学校づくり 2020-02-27付)
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