教職員の協力を高める学校づくり〈No.42〉 〝安定〟から〝励まし〟へ 場面ごとの不登校対応
(教職員の協力を高める学校づくり 2020-05-21付)

 前回に引き続き、今回は状況別の対応を説明します。

(1)不登校の児童生徒の担任となった場合

 前担任や教科担任、養護教諭、部活動の顧問などから、きっかけは何か(友人関係、学力の状況、家庭の状況)、性格や得意、不得意なこと、さらにいつごろ(月別に欠席の状況を把握)から、どのように欠席が続いているのか(突然なのか、休みがちなのか)、また、どのような対応を図り、どのような経過をたどり、現状はどうなのか情報を得ます。

 数年、不登校が続いている場合は関係機関(保護者や本人の了解を得て、通院している心療内科、カウンセラーを含む)から情報を得ます。数ヵ月前に不登校となった保護者との面談では、毎日の生活がどのように混乱しているのか、また、どう安定しているのか具体的に聞くようにします。

 一般に連載の第37回、第38回で説明しましたように、初期(混乱期)は安定させることを第一に、保護者との連絡を中心に対応します。気持ちが安定し睡眠時間も十分で食事も取れているのであれば直接会い、スモールステップで登校刺激を与えることができますが、初めての面会では直接的な登校刺激は避け、本人の様子を理解するよう努めます。

 また、家庭訪問で予告した時刻に会うことができ、明るく話せる場合は、登校の可能性がありますが、「どの段階から始めるかな」と具体的に選択肢を提示し、本人の意思に添い励ましを与えます。

(2)家庭訪問で気を付けたいこと

 子どもが学校に行かなくなると保護者もショックを受け、担任や学校を非難するなど感情をぶつける場合があります。わが子の不登校に対してやるせない気持ちをぶつけていると理解しながら聞くようにしますが、情報として知るべき事実は聞き遂げるようにします。

 また、「この状況をどうしたらよいと思いますか」「学校に言いたいことは何ですか」など保護者に問うのではなく、学校で得た情報をもとに再登校の方針と進め方を説明し、見通しと安心感をもたせるようにします。

 さらに、家庭訪問には目的が必要です。プリントの投函を繰り返すような義務的な対応をしても再登校への道筋はみえてきません。

 上記で説明しましたように、初期(混乱期)では「安定と安心」を心がけ、無理に会い直接的な登校刺激は与えないようにします。混乱が収まらなければ、つぎの段階へ進むことはできないからです。

 中期(膠着期)では、「元気」を目的に「笑顔が多くなったね。先生うれしいよ」「毎日家の手伝いをしてるの。立派な生活ぶりだね」など励ましや勇気づけを与えます。

 後期(試行・回復期)では第40回の登校刺激のスモールステップで説明しましたように、本人の意思を確認しながら段階的に再登校を促したり、学校行事への参加を具体的に提案したりします。

 不登校が長期化し、家庭訪問の回数が増すと保護者も負担に感じることがあります。この場合、不登校の解消よりも、学校の明るい話題を提供し気持ちを学校につなぐようにします。

 また、膠着状態がしばらく続いたときは、今までのかかわりを見直し、担任ができること、保護者でなければできないことを整理します。

 家庭訪問は再登校を促すために保護者の信頼を得ることが重要ですが、信頼の基本は保護者の話をじっくり聴き、願いに寄り添い誠意ある対応を取ることです。

(北海道文教大学人間科学部子ども発達学科教授・石垣則昭)

引用・参考文献

「上手な登校刺激の与え方」 小澤美代子著 2003 ほんの森出版

(教職員の協力を高める学校づくり 2020-05-21付)

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