教職員の協力を高める学校づくり〈No.45〉 自身振り返る時間を そして子どもたちはきずつく 1(教職員の協力を高める学校づくり 2020-07-15付)
教師の優越感と劣等感
今回から、学校事情に接してきた経験をもとに、「そして子どもたちはきずつく」をテーマに掲載いたします。
学校は未来を担う子どもたちを育む場であるはずですが、教職員の言動によって子どもたちがきずついている状況を見聞きします。
「何度言っても分からないのであれば、よけい厳しく指導するべきだ」(何度言っても改善できないのであれば、違うかかわりを見いださなければならないはずですが…)、「甘い顔をするから、子どもはダメなんだ」(甘いとは子どもたちの理解にかなうよう指導するのでなく、一方的に叱りつけることを意味しているように感じますが…)、「最近だらけているから、この辺で締め直さないとダメだ」(子どもたちを見下している印象を受けますが…)などの発言を聞き、その都度お話をさせていただいています。
また、特別支援学級の子どもに教師が、ほかの子どもが行き来する廊下で厳しい言葉を浴びせている場面を目にしました。聞けば「今まで中学校勤務が長かったので…」との返答でした。
このような、人格を否定する指導に子どもたちはどう感じているのでしょうか。コミュニケーションは双方向の関係で成り立ちます。
一方的で高圧的な指導を受けた子どもはその場をやり過ごしても、どのような感情が残るのかお分かりいただけると思います。また、その機会が繰り返されると、教師や学校に対していら立ちや怒りとともに、劣等感情(自分が他人より劣っているいう感情)を強くもってしまいます。
教師からは「それは、子どもに問題があるからいたしかたがない」「教師は好きで注意をしているのではない」などの言い訳が聞こえてきますが、それは過去の経験に裏打ちされただけの指導であり、子どもの気持ちを大切にせず、状況に応じた適切な指導法をもち得ていない対応と理解しています。
また、甘い厳しいという安直な指導では、子どもたちはきずついていると言わざるを得ません。
【教師の優越感と劣等感】
人はとかく「比較の罠」(自分と他人を無意識に比較すること)に陥り、優越感(自分は他人よりも優れているという感情)、劣等感(自分は他人より劣っているという感情)に振り回されがちです。
優越感と劣等感は表裏一体であり、「子どもたちにはなめられたくない」「優れた教師と思われたい」「ほかからの指導、指摘は受けたくない」「間違いを認めたくない」などの感情は、ときとして行き過ぎた子どもへの支配となります。
支配の背景には、子どもたちは教師より年下であり多様な経験が不足していることを理由に、教師自身の余裕と自信のなさがそうさせています。
子どもたちの状況に見合う多様な指導法を学び、身に付けなければ不幸になるのは目の前の子どもたちであり、学校や教師嫌いを増幅させる結果となります。
一日一回、「きょうの自分はどうだったろうか」「○○君への対応は適切であったろうか」など、子どもたちの立場に立ち、振り返る時間を設けていただければ、あすの自分がみえてきます。
(北海道文教大学人間科学部子ども発達学科教授・石垣則昭)
(教職員の協力を高める学校づくり 2020-07-15付)
その他の記事( 教職員の協力を高める学校づくり)
教職員の協力を高める学校づくり〈No.50〉 人は誰に相談をするのか 職員室の心理学 1
毎日の学習指導や生徒指導など、様々な課題を抱えながら教育活動を進められていると存じます。また、職員間の同僚性が高く、相談機能が発揮されているならば、様々な問題の解決に向け歩むことができます...(2020-09-24) 全て読む
教職員の協力を高める学校づくり〈No.49〉 毅然とした態度が必要 そして子どもたちはきずつく 5
【学校の役割とは】 学校は、学習と人間関係を学ぶ場です。しかし、人間関係は、どちらかというと子どもたち任せで、連絡を伝達し、結果による注意、指導するだけの教師を見聞きします。 学習に...(2020-09-07) 全て読む
教職員の協力を高める学校づくり〈No.48〉 満足度高める授業の工夫を そして子どもたちはきずつく 4
【生徒指導の機能とは】 研修会の折、授業と生徒指導は別問題であると発言した先生がいました。 別問題とする考えをお話しくださいと問うと、生徒指導とは問題行動に対応することであり、授業は...(2020-08-26) 全て読む
教職員の協力を高める学校づくり〈No.47〉 認め合う機会と場構築 そして子どもたちはきずつく 3
【エピソードで考える学校づくり】 ある中学校のエピソードを紹介します。 その学校は、校舎内外に子どもたちが捨てたごみが日常的に散乱していました。当然、ごみの散乱だけではなく授業中も落...(2020-08-12) 全て読む
教職員の協力を高める学校づくり〈No.46〉 子の側に立つ同調行動を そして子どもたちはきずつく2
【職場の同調行動】 同調行動とは、職場や個人の期待に沿って同じような行動を取ることを言います。 同調行動が子どもたちの側に立った職場であれば、どの教師も同じように適切な対応を図ろうと...(2020-07-29) 全て読む
教職員の協力を高める学校づくり〈No.44〉 日ごろから学級づくり大切に 不登校対応の事例
今回は、前回に引き続き不登校対応の実際を解説します。 【本人、学校生活に起因する慢性型の事例】 D子は普通科高校に通学する女子生徒です。成績は中程度で部活動や学校行事などに積極的に参...(2020-06-26) 全て読む
教職員の協力を高める学校づくり〈No.43〉 人間関係づくりの輪を 不登校対応の事例
今回と次回は不登校対応の実際を解説します。 【学校生活に起因する慢性型の事例】 C男は中学校1年生です。運動と勉強が苦手で、バスケットやバレーボールのゲームではボールを手にすることは...(2020-06-12) 全て読む
教職員の協力を高める学校づくり〈No.42〉 〝安定〟から〝励まし〟へ 場面ごとの不登校対応
前回に引き続き、今回は状況別の対応を説明します。 (1)不登校の児童生徒の担任となった場合 前担任や教科担任、養護教諭、部活動の顧問などから、きっかけは何か(友人関係、学力の状況、家...(2020-05-21) 全て読む
教職員の協力を高める学校づくり〈No.41〉 共感し受け止める 場面ごとの不登校対応
今回と次回は、状況別の不登校対応を説明します。 (1)急に学校を欠席しはじめた場合 学習成績もよく、学級役員を自ら引き受けるなど物事に前向きな児童生徒が、突然学校に足が向かず不登校に...(2020-04-27) 全て読む
教職員の協力を高める学校づくり〈No.40〉 目標区切り段階的に 登校刺激の進め方
今回は、登校刺激の進め方を説明します。 登校刺激を与えなければ不登校は改善しません。しかし、与える内容と時期が本人に見合うかどうかが再登校のきっかけになる反面、かえって不登校を長引かせ...(2020-04-20) 全て読む