教職員の協力を高める学校づくり〈No.50〉 人は誰に相談をするのか 職員室の心理学 1(教職員の協力を高める学校づくり 2020-09-24付)
毎日の学習指導や生徒指導など、様々な課題を抱えながら教育活動を進められていると存じます。また、職員間の同僚性が高く、相談機能が発揮されているならば、様々な問題の解決に向け歩むことができます。職員室の心理学の第1回目は、相談とは何か、相談の受ける意味について説明します。
相談者は一般に「自分に同意してくれる相手を自然に選んでいる」といわれています。人は自分を理解してくれる人を相談者として選び、逆に自分の考えに反対する人を選ばない傾向にあります。
また、相談者は悩んでいるといっても、一定の結論や考え方をもって相談に臨みます。つまり、相談者は自分なりの解決策を職場の方に話すことによって、なりたい自分を確認し安心を得ること、それを相手に確かめてもらうことを目的としています。これを社会心理学では「自己確認過程」といいます。こう考えると、相談に来た同僚にどう接するのがよいのか理解できます。
相談者は、あなたに同意と安定を求めていると理解しながら、傾聴することです。留意したいのは、席に着くなり正論や説教調では相談者の失望につながりやすく、心の安定を図ることができません。特に、若年層の教職員には努めて、異論があったとしても受け止めるようにします。時間を置き、つぎに「どうしたら解決できるのか、自分の考えを述べてください」と問い、相談者の発言にうなずき受け止めるようにします。
その後、相談者の考えに「私もそう考えます」と同意し、「それは違います」などと否定するのではなく、「○○さんの考えに私がつけ足すことができるとすれば、○○のようなことが言えます。どうですか」と提案します。
また、物事を否定的にとらえ「自分はどうせ駄目である」「同僚の○○先生はおかしいと思う」など、何をどう励ましてもこのような発言を繰り返す方もいます。
否定的に発言する人は、①自分に興味をもってもらうための手段②自分を目立たせる手段③自分に自信がない④嫉妬心を打ち消すための手段―として相談するといわれています。
この場合、特に、誰かを非難するような内容については聞き流すようにするのが一般的な対応です。否定している内容に意見を述べると、余計ネガティブな発言を繰り返し、批判を他の人に広げたりします。
これは自分の理想と現実にストレスを感じ、それを解消する行為であると理解しなければなりません。
また、このような相談では、相談される側が相談者の否定的な考えや同僚の非難に同調し、引き込まれないように注意する必要があります。相談者への同調が必要と思い、人への批判に「○○さんについては、私もそう思う」などと、否定的な意見に同調すると、相談者自身もストレスの解消のため、何度でも繰り返し相談に来ることになり、相談者も否定的な自己を確立していきます。
ひととおり話を聞いたあとに「どうすると、あなた自身がよくなるのでしょうか」と問うようにしてください。心配な症状が発症していない限り、自分自身の内面と向き合わせるようにします。
(北海道文教大学人間科学部子ども発達学科教授・石垣則昭)
参考・引用文献
「社会心理学」 池田謙一・唐沢譲・工藤恵理子・村本由紀子著 有斐閣
「認知心理学」 箱田裕司・都築誉史・川畑秀明・萩原慈著 有斐閣
「人間関係の心理学」 齋藤勇編著 誠信書房
(教職員の協力を高める学校づくり 2020-09-24付)
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