教職員の協力を高める学校づくり 〈No.53〉 集団極化現象とは 職員室の心理学 4(教職員の協力を高める学校づくり 2020-11-11付)
会議などで特異な意見を述べる人に注目が集まり、決定事項も時として偏った内容になることがあります。物事を決定するのは、一人で決めるよりも集団で話し合うほうが安全でよい決定となるとは限らないと言われています。
この状況は社会的手抜きと言われ、どこでも起きる現象です。意識的に「自分一人が手を抜いても大丈夫だよね」と思って手抜きをしている人もいるかもしれませんが、無意識のうちに手抜きになってしまう人が多いようです。
これは、集団心理の中でも傍観者効果といい「自分がやらなくても誰かがやるだろう」や、「誰もやらないから自分もやらなくていいよね」という気持ちが芽生えるからであると言われています。
また、集団の中では、常識的な意見や振る舞いはあまり注目されない一方で、極端で突飛な意見やパフォーマンスは目を引きやすくなります。これは個々の責任は軽くなるため、個人の意見として発表するより極端な意見であっても賛同しやすくなり、特に集団の合意形成の場面では、個人の意思決定では犯さないような間違いを犯すことがあります。
この状況をリスキー(危険度が高い)シフトと言い、集団極化現象とも呼ばれています。
この現象はリスキーな発言が多ければ多いほど、集団の討議がより危険の高い決定や保守的な決定に傾斜しやすくなります。リスキーシフトは集団だから起こるのではなく、集団の構成員(日ごろから極端な意見を述べる個人やグループの存在)によって起こります。その要因は、会議自体の責任の所在があいまいになるからであると言われています。
逆に改善を求める会議の場合、改善するリスクを嫌って結局「現状維持のままでよい」というような消極的判断となった場合をコーシャスシフトといいます。これはメンバーの安全志向が強いと集団の決定がより安全な方向に寄る結果であり、教育改善をなかなか進めることができなくなります。
リスキーシフトやコーシャスシフトを防ぐため、つぎのようなことに留意したらいかがでしょうか。
①会議のための情報収集
行き当たりばったりの会議は、リスキーシフトやコーシャスシフトを招きやすくなります。十分な説明や質問、意見に応えることできる必要な情報の収集が必要です。
②目的から外れない
リスキーシフトやコーシャスシフトによって、会議中、何のための協議なのかみえなくなることがあります。目的を逸脱しないよう、事前に目的を十分に検討するとともに、会議の前や途中での確認が望まれます。
③提案事項の事前検討
提案の前に提案内容の課題として考えられる内容を事前検討し、予測される質問や意見に対して事前準備し答えることができるよう事前検討します。
④否定された場合の代替案の用意
否定的な意見が出される可能性がある場合は、参加者が選択できるような代替案を事前に用意し、必要に応じて提示します。この結果、否定的意見者の一定の満足となり、リスキーシフトやコーシャスシフトを防ぐことができます。
(北海道文教大学人間科学部子ども発達学科教授・石垣則昭)
参考・引用文献
「社会心理学」 池田謙一・唐沢譲・工藤恵理子・村本由紀子著 有斐閣
「認知心理学」 箱田裕司・都築誉史・川畑秀明・萩原慈著 有斐閣
「人間関係の心理学」 齋藤勇著 誠信書房
(教職員の協力を高める学校づくり 2020-11-11付)
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