教職員の協力を高める学校づくり〈No.58〉 6つの心理的背景 保護者との信頼関係築く対応 2(教職員の協力を高める学校づくり 2021-01-26付)
十数年前、道立高校の研修会で、小・中学校では、学校に対するクレームが社会問題化し始めた時期でしたが、「やがて高校でも同様の対応が求められるようになります」、さらに、「学校は、保護者にとって聖域ではない時代となり、あとはますます、児童生徒への教育の姿勢が問われるとともに、丁寧で納得解の高い保護者対応が求められます」と重ねて説明したことを思い出しています。
教職員のメンタルヘルスを考えると、教育活動にやる気をみなぎらせても、かかわりの難しい保護者の対応によって教育活動に自信がもてず、本来、子どもの教育に力を注ぐべきなのに、特定の保護者に必要以上に気を使わなければならない状況に陥っている場合もみられます。
もちろん、子どもや保護者側に立つことができなかった教師側のミスや、不適切な対応の課題がありますが、かかわりの難しい保護者にはどのように対応すべきでしょうか。学校経営の責任者である校長や教育行政に情報が伝えられたときには、すでに問題が進行し話を聴き謝罪せざるを得ないケースもありますし、同様に、教師が個人で抱え同僚や教頭に相談をしたときには、すでに厳しい局面を迎えていることもみられます。
近年、SNSなどの普及で個々の発信力や影響力の高まり、教育に対する期待値が上がっているなどの背景があると言われていますが、一般に難しい要求をする保護者の心理的背景には、つぎのようなことが言われています。
①承認欲求(他者から認められたい、自分を価値ある存在として認めたい)=他者を批判することによって、自身は有能であるなどの価値付けを求める。特徴の一つとして、上から目線で発言することがみられる
②疎外感(自分だけ排除され、仲間外れにされているという感覚)=生活の中で心が満たされず、他の人から遠ざけられているという感覚をもっている。会話の内容が批判に終始する場合が多くみられる
③思い込み(事実の有無にかかわらず、信じ込むこと)=「きっと〇〇に違いない」という想像のもと、教師の言い分を聞かず、一方的に自分の言い分を押し通そうとする
④周囲完璧主義(自分の周りに完璧を求める)=自分に自信がもてず、物事に偏った考え方をし、ほかの人が許せることでも許すことができない。特徴として、特異な価値観による持論を語る
⑤ストレス(生活上のプレッシャーを感じたときの感覚)=生活上のストレスがあり、子どもの教育活動に乗じて感情的な発言がみられる。特に、自身が児童生徒であったころの教師への不満が根底にみられる場合がある
⑥正義感(人道的に正しいことを貫こうとする意思)=子どもたちのため、教育を改善させようと迫り、改善させるのが自分の役割と考え、強気で攻撃する
以上で示した心理的背景は複合的に発揮される場合が多くみられます。しかし、対応の底流は共通しています。
次回から対応についての掲載をいたします。
(北海道文教大学人間科学部子ども発達学科教授・石垣則昭)
引用・参考文献
「コミュニケーションハンドブック」 石垣則昭 登別市教育委員会・登別市校長会
「保護者と信頼関係を築く関わり」 石垣則昭 ぎょうせい悠+(はるかプラス)連載
「児童心理臨時増刊NO984“難しい親”への対応」 金子書房
「“過剰反応社会”の悪夢」榎本博明 角川新書
「事例解説 教育対象暴力―教育現場でのクレーム対応―」 近畿弁護士会連合会民事介入暴力及び弁護士業務妨害対策委員会 ぎょうせい
(教職員の協力を高める学校づくり 2021-01-26付)
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