教職員の協力を高める学校づくり〈No.63〉 感情受け取ること重視 保護者との信頼関係築く対応7(教職員の協力を高める学校づくり 2021-04-20付)
保護者対応の人数は、保護者が2人の場合は2人か3人が適当です。保護者が1人の場合は2人で対応します。
対応は、事前に役割を決めて臨みますが、3人で対応する例として、「〇〇主任の〇〇先生です。担任の〇〇先生です。2人の先生は〇〇さんのお話を伺います。私は教頭の〇〇です。私は話された内容を記録したいと思いますが、よろしいでしょうか」と尋ねます。
この場合、〇〇主任から前述(保護者との信頼関係築く対応 3)したように「このたびは不快な思いをさせ、申し訳ありません。きょうはお話を聞かせていただけますか」と保護者に問います。この言葉は教頭が述べてもいいと思います。
特に、学級などでの問題は、担任を厳しく追及し不満をあらわにする場合があります。その場合は、主任が「〇〇について、〇〇ということですね」と発言を復唱して内容を焦点化し、「お気持ちはよく分かります。〇〇についてはどうですか」と話題を変換します。
ただ、該当の教員があまりにも憔悴しメンタルヘルスを損ねている場合や重大な内容と判断したときは、「本日は、私どもでお話をお聞きします」と述べ、同席させないようにします。
この目的は意見内容の把握とともに、保護者の感情を受け止めることとします。
また、1人の保護者の場合、教師1人で対応すると後々、「言った。言わない」となるケースがみられます。
先に説明しましたように、1人に対しては2人が原則です。
しかし、保護者から該当の先生1人と話をしたいと要求された場合、「それでは、職員室で待機し、20分後くらい(状況によりますが、10分では短く30分は長いと感じています。長くなれば長いほど、該当の先生が責められ弁明に終始する可能性があります)にまいりますので、よろしくお願いします」と説明し待機します。
保護者は学校へ意見を述べに来校するとき、話の内容と同様、否定的に「話の仕方」「話の聴き方」「態度や顔の表情」などを敏感に受け取ります。つまり、話の内容より非言語コミュニケーション(言葉以外の手段を用いたコミュニケーション)が円滑な対応を進めるため、極めて重要な要素となります。
従って、「学校の状況を理解してもらおう」ではなく、保護者の感情を受け取ることを重視します。保護者の感情を受け取る側の学校側が、保護者から見て不遜な態度ととらえられないようにしなければなりません。
また、電話での教師の不用意な言葉が後々の問題となることがあります。気を付けたいものです。
座席の位置も重要です。感情的な面持ちで保護者が来校したときは、正面に座るような対決的な座席は避け、やや斜めに座るようにします。
また、保護者の不満の対象となっている教職員は、保護者の正面を避けなければなりません。
例えば、保護者が来校する場合は、「どうぞ、お座りください」と促し座る位置によって学校側の座る位置を自然(急に入れ替わるような仕草を見せると、それだけで感情を害します)に変え、座席に着くようにします。
座席の取り方については、事前の打ち合わせの中で確認しておくとよいと思います。
(北海道文教大学人間科学部子ども発達学科教授・石垣則昭)
引用・参考文献
「コミュニケーションハンドブック」 石垣則昭 登別市教育委員会・登別市校長会
「保護者と信頼関係を築く関わり」 石垣則昭 ぎょうせい悠+(はるかプラス)連載
「児童心理臨時増刊NO984“難しい親”への対応」 金子書房
「“過剰反応社会”の悪夢」榎本博明 角川新書
「事例解説 教育対象暴力―教育現場でのクレーム対応―」 近畿弁護士会連合会民事介入暴力及び弁護士業務妨害対策委員会 ぎょうせい
(教職員の協力を高める学校づくり 2021-04-20付)
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