高める学校づくり 教職員の協力を〈№66〉 相談できる関係づくりを 保護者との信頼関係築く対応 10(教職員の協力を高める学校づくり 2021-06-11付)
保護者対応の問題の一つに「抱え込み」があります。以降の対応に苦慮する場合には、抱え込みによる初期対応に問題がみられます。
事例にもよりますが、意見や苦情を受けた保護者への連絡は、早ければ早いほどトラブルを最小限に食い止め未然防止につながります。「○○くらいは自分で解決するから大丈夫だろう」「ほかの先生や管理職に迷惑をかけるかもしれない…」「保護者からの意見や苦情を相談すると、教師力が低いとみられるのでは…」などと思いがちとなり、状況が好転せず、さらに難しい状況を迎えやっと同僚や管理職に相談するケースもみられます。
抱え込みは、当事者のメンタルヘルスを損なうことになりますので、日常的に管理職や学年や分掌などで児童生徒の日常的な情報交換や、保護者からの意見を相談できる関係づくりが必要です。
つぎに保護者対応のシミュレーションについて説明します。
保護者対応にシミュレーションが必要なのですかと問うかもしれませんが、かかわりの難しい保護者の対応ほど必要と言えます。
シミュレーションし、様々な状況を想定することで保護者の感情を軽減させ、その場その場に応じた対応が可能となります。また、対応する教職員のメンタルヘルスを損なうことなく、見通しをもつことができます。
①感情的な面持ちで来校した場合の座席はどうするのか②第一声と自己紹介は誰が担当するのか③対応する教師の役割の説明と保護者の承認は誰が得るのか④最初は穏やかでも、次第に感情を高ぶらせた場合の対応はどうするのか⑤該当の教師を責める場合はどうするのか⑥保護者の話を要約しまとめ、発言内容の確認をするのは誰か⑦同じような話を繰り返した場合はどうするのか⑧無理難題の要求がなされた場合、誰が何というのか。また、保護者の感情を受け入れる場合の傾聴の仕方などを、前もって共通理解を図るようにします。
また、金品を請求する恐れがある場合は、前もって「金品を請求するのではありませんよね」など話すようにします。
さらに保護者対応では、テーブル上にある物品はすべて取り払い、何も置かないようにするとよいと思います。
保護者によってはイライラのはけ口として、テーブルの物品を手で払い除け、投げつけた事例があり、対応している教職員がしきりに時計を気にする仕草に感情を害し、早い終了を願うあまり、「きょうはこの辺で終えてはどうでしょうか」との発言に憤慨し、より厳しい状況となった事例もあります。
かかわりの難しい保護者対応ばかりではありませんが、対応に「時間がかかる」のではなく、保護者の感情を受け取り軽減してもらうためには、「時間をかける」ようにしなければなりません。
「保護者との信頼関係築く対応」と題し10回連載しましたが、皆様の職場におかれましては、何かの機会に保護者の対応について共有いただければありがたく存じます。
(北海道文教大学人間科学部子ども発達学科教授・石垣則昭)
引用・参考文献
「コミュニケーションハンドブック」 石垣則昭 登別市教育委員会・登別市校長会
「保護者と信頼関係を築く関わり」 石垣則昭 ぎょうせい悠+(はるかプラス)連載
「児童心理臨時増刊NO984“難しい親”への対応」 金子書房
「“過剰反応社会”の悪夢」榎本博明 角川新書
「事例解説 教育対象暴力―教育現場でのクレーム対応―」 近畿弁護士会連合会民事介入暴力及び弁護士業務妨害対策委員会 ぎょうせい
(教職員の協力を高める学校づくり 2021-06-11付)
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