教職員の協力を高める学校づくり〈№71〉 課題を共有し改善へ 協同づくりとスクールリーダー5(教職員の協力を高める学校づくり 2021-08-25付)
【かかわりに難しさを感じる教職員との関係づくり】
生徒のための学校づくりに取り組もうとすると、一部の教職員が反対のための反対だと思いたくなるような非建設的な意見を述べ、会議が頓挫することがあります。このような教職員と校長が感情的に対立すると、職員室内が二極化し、教職員の協同は進みません。
長年勤務している教職員にとってみれば、新しい校長の赴任は黒船来航に近い感情がわくものです。たとえ教職員の協同づくりであっても、新参者の校長に学校づくりの主導権を握られるのは、自分たちが否定されているように感じるのかもしれません。こう考えれば、教職員から異論が出るのは当然であり、想定内と理解し対応しました。
私は、前校長や教頭から、個々の教職員の教育活動の実態を聞くだけでなく、教職員個々のよさや課題を詳細に聞き、併せて実際に接する中で、その教職員に対する理解を修正しながら、事前に対処や対応を想定し、会議などに臨みました。そうすることで余裕をもって相手の言いたい真意を聴くことができました。
また、日ごろから、課題を抱えている教職員とは教育談義を繰り返しもち、その人の過去の教育活動の成果や、努力を重ねてきたことを肯定的に聴き、現在校の課題を共有し、改善への協力者となるよう膝談義を重ねました。
そういった対応をすることで、学校改善への協力者として活動してくれるようになりました。
【教師の協同づくりを育む校内研修会】
学校は、保護者対応や求められる報告書の作成などの不慣れな業務量の増加に加えて、生徒指導上の課題なども多様化し、教職員個々人の知識や経験だけでは対応できないことが増えてきています。
このような実情の中で、生徒への対人援助を仕事とする教師は、自身の行動が適切であるかどうかの迷いや不安を抱えながら対応しているのが実態です。
また、職務としてプライバシーにかかわる問題を扱うことも多く、他の教師と相談しにくい内容などは個人で抱えることになり、結果的に相互の関係性が希薄になることもあります。
職場内のコミュニケーションが十分な教職員は、メンタル面を損ねることも少なく、協同的に業務を進めることができます。
杉江修治・水谷茂(「教師の協同を創る校内研修、2017)は、教師の協同とは同一歩調」を取ることではない。学校を変え、個々の教師が成長するためには、学校の課題を共有し、その解決に向かう個々の教師に応じた挑戦を認め合うことであると述べています。
このことを踏まえ、教職員の同僚性を高めるために、よりよい教師になろうという共通の意思に沿った課題解決志向的な活動、すなわち研修の充実という手法を選択しました。
校内研修の位置付けは、教育実践にかかわる理論・方法を「教えてもらう」機会ではありません。教育活動を進めていく上で、主体的に新しい知識を個として学び取り、仲間と学び合いながら自らの教育観と教育技能を向上させる機会です。
私は「教師の学びなくして生徒の成長はない」との信念に立ち、年間15回の研修会を提案し、ワークショップ形式によって、教職員一人ひとりの関与度が高まるような研修会を計画しました。
当初、教職員からは研修会の回数が多すぎると反対意見が出されましたが、研修会を重ねるごとに参加意欲が高まり、最終的には教師自ら研修の機会を設定し、自主研修を開催するまでに至りました。
(北海道文教大学人間科学部子ども発達学科教授・石垣則昭)
引用・参考文献
「教師の協同を創る校内研修 チーム学校の核づくり」 杉江修治・水谷茂著 ナカニシヤ出版(2017)
「教師の協同を創るスクールリーダーシップ」 杉江修治・石田裕久編 石垣則昭ほか著 ナカニシヤ出版(2018)
(教職員の協力を高める学校づくり 2021-08-25付)
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