教職員の協力を高める学校づくり〈№74〉強制で子は変わらない 校則1(教職員の協力を高める学校づくり 2021-10-20付)
今号より生徒指導再考と題し、今日的生徒指導についてシリーズで掲載します。74号から76号までの3回は校則について取り上げます。
校則自体は法的な根拠は持ちませんが、生徒指導提要(文部科学省・平成22年3月)には、「児童生徒が健全な学校生活を営み、より良く成長・発達していくため、各学校の責任と判断の下にそれぞれ定められる一定の決まり」と規定されています。
本年、文部科学省より「校則の見直し」の通知(都道府県教育委員宛・令和3年7月13日)が出されました。通知の概要は、①児童生徒の実情・保護者の考え方・地域の状況・社会常識・時代の進展等を踏まえ、学校においては積極的な校則の見直しの姿勢が求められている②各学校で現存の校則が社会生活と隔絶されることなく、自分自身や他人への責任を伴う社会的ルールの基本的な内容であるべき―と述べられています。
さらに、別通達された「校則の見直しに関する取組事例」(都道府県教育委員あて・3年7月13日)では、校則の内容や校則の指導について、合理的な範囲を逸脱しているのではないかとの旨を指摘する報道などがあります。
校則に基づいた指導を行う場合は、①一人ひとりの児童生徒に応じて適切な指導を行うとともに、児童生徒の内面的な自覚を促し、校則を自分のものとしてとらえ、自主的に守るように指導を行っていくこと②教員がいたずらに規則にとらわれて規則を守らせることのみの指導になっていないか注意を払うこと③校則の指導が真に効果を上げるためには、その内容や必要性について児童生徒・保護者との間に共通理解を持つようにすること④学校を取り巻く社会環境や児童生徒の状況は変化するため校則の内容は、児童生徒の実情、保護者の考え方、地域の状況、社会の常識、時代の進展などを踏まえたものになっているかどうか絶えず積極的に見直さなければならない―としています。
このような通達の背景には、校則は児童生徒の人権を侵害しているのではないか。校則が旧態依然とし、時代にあっていないのではないかなどの指摘によります。さらに校則自体を問うことなく、児童生徒の自律性を促す指導よりも、「守ること」が前提であり「校則にあるのだから、守らせなければならない」と学校の実情や、学校の秩序を重んじる責任感の強い教師により指導を繰り返してきた歴史があります。
経験年数が豊かな先生はご存じのように、過去には校内暴力や学級崩壊など教師の権威(優越した価値のある保持者として社会的に承認されていること)が揺らぎ始め、ボンタン、短ラン、リーゼントスタイルなど、通常の制服スタイルの指導に毎日、大変な苦労をし、さらに短いスカートとルーズソックスが女子生徒に流行した時期もありました。
今、振り返ってみると、青年期特有にみられる同調性(自分の価値観や考え方を強く主張はせずに、調子を合わせて賛同することで、他者との連帯感を高めていくこと)と理解できますが、当時は児童生徒の健全な発達の責任を担う学校として、連日、生徒とのせめぎ合いが続いたことを思い出しています。
私も生徒指導畑の先輩教職員に鍛えられ、いつも最前線にいましたが、大きな反省は「強制では児童生徒は変わらない」という教訓です。その後同僚の協力を得て学校における御旗というべき校則を、児童生徒の側に立った内容に改善した活動を次号掲載します。
(北海道文教大学人間科学部子ども発達学科教授・石垣則明)
(教職員の協力を高める学校づくり 2021-10-20付)
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