教職員の協力を高める学校づくり 〈№79〉意識格差解消し校内連携構築 生徒指導と教師3(教職員の協力を高める学校づくり 2021-12-16付)
今号では「連携」について記載します。ご存じのように、地域との連携では、地域の力を生かした学校教育の充実を図り、学校全体の負担を軽減するため、マネジメント力の向上を図ることが求められています。文部科学省では、「開かれた教育課程」として、児童生徒の教育環境の充実を求めるだけではなく、生涯学習社会において地域そのものが、持続可能な地域づくりにつながると述べています(参照:文部科学省初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室、平成28年1月)。皆さんの学校では、どのように連携が進展されているのでしょうか。
事例を説明しますと、ある地域では「放課後子ども教室」の開催に伴い高校生、中学生が地域の方と同様、支援ボランティアとして日常的に参加し地域友好の担い手として活動しています。また、この活動がきっかけとなり、地域の皆さんが校舎のちょっとした修理を担い、学校花壇の手入れ、放課後、空き教室を利用しての囲碁・将棋クラブが開催されています。
担当の先生に話を聞くと、「地域との活動を推進すると、心配な生徒も誘われ参加するうちに、明るい様子に変わってきたように感じます」との声が。
また、地域の方からは「登校や下校時間など、気軽に声をかけてくれるようになり、親しみを感じます」と話してくれるそうです。
過去、学校と地域や関係機関との連携は二の次であるという風潮がありました。地域との連携の事務局は多忙な教頭の業務でしたが、事務局は地域に置くとともに、校務分掌に地域連携係を設ける学校も多くなってきています。地域連携の推進は校内外での生徒指導の充実につながりますが、教職員が地域との連携により業務が軽減されたかどうか、地域との結び付きが実感できるかどうかが、地域連携の課題と理解しています。
続けて校内連携ですが、報道される様々な学校事故の問題は、学校内の連携の不備によると取り沙汰されることが多くみられます。
校内連携は極めて重要であると誰もが理解していますが、なぜ連携が途切れてしまうのでしょうか。生徒指導の研修会のおり、「校長、教頭のもとへ報告がなされた時にはすでに問題が進行し、学校運営の責任者として対応が図れないようなことがないようしていただきたい」と具体例をあげ説明しています。児童生徒の問題は、担当の教師個人で対応を図ることはできません。
連携の不十分さは、保護者や児童生徒の信頼を損なうばかりではなく、問題そのものを悪化させる可能性があります。校内連携の問題は教職員相互の意識格差にあり、連携の方策として必要なのは、どのような目的で、誰がキーパーソンとして進めるのか、さらに関係教師はどのような役割を分化し、どう対応を図り連携を取り合うのかを明確にすることです。その際に課題となるのは①教職員の関係性②危機意識のとらえ方③教師の抱え込み―などがあります。
〇〇について情報があるが、〇〇先生には言いづらい。過去、自分の指導に問題があるのかと憮然とされた。〇〇先生に、生徒の心配な様子を説明すると、それは保護者の問題であり自分の問題ではないと言われた。連携を図り対応したいが、〇〇先生は危機意識に乏しく、〇〇君の日常について心配しても、担任には問題ないと繰り返す―など、教職員間の意識格差に問題があり、児童生徒の適切な生徒指導のため、学校としてどのように臨むべきか、共通理解が必要とされています。
(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科教授・石垣則昭)
(教職員の協力を高める学校づくり 2021-12-16付)
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