教職員の協力を高める学校づくり〈№80〉 スクールロイヤーとは 生徒指導とチーム学校(教職員の協力を高める学校づくり 2021-12-21付)
今号から4回にわたってスクールロイヤー制度を取り上げます。
スクールロイヤー制度に教育関係者が大きな期待を寄せています。
スクールロイヤーとは、学校で発生する様々な問題について子どもの利益を念頭に置き、法律の見地から学校に助言を行う弁護士をいいます。
わが国においては、多様化し複雑化した教育問題について、学校が地教委と連携し対応してきました。近年、これらのトラブルの解決には法的な知識が必要とされることが多くなり、スクールロイヤーとして弁護士を活用すれば、問題の解決や学校の負担軽減につながると考えられ、平成29年に文部科学省が教育政策の実現のため、スクールロイヤー制度を提言しました。
翌年の30年には、日本弁護士連合会が文部科学大臣にスクールロイヤーの整備を求める意見書を提出し、令和元年9月に当時の萩生田光一文部科学大臣が、2年より各都道府県、政令指定都市など全国に約300のスクールロイヤーを配置するとしました。
文部科学省は、①学校での法的相談:スクールロイヤーが学校へ法律家の立場で各種対応について助言し教員研修を行う②法令に基づく対応:学校の進める対応がいじめ防止対策推進法のような法令に沿っているかどうか、スクールロイヤーが助言する③いじめの予防教育:授業のモデル作成や実践的な教材開発に関与する助言をする―の3点にわたり調査研究を進めてきました。
スクールロイヤー制度はあくまで、「子どもの利益」のためであり、そのために学校が対応すべき内容を具体的に示し連携しながら、活動を進めることが目的であります。
また、スクールロイヤーは「チーム学校」としての専門的な知識をもった一員であり、内部的な指導や助言を行う立場を取ることが主たる役割となっています。
本州の実例では、いじめ問題を中心に学校の対応が法にのっとっているかどうかの助言や、諸問題の適切な対応のための研修など教職員のリーガルマインドの保持・増進に成果を上げています。
学校を取り巻く社会情勢は大きく変動しています。生徒指導上の諸問題には教育活動の経験知だけではなく、法の視点をもたなければならない時代となっています。
中央教育審議会は平成27年12月の答申で、チーム学校への学校のマネジメントモデルの変換を提唱しました。これは、「専門性に基づくチーム体制の構築」「学校のマネジメント機能の強化」「教員一人一人が力を発揮できる環境の整備」の3つの基本的な考えによりますが、いじめ、不登校、虐待、家庭の貧困問題など、学校に求められる対応、解決すべき課題は複雑化しています。
結果として、教員が教科指導や生徒指導に割く時間が十分に確保できていないという問題が指摘され、メンタルヘルスの保持・増進とともに教職員の働き改革が大きな課題となっています。
スクールロイヤーを話題にしましたが、学校内部においては指導体制の充実を図るとともに、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、部活動指導員、図書館司書など外部の専門性をもつ人々と連携し、開かれた生徒指導の推進が期待されています。
(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科教授・石垣則昭)
(教職員の協力を高める学校づくり 2021-12-21付)
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