教職員の協力を高める学校づくり No.85 単純接触効果の法則活用を 児童生徒のグループ問題2(教職員の協力を高める学校づくり 2022-02-18付)
教室や廊下で泣いている子を見かけ、「何かあったの」と問いかけても「何でもありません」と答え、あとで「グループの仲間割れ」と耳にすることは多くの教職員が経験しています。経験豊かな教師は今どきの生徒指導は「児童生徒のグループをどう指導するかにある」と断言しています。グループのメンバーが緩やかに変化するのではなく、急激に変化する場合はグループ内の対立感情がみられ、特定の児童生徒が疎外され孤立し学校への不適応を起こすこともあります。
児童生徒の対人トラブルは、人間関係づくりの貴重な機会であるという方がいますが、適切な介入を試みなければ、自分や周りの児童生徒に対して否定的ループを強め、社会生活への適応や人格の形成にいびつな影響を与えることはご存じのとおりです。
児童生徒のグループ問題を含め生徒指導の基本的対応として、単純接触効果の法則を活用してはどうでしょうか。単純接触効果とは、日常的に接する回数が多ければ、好意的になり心を開きやすくなるという法則です。心配な様子のときだけ言葉をかけるのではなく、日常的に言葉をかけるようにすると防衛的構えが消失しやすくなり、自分の置かれている立場を教師に相談しやすくなります。
しかし、ここで大切にしていただきたいことは、児童生徒へ「何かあったの」「困っていることがあるの」と問うことです。このような問いでは「何もありません」と答えるのが一般的です。「先生、どんなことでもいつでも相談にのるよ」とスタンスを取ると身構えることは少なくなります。
また、相談に児童生徒が訪れたときには、正論を述べ説諭することなく、事実と感情を「聴く」ことです。聴くことによって不安が解消されやすくなります。ただし、聴いたことを本人の了解なしに、グループのメンバーに伝えると、本人が窮地に陥り教師への信頼を失うことになるので気を付けなければなりません。
相談に来た児童生徒の不安の解消、解決を第一に時間をかけ「丁寧」に対応しますが、他の児童生徒は相談された教師が相談者として信頼に値するかどうか見守っています。
グループの枠を超え学級内の様々な交流を進めることは、人が感じていることを通して、自身の視野を広げることができます。授業や学校行事の折、交流の意義を説明し、普段接する機会が少ない仲間でグループを編成し活動させるようにしてはどうでしょうか。
過去、児童生徒の相互の関係性について「集団に所属していれば、なんとかなる」と考えていましたが、集団生活への適応そのものを教えなければならない時代となりました。児童生徒の関係性は学習や学校生活そのものに影響を与えています。普及し一般化されていますが『エンカウンターで学級が変わる』(高等学校編、監修・國分康孝、編集・片野智治、岡田弘、加勇田修士、吉田孝江、國分久子、図書文化、1999)、『今子どもたちに育てたい学級ソーシャルスクル』(河村茂雄・品田笑子・小野寺正巳編著、図書文化、2008)、『アクティブラーニングを生かした生徒指導』(関田一彦、渡辺正雄編著、学事出版・2016)などを参考に実践されてはどうでしょうか。
(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科教授・石垣則昭)
(教職員の協力を高める学校づくり 2022-02-18付)
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