教職員の協力を高める学校づくり №82 宮城県教委の成果と課題 スクールロイヤーの効果的活用№2(教職員の協力を高める学校づくり 2022-01-26付)
前号に引き続き、令和元年に宮城県教育委員会での文部科学省の事業である
「いじめ防止等対策のためのスクールロイヤー活用に関する調査研究」の取組によって明らかになった成果と課題を紹介します。
▼法的相談についての、スクールロイヤーのアドバイス
Q1 保護者等の要望に応える際の留意点は?
学校は出された要望全てに対応しなければならないと考えがちですが、「学校としてしなければならないこと」、「学校ができること、できないこと」を整理することが大切です。
その上で要望に応えられないことについては、代替案を提示するなど様々な可能性を探ることが大切です。
Q2 学校の対応を伝える際の留意点は?
学校が対応の見通しをしっかりと伝えることが大切になります。学校としてできることについては、複数の選択肢を示すなどして、当事者の意見や希望を聞きながら対応を決めていくことで、信頼関係の構築や当事者の納得にもつながると考えられます。
その際、保護者と学校だけで話を進めるのではなく、当該児童生徒本人の思いを大事にした対応をするなど、子どもの利益を守ることが重要です。
Q3 資料等を作成する際の留意点は?
解決が困難なケースがほとんどで、初期の段階での対応に課題がある場合が少なくありませんでした。
初期の段階でスクールロイヤーに相談することは、その後の法的視点によるリスク管理が可能となり、重篤な事態になることを防ぐことにもつながります。
法的相談を活用したときは、スクールロイヤーからの助言について校長をはじめとする管理職が十分理解し、その助言をもとに校長のリーダーシップのもとで対応するとともに、関係する職員のみならず、全職員で助言の内容について理解することが求められます。
▼スクールロイヤー活用のポイント
▽未然防止に向けて活用する
事案が起きてからスクールロイヤーを活用するのではなく、問題が起きないための日ごろの取組や体制の整備などの組織的な対応について、スクールロイヤーの助言を得ることも大切である。
▽気になることは、ささいなことでも相談する
「これくらい」と学校で評価せず、スクールロイヤーからの法的視点に立った意見を得ることにより、安心して対応することができる。
▽初期の段階で相談する
初期の段階においてスクールロイヤーから予想されるリスクに関する助言を得ることは、迅速かつ適切な対応を可能とし、早期解決や問題の重大化・深刻化を防ぐことにつながる。
▽相談結果を教職員間で共有する
相談結果を全職員で共有した上で、校長等管理職のリーダーシップを発揮し組織的対応を行うことが解決への鍵となる。
▽継続的に相談する
相談は一回で終了するものばかりではない。法に基づいた適切な対策となるよう、継続的に相談し、丁寧に対応することが必要である。
以上、紹介しましたが、さらに生徒指導上の問題と同様、スクールロイヤーに相談する場合は、事実関係を中心に時系列で学校の対応と対象とのやりとりをまとめ、具体的な経過を説明できるようにします。
(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科教授・石垣則昭)
引用・参考文献
宮城県教育委員会「いじめ防止等対策のためのスクールロイヤー活用に関する調査研究」
(教職員の協力を高める学校づくり 2022-01-26付)
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