教職員の協力を高める学校づくり〈№77〉 教師期待効果とは 生徒指導と教師1(教職員の協力を高める学校づくり 2021-11-26付)
今号77号から79号までの3回にわたっては、「生徒指導と教師」と題し記載します。
生徒指導に課題があるという学校の研修会の講師を依頼され、ある先生の授業に注目しました。校長、教頭から「実態をみていただきたい」と促され、全学年、全学級の授業を参観しました。
説明も聞かず、立ち歩き、私語が飛び交う学級もありましたが、ある先生の授業では、ほぼすべての生徒が教師の説明をノートに取り、課題が出されると、「先生、教えて」「先生、ここが分からない」と数人の生徒が輪になり教師を囲み、質問する様子がみられました。
生徒からは「先生、できた」「自分だって、やればできるもんだ」などの声が飛び交っていました。学習秩序を保つことは重要ですが、生徒指導の在り方を考えさせられる参観となりました。
授業後、担当の先生の話を聞くと、「ここの生徒は、学力的にも生活をみても課題があり、ご覧のとおりですが、粗雑であっても生徒の話を聴き要望に応えると、学習に取り組もうとします」「個別やグループに丁寧に接すると、それに応えようとします」。また、「生活面についても、十分ではありませんが、指導すると生徒は互いに注意し合い授業を受けようとしてくれます」と説明してくれました。
話を聞き生徒指導とは、児童生徒に対する教師の向かう姿勢が重要であると再確認させられた次第です。一般に児童生徒にとって魅力ある教師とは、小学生では「やさしい、親しみやすい」。中学生では「親しみやすい、指導が熱心」。高校生では「教師としての専門性と人生の先輩としての生き方」が期待され、教師を見る目が質的に変化していきます。
教師の姿勢と生徒指導の関係で、大変興味深い研究を紹介します。
教師が児童生徒に様々な期待を抱く結果、その期待に応えようとする“教師期待効果”という現象が研究され、教師が期待を寄せる児童生徒は自分を律し、学習成績を向上させ、逆にあまり期待しない児童生徒は、学習成績や様々な活動の低下がみられたそうです。
このような背景には、教師が日常あまり意識することなく、期待する児童生徒とそうではない児童生徒に異なるコミュニケーションを与えていると考えられています(期待する児童生徒には笑顔で認め励ます機会が多い、そうではない児童生徒へは接する機会が少なく注意や指摘が多い)。
また、教師の多くは、成績のよい児童生徒や従順な児童生徒など、教師の満足を満たしてくれる児童生徒に対して、特別な配慮や高い期待を寄せることや、教師は自分の好む児童生徒に対しては実態よりも高く評価し、そうではない児童生徒には実態よりも低く評価してしまう場合があります。
公平な態度を保つため、教師期待効果の意味を認識し、児童生徒への言葉がけとともに、接し方に注意を払わなければなりません。
(北海道文教大学人間科学部子ども発達学科教授・石垣則昭)
引用・参考文献 「青年心理学」編著、大野久、ミネルバ書房(2010)
(教職員の協力を高める学校づくり 2021-11-26付)
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