教職員の協力を高める学校づくり 〈№75〉 自律性を高める校則づくり 校則2(教職員の協力を高める学校づくり 2021-10-26付)
過去に姉妹都市交流で北欧に出向いたおり、ホームステイ先の校長と「校則」について意見交換をしました。その国では、校則そのものよりも家庭での「しつけ」が重視され、人目を引くような華美な服装や門限時間を守ることは保護者より厳しく指導され、子どもたちは一定のルール(最低限のきまりに限定)により学校生活を送りますが、保護者や子どもたちからは、「わかりやすい授業」「教師のあり方」について日常的に意見があると説明してくれました。
さらに話を進めると、子どもたち個々の「自律性」(他からの支配・強制などを受けずに、自分自身で立てたルールに従って行動することができる性質で、自分で自分の行動を制御することができる性質や特性)を高めることが、日本でいう生徒指導の目的であると重ねて話してくれました。
国情が違いますが、目指すべきものは日本と同様です。自律性を高めるためには「校則自体が、児童生徒のものになっているか」であり、自分たちのよりよい生活のルールとして合理的に機能できているかどうかです。この整合性がなければ、「先生がいうので守る」「校則にあるので守らなければならない」と認識され、結果的に目指すべき力を高めることには至りません。
同僚の協力を得ながら校則改定に至った経過を紹介します。20代から30代前半のころは、私にとって生徒指導とはまるで「もぐらたたき」の連続できゅうきゅうとしていました。
先輩教師に相談し思案を重ねた結果、「生徒が自ら考える校則」にできないものかと検討し職員会議に提案しました。「生徒に校則を考えさせるのは、無謀である」「学校の秩序が崩壊する」と批判を受けましたが理解者も多く、「自分たちの生活づくりは、自分たちの手で」をスローガンに、生徒による校則づくりに着手しました。
校内外生活と生徒会を校務分掌で担当していましたので、手続きとして生徒会を中心に生徒による「校則検討委員会」を立ち上げ、校則を登校時間、授業時間、昼休み時間など、学校として規定する内容を「生徒規定」とし教師が策定、服装を含め、それ以外の内容を「学校生活の約束」として生徒に委ね分離することを説明し、校則の分離と改定を進めました。
生徒に委ねる「学校生活の約束」と題した生活のきまりは、当初、一部の生徒からは、すべて自由になり、今までの校則から解放されるがごとくの意見もありましたが、月2回の会を重ねるたびに、解放的な考えはなりを潜め、「健康や安全、さらに他人に迷惑をかけず、自分で生活を振り返り見直すことを大切にする」のが校則であるとの意見が大半を占めました。
生徒から出された「スカート丈膝から○㌢㍍」「外靴の色は白以外認めない」「男子の頭髪は耳にかからない」などの表記を、「スカート丈は膝くらい」「外靴は華美にならない」「前髪は目にかからない」と変更するため、生徒としてどのように自覚をもつべきか何度も協議しました。
教職員へは校則検討委員会の活動の経過を適宜説明し、共通理解をもつように努め、保護者会でも、校則検討委員会での生徒の活動を説明すると、「細かな規定は撤廃すべき」「学校の押さえつけではなく、生徒に考えさせるのはよい」との意見が出され、4ヵ月の期日を費やし全校集会の場で新しい校則(生徒規定・学校生活の約束)に改善しました。
教師への説明会では「生徒が決めた校則(学校生活の約束)なのだから、教師は違反行為を指導しなくていいのではないか」と意見がありましたが、「学校は指導を前提とする教育機関であり、生徒の自治的意識を援助するためにも、一部の違反行為ついては当然、指導すべき」との意見が多数を占め、活動の経過とともに生徒指導上の違反行為は大幅に減少しました。その後も校則検討委員会は、生活改善委員会と名称を変え継続し活動しました。
(北海道文教大学人間科学部子ども発達学科教授・石垣則明)
(教職員の協力を高める学校づくり 2021-10-26付)
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