教職員の協力を高める学校づくり〈№70〉 肯定的に評価し激励 協同づくりとスクールリーダー4(教職員の協力を高める学校づくり 2021-08-18付)
【校長への相談と対応】
コミュニケーションは双方向の関係であり、聴く側が納得してこそ意味があるはずなのですが、一般に、校長職にある人は、教職員の話を聞くより、説諭などで話をする傾向があります。
相談内容を相手の立場に立って傾聴し、聴いてもらうというだけで満足しているのか、解決を求めているのか、判断に迷いがあるのかなどを聞き分け、校長の満足ではなく、安心や信頼を獲得させながら相談に来た側の満足で終わるようにしました。
教職員が抱える課題や失敗に対しての指導は、感情的に追及することなく、未来志向(これからどうするのか)で対話するようにしました。
教育活動に課題を抱え、うまくいかない教職員に、失敗した過去を掘り返しても、本人の改善には至らないばかりか、できない自分に劣等感を覚えメンタル面を損ねてしまうこともあります。
重要なのは改善策を共に考えることです。相談してくれたことへのお礼を言い、何があったか冷静に聞きながら、今後どのようにすることがよいのか、来談した教師の立場に立って一緒に検討するようにしました。
授業の悩みであれば、その教師の授業を参観し、自らの課題解決に向かう改善意欲を評価しながら、授業改善をどう図るのかを視点として協議し授業実践と参観に臨むとともに、肯定的に授業を評価し励ましと勇気づけを意識的に行いました。
学校の危機管理上、緊急を要する問題は、当該の教職員の誤りをいたずらに追及せず、校長のリーダーシップのもと、生徒の安全確保を第一に、即座に対応しました。
対応が問われた教師には、一通りの対応が終了したあと、理解と納得に重点を置いて、失敗の受け止め方と今後の生かし方について意見交換を行うようにしました。
【相談しやすい校長像を目指して】
学校の教職員は職場のリーダーである校長に悩みや不安を相談する割合が極めて低いといわれています。その理由として挙げられているのは、「忙しそうだ」「相談しづらい」などです。
私は様々な研修会の折、「校長室に閉じこもるのではなく、顔の見える校長になってください」と、つぎのような内容を繰り返し問うようにしました。
それは、「きょうの生徒の欠席者は何人で、どのような理由によるか知っているか」「1日に最低2回は保健室に出向き、養護教諭から生徒の様子についての情報を得ているか」「それぞれの学級の様子を把握しているか」「公務補との情報交換ができているか」「教師の授業の進め方を理解できているか」などです。
校長の中には「教頭に任せているので」と言う人もいますが、私は、他人任せにするのではなく、自分の目で見て理解しておくことが相談しやすさにつながり、適切な学校運営や危機管理上重要であると考えています。
また、校長室を出て、気軽に教師と談笑することも必要です。職員室内の雰囲気を融和させ、相談のしやすい校長として受け止められ、教職員の協同のリーダーとして校長の役割が大きいと考えます。
(北海道文教大学人間科学部子ども発達学科教授・石垣則昭)
引用・参考文献
「教師の協同を創るスクールリーダーシップ」 杉江修治・石田裕久編 石垣則昭ほか著 ナカニシヤ出版(2018)
(教職員の協力を高める学校づくり 2021-08-18付)
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